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学生時代優等生だった私が最低の教師になってしまった理由


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:中島翔子 (ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「どうしてわかんないかなぁ。何回教えたらわかるの?」
 
大学を卒業するまで、私は超が付くほど真面目で、勉強熱心。いわゆる「優等生」だった。
授業で居眠りした記憶はなく、板書したノートは友人達からひっぱりだこだった。
決して天才だったわけではないが、とにかくまじめだった。そして何より授業が好きだった。
 
仲の良かった友人たちの中には
「授業まじつまんないし意味わかんな~い」 という子もちらほらいたが、
私には「何故彼女たちがわからないのか」がわからなかった。
先生方はこんなにわかりやすく板書してくれているのに……。と不思議でさえあった。
 
そんな私の夢。それは「教師になること」。
中学時代の英語担任に憧れ、そのまま英語の虜になっていた私は、
恩師のような教師になりたくて、大学では教育課程の授業を履修した。通常の授業の他に特別授業を受けなくてはならないため、週五日、朝から夕方まで殆ど大学構内で過ごす。「花の女子大生」というには程遠い、地味な毎日だったと思う。それでも「教師になる!」という夢の前には全く苦でなかった。
 
学校漬けの私がやっていた唯一のアルバイトは「家庭教師」だった。
初めて受け持った生徒は、隣の駅の団地に住む当時中学二年生のN美ちゃん。
週二回、彼女のうちまで自転車を走らせ教えに行っていた。
 
N美ちゃんは中学生ながら私より背が高く、可愛らしい女の子だった。
お洒落にも敏感で、当時流行りのファッション誌を穴が開くほど読み込んでした。
……でも勉強は大の苦手。どんなに睡眠をたっぷりとっていても、机に向かうとすぐ眠くなる。典型的な勉強嫌い。高校時代の友人と似た匂いを感じていた。
 
普通なら「困ったな~」 と思うところかもしれない。
でも私は違った。逆境に燃えていた。
 
「N美ちゃんをを変えたい! 勉強好きにしてあげたい!」と息巻いていた。
そして自分がこれまで習ってきた通りのノウハウを、余すところなく存分に注ぎ込んだ。
 
自分の教え方ってなんてわかりやすいんだろう。
こんな風に教えられたら、絶対英語すきになっちゃうね。
 
そんなバカみたいな自信が当時の私を満たしていた。
 
そうして数か月。待ちに待った定期試験の結果。
?? どうしてだろう?? 全然成績が伸びていない。伸びないどころかちょっと落ちてさえいる!
 
どうして!?こんなにわかりやすく、一生懸命教えているのに!
 
それまで妄信していた自信にみるみるひびが入っていくのを感じた。
急に焦りだした自分がいた。
定期試験の後、親御さんからの見えないプレッシャー、無言の圧力も感じていた。
焦れば焦るほど、自然と指導もきつくなっていった。でも当のN美ちゃんの成績は一向に上向かない。
 
そうして出てしまった冒頭の発言。
 
「どうしてわかんないのかなぁ。何回教えたらわかるの?」
 
この言葉以上の強い否定を発していたかもしれない。とにかく結果が出ないことに幻滅し、その捌け口ををN美ちゃんにぶつけてしまった。
 
気づくと、N美ちゃんの目が涙で潤んでいた。
 
そのせいかどうか。ほどなくして近くの塾に友人と通うことにしたからと、家庭教師を断られた。それ以来N美ちゃんとは会っていない。その後どうなったかもわからないままだ。
 
この経験を機に「自分は最低の教師だ」と挫折し、教員免許はもらったものの、教員にはならなかった。
 
……あれから十数年。当時の自分を振り返ってつくづく思う。
私はまだ若かった。幼かった。そして何より、
「自分は勉強ができたから、自分のやり方を踏襲すれば誰でもできるようになる」と思い込んでいた。
でも、今ならそれが間違いだったとわかる。
私は、たまたま日本の学校教育の主流である『板書』を理解すること。つまり『文字認識』に長けていただけだったのだ。そのおかげで授業について行けたし、テストの成績もよかった。あくまで「私の認知の特性がテストに向いていた」だけだったのだ。
 
でもそれは、同時に「学校の先生の多くが私と同じタイプの認知特性の人が多かった」という現状のあらわれでもある。
 
認知の特性が違う、例えば、本を読むのは遅いけれど、すごく音感がいい人や、絵(二次元)は苦手だけど工作(三次元)は得意。など、文字の認識に長けた人もいれば、聴覚が優れている人、空間の把握が得意な人など、物事をとらえる「認知」の仕方は人それぞれだ。
 
自分の得意な認知方法を用いた勉強ならすんなりと理解ができるが、違った場合は、説明の理解が遅くなるためついていけなくなる可能性が高い。落第していった友人たちはきっと教師と違う認知タイプだったのだと思う。
 
そんな事を意識しながら、私は今縁あって高校で英語を教えている。
もう決して生徒たちに「何でわからないの?」とは言わない。
Aの教え方でわからないとわかれば、Bのアプローチ。それでもだめならC、Dと方法を変えてみる。
私がわかって生徒がわからないのは、生徒が「できないから」ではなく、大抵の場合「生徒の認知の仕方に合わない方法をつかっているから」だと思っている。原因はこちら側にあるのだ。
 
私は今、「最低の教師」というレッテルを張り替えるべく、日々生徒と、そして自分自身と向き合っている。
 
 
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2017-09-22 | Posted in メディアグランプリ, 未分類, 記事

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