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リーディング・ハイ

映画「あなた、その川を渡らないで」を見て、歌手YUKIの言葉を思い出した《リーディング・ハイ》


 

記事:菊地功祐(リーディング・ライティング講座)

 

 

「なんだ、この映画は……」

 

毎週楽しみにしている映画評論家、町山智浩さんのラジオを聴いている時だった。

 

聴いたことのない題名の映画が紹介され、とても気になったのだ。

 

今回のテーマは、町山さんが選ぶ2016年度ベスト映画。

 

10位から1位までの映画が順に発表されていく。

 

私は映画オタクであり、映画評論家町山智浩さんの大ファンだ。

ほとんど毎週欠かさず、町山さんが紹介する映画をチェックしていた。

 

なので、10位から順に発表されていくが、ほとんどの映画を知っていたのだ。

 

町山さんのラジオがきっかけで「この世界の片隅に」も見たし、「ローグ・ワン」も見た。

 

ラジオを聴いていると、予想通り、「この世界の片隅に」が一位だった。

 

しかし、10位までのランキングで一つだけ知らない映画があった。

 

それは、韓国で大ヒットしたと言われる、とある老父婦に密着したドキュメンタリー映画だ。

 

タイトルは「あなた、その川を渡らないで」。

 

韓国人の10人に一人がこのドキュメンタリー映画を見たと言われている。

ドキュメンタリー映画が大ヒットするのは、異例のことだ。

 

 

 

今やスマホやインターネットの普及で、わざわざ映画館まで映画を見に行く人は少ない。

それは日本も韓国も同じだろう。

 

そんな中、国民の10人に一人が映画を見たということはトンデモナイことだと思う。

 

私はその映画が気になって、気になって仕方がなかった。

 

年末に日本でもレンタルが開始されたと知り、私は早速、その映画を見てみることにした。

 

町山さん曰く、鼻にピアスを開けたチャラいアメリカ人の姉ちゃんも、その映画を見て号泣していたらしい。

 

 

 

そんなに泣ける映画なのか……

 

何なんだ、その感動作は?

日本では全く話題にならなかったぞ。

 

 

 

私は近所のレンタルショップ屋に行き、その映画をレンタルした。

 

DVDデッキにDVDを入れ、スイッチを入れる。

 

感動作と聞いていたので、泣く準備もしていた。

 

手に届く範囲にティッシュを置き、膝には掛け布団をかけ、

私はいつでも泣けるスタンバイを整えた。

 

映画の本編が始まる。

 

 

すると、おかしなことが起こった。

 

 

笑えるのだ。

 

 

かわいいのだ。

 

 

 

70年近く付き添った、とある老夫婦に密着したドキュメンタリーだが、

この老夫婦がとにかくかわいい。

愛しくなる。

 

 

70年も付き添った夫婦とは思えないくらいラブラブなのだ。

 

90歳を超えるおじいちゃんが真冬の中、おばあちゃん相手に雪合戦をしている姿など、可愛らしくて、可愛らしくて。

 

 

 

この映画は前半部分、ずっと夫婦漫才が繰り広げられている。

 

その姿が可愛らしいのだ。

 

笑えるのだ。

 

 

感動作と聞いていたので、借りるDVDを間違えたのかと思えるぐらい、

笑えてしまった。

微笑ましくなった。

 

 

とにかく、この老夫婦が可愛らしくて仕方ない!

 

 

そして、この映画を作った監督の愛情も画面から伺えた。

 

もともと70年近く寄り添う、仲のいい老夫婦がいると聞いて、映像製作者が密着取材をお願いしたのだろうが、老夫婦の姿を丹念に捉えていて、

映画的に盛っている要素が何一つない。

 

 

本当にありのままの老夫婦を捉えているのだ。

 

 

微笑みながら、私は映画に釘付けになった。

羨ましかったのだ。

 

生活は貧しいが愛する人と楽しく暮らしている、この老父婦が羨ましかった。

 

 

微笑みながら画面を見てしまった。

 

そして、中盤以降にある異変が起きる。

 

おじいちゃんの体調が良くないのだ。

 

咳き込むおじいちゃんを必死に介護するおばあちゃん。

夜中の3時に叩きおこされても必死に介護している。

 

そんなおばあちゃんの姿を見ていると泣けてきてしまった。

 

 

普通、ここまで一人の人間を愛することはできるのか?

 

 

丁寧に丁寧におじいちゃんの肩を撫でるおばあちゃん。

 

そんな姿を見ていると泣けてきてしまうのだ。

 

 

 

そして、別れの日が近づく。

 

 

 

エンドロールが流れる頃には、呆然としてしまった。

 

もうだめだ。

 

こんなドキュメンタリー……いい映画に決まっているよ。

文句言えないよ。

 

 

おばあちゃんとおじいちゃんの姿が私は本当に羨ましかった。

 

一人の人間を最後の最後まで愛し続けている姿が羨ましかったのだ。

 

私はこの映画を見ている最中、ずっと歌手YUKIがラジオで言っていた言葉を思い出していた。

 

 

「人を愛するということを大切にしてください」

 

 

 

「幸せになりたい、愛されたいと人は言うけれども、

まずは、相手を愛するということを大切にしてください」

 

 

 

人を愛する気持ちの大切さを知っているYUKIの歌声は母性に溢れている。

母親の羊水に包まれているような、暖かい気持ちになる。

 

だから、YUKIはトップ歌手であり続けるのだと思う。

 

ソロになっても売れ続けているアーティストはまず、いない。

 

日本音楽シーン始まって以来、グループが解散しても、ソロで売れ続けたのはYUKIぐらいだろう。

 

 

 

人は「自分が幸せになりたい!」と思っても、幸せになることはできない。

「相手のことを幸せにしたい!」と思って初めて、自分も幸せになれる。

 

 

 

そんなことをこの映画は描いていたと思う。

 

この老夫婦は70年以上寄り添っても、毎日お互いを思って、愛し続けた。

 

 

私はここまで誰かを愛し続けられるのか?

 

この映画を見て、私は運命の人を探すよりも、誰か一人をずっと愛し続けることの大切さを学んだ様な気がする。

 

人を愛することを知って初めて、自分も幸せになれるのだ。

 

 

 

 

 

「あなた、その川を渡らないで」 チ・モヨン監督

 

 

 

  
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2017-01-25 | Posted in リーディング・ハイ, 記事

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