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チーム天狼院

「鴨川等間隔の法則、御存知かにゃ?」【三宅のはんなり京だより…?】


吾輩は猫である。名前はまだにゃい。

どこで生れたかというと、それは京都であることは間違いにゃい。正確に覚えていたわけではないのだが、吾輩のいるところが京都界隈であるところに間違いはにゃいし、生まれてからこの方そんなに移動したこともないのできっと京都なのだろう。

……吾輩がなぜこんな文章を書いてるか?それは吾輩がよく出入りしている書店の店長に頼まれたからである。ちなみに、この吾輩の主人であるようなひとは、滅多に吾輩と顔を合せる事がない。職業は学生をしつつ本屋の店長をしているようだ。この店長、ぼけっとしてる割にきわめて図々しく、吾輩がにゃぁと欠伸をしつつうららかな春の陽気を楽しんでいるところに、

「ねぇ、あなた猫なんだし、何か文章くらい書けるでしょう~?」

と言ってきたのである。

冗談じゃにゃいめんどくさい、と尻尾で一蹴するところであった。

がしかし、店長は片手ににぼしを持ち、ほれほれ、とにやにや笑みを浮かべるものだから、にぼしと交換条件で吾輩はこうして筆をとっている所存なのである。

ちなみにこの本屋、どうやら「京都天狼院」という名前であるようだ。

 

はてさて何を書くわけでもない。がしかし、今日のような天気のいい日にこうして鴨川のそばでふにゃぁと欠伸をしていると、いろいろ見えてくるものもある。その中のひとつでもお伝えしようか。

 

―――「鴨川等間隔の法則」を御存知だろうか。

京都の南北をゆるりと流れる鴨川。春夏秋冬、どの季節をとっても京都の風景にはかかせない河川である。

しかしこのうららかな川辺、京都にいるカップルの定位置だ、というもっぱらの評判なのだ。吾輩が一日中この川辺にねころんでいると、ひとくみふたくみ、いつのまにかたくさんのカップルが座って二人っきりのにゃんにゃか空間を召喚している。重要なのが、この川辺で何組ものカップルが座ると、なぜか彼らは、いつも等間隔に座る……そんな法則があるのだ。

ちなみに、カップルの間に新しいカップルが座ると、両側のカップルは左右の間隔が等しくなるように、何気なくじわじわと移動していくのである。不可思議だ。

夏場など、カップル数が多い時はその間隔も狭まる。また電灯の近くなどの明るい場所、男グループの近くでは間隔が広くなるという法則も見受けられる。

 

にゃんじゃ、このカップル等間隔の鴨川うぇーいは。

そう思った輩は吾輩だけではなかったのだろう、この「鴨川等間隔の法則」を真剣に論じた論文もあるらしい、この論文の著者は、ひとりでメジャーを持ってカップル達のあいだを駆けたのだろうか。不毛だ。

ちなみに京都新聞にもこの法則を説いた記事があったらしい。記者さんもひとりでメジャーを持ってカップル達のあいだを駆けたのだろうか。不毛だ。

 

そういえばこの法則は、森見登美彦氏の著書にも出てきていた。彼の著書は、一見ファンタジー小説に見えるが、京都にいる吾輩から言わせてもらえば、ただの京大生の日常である。実はリアリズムを追求している著書であると言えよう。

ちょうどよいので、彼の傑作・『太陽の塔』の一部を拝借させて頂く。

「鴨川に等間隔に並んでいる男女の群は有名である。彼らが一定の距離を置いて並んでいることから、一般に「鴨川等間隔の法則」という名で知られている。夕刻に鴨川を出る孤独な学徒たちにとって、この不快な難問は解決されたためしがなく、解決しようという奇特な人間もいない。我々はしばしば幸せそうに並ぶ男女の間に強引に割り込み、男女男女男女男女男男男男男女男女男女男女という「哀しみの不規則配列」を作ってみたが、奴らは大して見栄えのするわけでもないお互いの顔面表皮を眺めるのに夢中で、我々のいじましい苦闘など眼中になく、かえって深い痛手を負うのは我々であった。」(P141-142

不毛だ。きわめて不毛であると言えよう。それはすなわち京大生の日常が不毛であるとも言えよう。

しかしこの本はなかなかに面白いので、吾輩もお薦め致す所存である。

 

 

誰もメジャーを持って座ってるわけでもないのに等間隔に座ってしまう。

きわめて不可思議なこの法則は、人間の「パーソナルスペース」によるものらしい。

人間には各々、自分が侵されたくない領域空間(パーソナルスペース)があり、他人にその距離を超えて接近されることを避けるらしいのだ。それぞれがもつパーソナルスペースの距離感はたいてい一緒で、それゆえカップルごとに一定の距離が開く、という原理らしい。吾輩はよく知らないが、カウンターで1席おきに座ったりするようなものであるそうだ。

 

しかしこの法則、隣にいる彼あるいは彼女には適用されないのかにゃ?という根本的な問題が潜む。カップルは一心同体ということだろうか。謎である。吾輩には未知の桃色片想い領域であった。ちなみに店長に聞いても有益な情報は得られないだろう。

 

Web上には、この「鴨川等間隔の法則」を模したサイトまであるらしい。その名も「鴨川カップルシミュレーション」。シュールだ。

JavaScriptを使い、川岸に並ぶカップルの動きをシミュレートしているサイトなのだが、現れるのは黄色い四角と緑色の背景のみ。この四角を鴨川のカップルと見立て、現れては両隣の四角との距離を調整しながら動くのである。

一回Google先生にお尋ねし、サイトを覗いてみるとよい。

ひとこと言えるにゃらば、言おう。不毛である、と。

このサイトは一体どなたが作ったのだろう。作っているとき、どんな気分であったのだろう。サイトの創設者の幸せを、吾輩は願わずにはいられない。

 

 

今日も鴨川には沢山のカップルが座している。春の陽気に照らされて、いや彼らは陽気などなくてもぽかぽかなのだろうが、ともかく今日も京都は平和である。

 

 

おや、店長が店をはじめるようだ。店内に入ってお昼寝でもすることにしようか。

店長は今から日本酒を取り出した。真昼間から如何なることか、もう少し遠慮というものはないものか。

吾輩は、窓のはしっこでくるまり、にゃぁとひとつ欠伸をした。珍しく店長の手が伸びてくる。ねむたい。日本酒をこぼさないでくれ。

吾輩はまだ死なない。太平は死ななければ得られぬが、この世だって太平であると思ふ。ありがたい、ありがたい。

 

 

 

※この記事は、京都天狼院にちょくちょく現れる野良猫さんに特別寄稿して頂きました。猫さん、ありがとうございます。

 

※嘘です妄想ですごめんなさい。

 

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2015-03-20 | Posted in チーム天狼院, 京都天狼院, 記事

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