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チーム天狼院

「『男子』ってバカだ」と、笑える歳になったのか。


記事:永井聖司(チーム天狼院)
 

思えば、あんなにキレイに目の前でガラスが割れる瞬間を見たのは、後にも先にも、あの1回きりだった。
 
小学5,6年生の頃のことだったと思う。

教室移動の前だったか遠足の前だったかは忘れてしまったけれど、教室には、僕を含めた数人の男子だけが残っていた。
1人が、ホウキの柄の部分をバットのように振り回し、もう1人が、けん玉の赤い玉をボールに見立てて投げていた。
僕とその他の数人の男子は、笑いながらその様子を見ていた。
ホウキを振り回す方は、ほとんど素振りのような感じで、赤い玉が完全に通り過ぎてからホウキを振っていたのだけれど、徐々に徐々に、赤い玉が通り過ぎた後、素振りをするまでの時間を短くし、そのギリギリを楽しんでいたのだ。
 
こうして今思い出してみると、そのことの何が面白かったのか、さっぱりわからない。
それでも、ぼんやりと思い出されるその光景にいる皆がにこやかだったのだから、不思議だ。

「お〜〜!」
徐々に徐々に、赤い玉が通り過ぎる瞬間と、ホウキの素振りの間隔が狭まってくれば、僕を含めた回りの男子が、笑いながら声を上げる。
その声に、ホウキを振る男子は、あおられていたのだと思う。
やってやるぞ、という顔つきで、ホウキを振る手にも、徐々に力が入ってくる。

そして何回かやり取りが続いた後、ついに、その時が来てしまった。
 
カン!
という大きな音がして、ホウキの柄の部分が、見事に赤い玉を捉えたのだ。

その瞬間、見ていた男子の口全員が、『あっ』の形になった。

ピッチャー役の男子の顔の横を通り抜けた赤い玉は一直線に、その奥にあった窓ガラスへと、飛んでいった。

パリーン!

ドラえもんの中で、空き地で遊んでいたのび太くんたちが、空き地横の家にボールを打ち込んでしまった時に鳴る、あの音を、生まれてはじめて聞いた瞬間だった。

さっきまでの楽しい雰囲気はどこへやら。一気に場が白け、皆が皆、どうやって誤魔化そうかを、考え始めた。
 

その後どうなったかは、ハッキリとは覚えていない。
主犯格である、野球ごっこをしていた2人が、先生から確か怒られていたはずだ。

思い出してみればみるほど、バカなことをしていたな、と思う。
主犯格の2人はもちろん、周りで見ていた僕らも、少し考えればこの後どうなるかがわかったはずなのに、誰も止めなかった。ただただ、その状況を楽しんでいた。

今思えば、何が楽しかったかもわからないようなことだというのに。

本当に、「『男子』ってバカだ」と、今なら思う。

 
 

とてつもなく久々にこんなことを思い出したことに、僕はちょっと驚いた。

この写真集を眺めていたら、自然と思い出していたのだ。

 
思い出の中の僕たちがそうだったように、この写真集の中に映し出されている『男子』たちも、バカ丸出しだ。

小学生ぐらいだろう『男子』たちの姿が、写真集の中では切り取られている。
カメラを向けられて変顔をする『男子』。全力でカメラに向けてアピールする『男子』と、見ているだけで思わず笑ってしまう『男子』の姿が、この写真集にはあふれている。

「ホント『男子』ってバカばっかり」
なんて、女子が呆れる姿が目に浮かぶ。
 
カッコつけで見栄っ張りで、サービス精神が旺盛で、カメラを向けられたらアピールせずにはいられない。頑張って相手を笑わそうとしてみるけれどそのすべてが幼稚で、どこか愚かで滑稽な、それでいて甘えん坊な様子も覗かせる『バカ』丸出しの、ザ・男子という姿。

そんな姿を見ているだけで自然と、自分自身の記憶がつつかれるような感覚になる。
自分もこうだった、自分もバカだったよなと、笑いながら思い出すことが出来る。
 
友達の家で遊んだこと。
友達の家から逃げ出した犬を捕まえようと思って犬に飛びつき、地面を引きずられたこと。
好きだった女の子のこと。
その女の子にアピールしようと思ってディズニーランドでお土産を買ってきたこと。
サッカー部でキャプテンをしていた時のこと。
部活中に説教をしていたら、ふざけた後輩に唇を奪われたこと。

どれもこれも、今思い出すとくだらないことばかりだ。
あの時にこうしていれば、なんて思い始めたら、キリがない。
 
「あのときは『バカだった』」と、笑ってすますしかない記憶たち。

写真家・梅佳代の写真集『男子』を眺めてみると、男性は『男子』だった頃の記憶をきっと思い出すだろうし、女性も、『男子』を通して、『女子』だった頃の自分を思い出すはずだ。

こんなタイミングだからこそ、昔を振り返るきっかけの1冊として、オススメしたい。


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2020-04-19 | Posted in チーム天狼院, チーム天狼院, 記事

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