こつこメモ

【運動音痴が全寮制体育大学という異質な世界へ飛び込んでみた】駅前にあったのはコンビニでも喫茶店でもなく、墓地と田んぼだった~受験編~ 《こつこメモ》


 

【体育大×寮=異世界】どうしてこうなった…なぜかスポーツの苦手なわたしが来てしまった、恐ろしい世界《こつこメモ》

【体育大×寮=異世界vol.1.5】小学校の頃、マラソン大会でいつもビリだったわたしが体育大に入ってしまった理由《こつこメモ》

 

1.大学名を見た時、大方の人は連想する

体育大が全国にいくつあるか、皆さんご存知だろうか。

Googleで「体育大  数」で検索しても一覧しか出てこなかったので自力で数えた。

ざっと数えて約120ぐらいだった。

全国の大学の数が何年か前の文科省によると約760ぐらいだ。今はもっと多いと思う。

東京女子体育大学、日本体育大学、日本女子体育大学などが関東では有名な純な体育大学だ。

他にも神奈川大学、国際武道大学、国士舘大学、大東文化大学、筑波大学、帝京平成大学、東海大学、法政大学、流通経済大学、早稲田大学……スポーツの学部のある大学は他にも多くある。

 

わたしは、そんな数ある大学の中で、いくつもの可能性の中で、今の大学にいる。

 

今通っているこの大学と初めて出会った時。ボックスに頭突きをしまくって、コインを荒稼ぎする赤い帽子のおじさんが浮かんだ。それこそ、ピコーンって、有名なあの効果音が聞えた。

初めてこの大学の名前を見た時「某ゲーム会社みたいな名前だな」と思った。(実際、入学してからこの会社のロゴをあやかったオリジナルTシャツを何度も見た)

でも、池袋の某大型書店とも名前が似ていて。

両方くっつけたら、ちょうどこの大学の名前ができあがる。

 

(変な名前)

 

十七年間の人生で、わたしははじめてこの大学の存在を知った。

でも、わたしの勉強したいスポーツマネジメントの勉強ができるところは少なかった。

このおかしな名前の大学はスポーツマネジメントが勉強できて、かつ、部活を引退してから大学受験の勉強を始めたわたしにとって、受験科目も偏差値もちょうどよさそうだった。

実技試験も一年前になくなったそうだった。なんてラッキーなのだろう!  気持ちがみるみる昂った。大学のホームページを、下へ下へとスクロール。ちゃんとわたしの勉強したいことの学科がある。

学科の名前自体が、わたしの求めていたものだった。スポーツマネジメント。

運動音痴で、さらに不器用でトレーナーにもなれそうにないわたしが、唯一大好きなスポーツと関われる方法だった。

 

しかし、どうしてだろう?

偏差値は飛び抜けて高くはないが、なぜか倍率が異様に高い。どの学科も約13倍以上あった。

でも、担任も言っていた。

 

「倍率なんて関係ないんだよ、新川」

 

と。

偏差値が高いところは戦うのが大変だけど、倍率だったら戦う必要はない。

それよりも恐れたのはエントリーシートに書かせられる「実績」だ。

わたしはスポーツの「実績」などなにひとつなかった。記入例が関東大会や全国大会なのがぐさりと刺さった。地区大会しか出たことなかったし、公式戦なんて全然出れなかった。

アスリート推薦なんてものもある。高校までの実績で入学できるのだ。全国レベルの人しか合格できないらしい。ごりごりの怖い男の人と女の人が脳裏に浮かぶ。

 

それでもまだこの時は

 

「ここに行って絶対にスポーツマネジメントを勉強したい」

 

だから、やってやるぞ。

そう思えていた。

 

けれど、この後すぐに、わたしの気持ちはみるみる風船のようにしぼんでしまった。

 

 

2.ここでテンションが上がる人と、下がる人で分かれる

 

「大学の場所は……お? 一年生は……まてまてまてまて」

 

千葉県の聞いたこともない町だった。おいおい都内じゃないのかよ、小学校から高校まで、全て家の十分圏内にあったのに。

しかも、通うのならまだがんばるけど『全寮制』ってなに?

 

〝一年生は全員一年間、寮に入っていただきます〟

 

ここでわたしはなぜこの大学の倍率がこんなにも高いのか気づいた。

定員が極端に低いのだ。寮の部屋に限りがあるから。

部屋の見取り図や大浴場、自習室の写真が目の中に飛び込んでくる。寮父さんや寮母さんらしい人が素敵な笑顔で、写真などの説明をしてくださってる。

 

(うん!  なし!)

 

説明を読むまでもなく、わたしは静かにこの大学のホームページを閉じた。

ここで「寮楽しそう!」「超楽しみ~」となる人と、わたしのように「うわっ、まじかよ」「やめよかな」となる人に分かれると、大学に入ってからわかった。

初めて会った人たちと、一年間も暮らすなんて耐えられないし。家に帰れないとか、大好きなおばあちゃんに会えなくなる。

なにより一人っ子のわたしにとって、一人の時間がなくなるんて、恐怖でしかなかった。

よくよく考えたら、体育大とか実技ついてけないから進級できないかもしれない。

逃げる理由も言い訳も、いくらでも出てくる。

 

そうだ、早稲田大学を目指そう! 家から電車で十分だし、なんかとりあえず早稲田に入りたい人たちがたくさん受けるって噂だから、みんなスポーツ得意じゃないかもしれない! それにおばあちゃんとおじいちゃん(早稲田大学で出会って結婚した)みたいに早慶戦デートとかできるかもしれない!

 

そんな不順だらけの動機で、とりあえず早稲田大学を目指すことにした。

まあもちろん、入れなかったが。目標が高すぎたせいで学力は自然と底上げされていった。

 

 

3.6月のオープンキャンパスは、信じすぎるな

だが「なし!」と思ったものの、一応、一度友達についてきてもらって、そのおかしな名前の大学のオープンキャンパスには行ったのである。

 

「入らないつもりの大学のオープンキャンパス行くの?」

 

「一応、なにが起こるかわからないから」

実際、八ヶ月後、そのなにかが起きた。

 

むしろオープンキャンパスに行ったのは、この大学だけだった。それほど、心配だったのだ。

まだふなっしーが台頭してない時代。通り過ぎた船橋駅に対してなにも感想を抱かず、一時間近く一本の電車に揺らされていた。

ようやく着いた駅。

降りた瞬間、まず衝撃。

 

「墓地?」

 

駅を出たすぐそこにあったのは、コンビニでも喫茶店でもなく、小さな墓地だった。

 

「こんにちは、オープンキャンパスの方ですか?」

 

墓地を背に、爽やかな案内の人が話しかけてきてくれて、バスの案内をしてくれた。

もうこのオープンキャンパスの日から入学までの大学への印象は「降りた瞬間墓地の大学」になった。

背後に墓地を感じながら、バスが来るのを待つこと数分。

初めて乗る大学までのバスは、異様に長く感じた。今はすごく早く感じるけど。

窓から見える景色に、友達は「大学の周りって栄えてるんだと思ってた」と驚きの声をあげた。

わたしもそう思っていた。「大学がある町=栄えた町」という思い込みがぱらぱらと崩れた。

どこからどこを見ても、田んぼである。奥には山らしきものも見える。

こんなところ旅行でしか来たことないよ。もはや今日、旅行なのかな……。

大学に入ると、次の衝撃がわたしたちを襲った。

 

「みんないろいろと、派手だね」

 

髪の色が金色だったり赤色だったり、もっと変な色だったり。髪型がおかしい人もいたり……とにかく、みんな異様に派手なのだ。

着ている服まで様々な色がある。あるけど、半袖短パンの人ばかりだった。私服の人はいなかった。

 

(これが、体育大……!)

 

昔、近所の大学の学園祭に行ったことがあったけど、全然違った。

そしてスポーツをしていても、やっぱり大学生になるとみんな派手だった。個性が溢れてて、大学生すごいなあ。素直にそう思った。馬鹿だった。

ここで生まれたこのとんでもない思い込みのせいで、わたしは十ヶ月後に、大きな失敗を犯す。

わたしがこのオープンキャンパスがなんのオープンキャンパスだったか調べて行けば、十ヶ月後の失敗はなかったかもしれない。

オープンキャンパスのために舞台があって催しがされてて、オープンキャンパスのために食べ物の屋台がたくさん出てて……特に深くは考えもしなかったが、わたしの思考回路は自動的にこうなっていた。

今思い返すとあり得ない思考回路である。どれほど、高校生に優しい大学なんだ。

それから舞台でダンスが始まって「わーすごいねー」とぽけーっとし、学内のセブンイレブンでサラダを買って食べて、模擬授業を受けたぐらいの記憶しかない。

学食に入りたかったけど、ごりごりした人たちが多くて「一般人入っちゃいけないんじゃない?」と話し合いの結果、やめたのだ。今思うとただの部活帰りの学生たちである。

あと、法被を着た人がトランシーバーで「ソーセージ足りませんどうぞー」とやっていたのが妙に印象的だった。

 

(この法被の人たちはなんなんだろう?  熱くないのかなあ)

 

他にも何人か青い法被を着ている人たちを見た。瑞々しい青色の法被だ。

入学してからわたしは、この法被を着てる人たちがなんだったのか知ることになる。

さらにこの日から二年後。自分がこれを着ているなんて、この時のわたしは知る由もない。

でも友達は「大学ってこんななんだね」「体育大の人ってかっこいい人ばかりだね」と、少しは楽しんでくれたみたいだった。専門学校に行くことが決まっているので「大学がどんなものか見てみたい」と言って、付き合ってくれたのだ。

 

今なら言える。

申し訳ないけど全然、大学の参考にはなってなかったよ、と。

 

あとは、もらったパンフレットに当時の柏レイソルの選手や、元ジュビロ磐田の選手や監督が載っていてテンションがあがった。

二時間かけてきたものの。オープンキャンパスの趣旨や寮の仕組みについてわたしはなにも理解しなかった。

ほぼなにも収穫せずに、むしろいらない思い込みを抱いて東京に帰った。

そしてさらに「ファンキーな体育大怖い、運動音痴にはついてけないきっと」という考えにまで至った。

(入らないな。やっぱりここは)

地元の駅に帰ってくると、駅前にはファミリーマートもミスドもドトールも、なんだってあった。

 

4.ついに体育大受験……受験会場は教室ではなく……

それから時は経ち、ついに受験シーズンへ。

この頃のわたしは、緊張のあまり食欲がなくなってしまい、キットカットぐらいしか喉を通らなくなっていた(食べてるものの名前だけは強気)

 

ここでわたしは、本屋とゲーム会社のハーフみたいな名前のあの大学の受験に遅刻しそうになってしまう。

あまりにも「受かったら寮とか……」と思ったら、やる気が全く出なく。大学へのアクセス方法をきちんと調べなかったのだ。結果、同名の駅でも線が違う駅を目指してしまったのだ。

途中でiPhoneに出てる時間と合わなくなり、なにかおかしいぞと気づき大パニック。

すごく高いライナーに乗ろうとして、慌てて駅員さんに「乗らなくても間に合うから!」と止められ、案内してもらう始末。

なんやかんやで、あの墓地のある駅に着けたのである。

時間は焦ったわりには余裕だった。

でも遅れてる方だったから「教室入り辛いな」と思った。

他の大学の受験の時は、お手洗いにすら行きづらかったのだ。みんな集中して最後の追い込みをしているから、教室は痛いほど静かで、物音ひとつすら立てづらかった。

 

しかし、この心配はただの杞憂に終わった。

会場は広い広いバスケットボール館で、人一人入っても、誰も気にも留めなかった。普通に話し声も散らばっているぐらい。今思うと、受験会場から体育大は寛大だった。

 

(ああ、やっぱりここは体育大だ)

 

受験生も他に受けた三つの大学と違って、受験じゃなくて運動しに来たような服装の人ばかりだった。

受かったらこの人たちと同級生である。

運動音痴のわたしが、この足も速そうだし重い物も軽々持てそうなこの人たち(みんなそういう風に見えた)と、同級生になれるのか?

なんやかんやで、あんまり気乗りしないせいか、一番落ち着いて受験できた。

帰りのバスも他の大学の時と違い、うるさくてびっくりした。すこぶる元気なのである。受験生だよね? と聞きたくなるぐらい。

 

「ひっとつもわかんなかった!!!」

 

こんな感じである。

あと、体育系の予備校などは数が限られていて、そこで仲良くなった人たちが多く、みんな顔見知りだったようだ。

そのことを当時は知らなかったので「なんでみんな友達なの……」とびっくりした記憶がある。

 

 

5.合格と共に始まる荷造りと、お別れ

三月。合格通知がきた。

早稲田大学には……

もちろん入れず!

 

このおかしな名前の大学と、滑り止めの大学に合格していた。

わたしは一番、自分が恐れていた展開になり、それはそれは頭を抱えた。ORZの顔文字のように「うわあああああ」ってな具合だった。ついでにその横に川の字でもついて、より悲壮感漂うぐらいに。

滑り止めの大学が頭に浮かんだ。

滑り止めの大学は家から一時間ぐらいだし、中華街が近かった。

 

(寮なんか入らず、中華街に行きたい)

 

一瞬、誘惑に負けそうになったが、冷静になった。

なんで寮と中華街が比較対象になってるんだ。

自分の勉強したかったことに重きを置いたら、もうどちらの大学に入るかは必然と決まっていた。

わたしは友達に合格したことを伝え、しばらく会えないかもしれないことも伝えた。

みんななかなか悲しんでくれて、お別れの手紙をくれた。優しい。

生まれて初めて転出届を出した。

段ボールで荷造りをした。

大学からアンケートがきた。

睡眠時間や不安なことについてのアンケートだった。

九時間寝るので静かな人と二人部屋がいいとやっつけで書いて送り返した(実際そんな寝ない)

 

卒業旅行はディズニーに行ったり、山梨でバーベキューしたり、大阪に行ったり。どれも楽しかったけれど、常に入学と入寮のことがもやもやしていた。

そしてこの三回の卒業旅行で激太りした状態で、入寮と入学をすることになる。体育大生っぽくなろうという考えはゼロである。

最後の最後、3月31日に撮ったプリクラには「3月終わるな」と書いた。そりゃ終わるわ、31日やぞ。

4月2日。結局このずるずるとした気持ちのまま、わたしは駅で泣く泣く友達と別れ、千葉へ向かった。受験同様、懲りずにまた駅を間違えて遅刻した。

行きの電車の時点で、家に帰りたくなっていたわたしは、色々な意味で想像以上の世界が待ってることをまだ知らない。

 

 

おわり

 

 

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おわり

 


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