チーム天狼院

相談という名の責任転嫁《川代ノート》


記事:川代紗生(天狼院書店スタッフ)

「相談させて欲しいのですが」
そう言われることが、最近増えた。
おそらくそれは、会社にメンバーが増えてきたこと、時間がたつごとに私がどんどん古株になっていくことなど、色々な原因があると思うが、まあとにかく、相談されることが増えてきたように思う。相談することが多かった私が、相談されることの方が多くなってきた。
そんなとき、相談される立場である以上、何かしらの解を出そうとして頭を捻るのだが、あるときふと、どっと疲れる瞬間があった。

なんか、「相談される」って、すごい疲れるな。

自分自身、気がついていなかったのだけれど、相談されることに対して、私は疲弊を感じているようであった。これはどういうことなのだろう。
私はもともとの性格上、比較的頼られるのが好きなタイプだし、承認欲求が非常に強いので、「川代さん、相談したいんですけど」なんて言われると、「おっ、そう? じゃあ頑張っちゃおうかな」とむしろテンションが上がるタイプである。その場その場で、最適解を考えるというのも好きだ。ビジネスをしている中で、ベストな選択肢が見つかって、さらに自分が決めた行動がよい結果を生み出したり、明確な売上につながったりしたときの満足感もすごい。

けれども、ふと思うことがあるのである。これでいいのだろうか? と。

たとえば、こんな風に言われることがある。

「これってどうすればいいですか?」
「相談させていただいた上で決められればと思います」
「どうするか決めてください」

そしてそう言われるたびに、私は一生懸命、そのもらった質問に対して、答えを出そうとする。
うんうん頭をひねり、あーでもないこうでもないと悩みながら、最も良いだろうと思えるような、もっとも全体利益が高いだろうと思えるような答えを考え、そして、

「こうしたらどうでしょうか?」

と答えてみる。
そうすると、どうなるかというと、

「わかりました。そのように対応します」

と答えが返ってきて、そして、私が言った通りに物事が進んでいく。

私が言ったことがその通りに実現されるということは、とても良いことだ。
それに、きちんと相談してもらえた上で、決定されるというのも、とても良いことだ。
むしろ、何も相談がないまま、独断専行で進められることの方が、ずっとまずいことだろうと思う。
けれども、なんだかなあ、と腑に落ちないようなこの気持ちは、何なんだろうか。

あるとき、こんなことがあった。

「川代さん、これってどうすればいいでしょうか?」

新人のスタッフが、不明点を私にたずねてきたのである。けれども、わたしはちょっと不思議だった。彼は私が担当する店舗とは別の店舗の配属だったからだ。
私の担当する部署ではないところに所属する彼が、どうしてわざわざ私に質問してくるのだろう?

そう疑問に思って詳しく聞いてみると、実のところ、もともとやりとりをしていたスタッフに色々と質問をしていたのだが、「確認します」と返事がきたきりで、結局のところ何がどうなっているのかよくわからなかった。他にやりとりをしていた別の人に聞いても同じだった。らちがあかないので、会いにきました。
と彼は言った。

私は驚いてしまった。彼はたらい回しにされていたのだ。「確認します」という言葉を言い訳にして、いつまでたっても決断がなされないまま、ずっと放置されていたのである。

それを聞いて、びっくりするのと同時に、私は深く反省した。そして、今まで、何が一体腑に落ちていなかったのかも、ようやく理解することができた。

私は、自分で一生懸命考えているようでいて、実は、「決断できない組織」を作ってしまっていたのである。

「なんでも相談して」「何かあったら確認してください」「独断で動かないで、判断をあおいでください」

他の人に任せるのが怖いので、最終的な判断は全て自分がやるように仕向けていた。自分が全て把握して痛かったからだ。

けれども、このままでは組織は崩壊するということに、この失敗を経て、ようやく気がついたのだ。
私がやっていたのは、自分が古株であるという立場を言い訳にして、最終決定権を私に集中させてしまったという、非常に大きなミスだった。だからこそ、他のスタッフは、自分の中で判断しないで、「とりあえず相談する」という癖ができてしまっていた。これではいつまでたっても、「決断する人」が一人になってしまう。

私はずっとモヤモヤしていた。「相談したい」「意見をききたい」「どうしますか」と言われるたびに、「なんだかなあ」とか「なんで私ばっかり」とか、そんな風なことばかり考えていた。モヤモヤする必要ないのにどうして、となんども思った。でも原因がようやくわかった。私は「決断すること」に対して、大きなストレスを感じていたのである。

「決める」ということは、責任を負うということである。もし何か間違ったことがあった場合、責められるのは「この方向性でいきましょう」と決めた人だ。ミスがあった、トラブルが起きた、何か対処しなければならないことができた、謝らければならないことができた。そのとき真っ先に行動しなければならないのは、決断した人なのだ。

よく、「責任の所在が明らかでなかった」ことが原因で、ミスが起こる、ということはよくあると思う。これはなぜ起こるのかというと、「決める」という作業をみんなでしてしまうからだ。「みんなで決めたから、みんなの責任だよね」という意識になり、結果的に誰も責任をとることができないという現象が起こるのである。

私はなんてことをしてしまったんだろう、と思った。私がやるべきだったのは、なんでもかんでも相談してということではなく、最終決定権を私に集約させることでもなく、「最善の答えを考え出す力」を身につけてもらうことだったのだ。全員が最善かいを出せる組織づくりをしていかなければならなかったのだ。どうしてそんな簡単なことに気が暑かなかったんだろう。

きっと、誰もが、無意識に決断することから逃げているのだと思う。なんとなく、ふわりふわりと、決断しないように、流れを持って行こうとしているのだと思う。そんなときに使うのだ。「相談させてください」と。「相談」という名の責任転嫁を、みな、無意識的にやってしまっているのだと思う。

これから何をするべきだろう。
相談するのはもちろん良いことだ。けれども、きちんと一人一人が答えを生み出せるようなチームを、私はこれから作っていきたいと思う。



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