チーム天狼院

【村上春樹がイヤ~なあなたも、きっとこれにてハルキスト】 あのう、書店員なんですけど、私ぶっちゃけ村上春樹がニガテだったんですよね。≪リーディング・ハイ≫


こんにちは。京都スタッフ三宅香帆です。
単刀直入にお聞きします。
村上春樹、お好きですか?

村上春樹。やたらお洒落な村上春樹。わかってるとなんかよさげな村上春樹。二ホンブンガクといえば村上春樹。
私は大学院で文学を専攻してまして、書店スタッフにまで首をつっこんじゃうくらい、まぁ、あらゆる文学への欲求は強いほうなんですね。
だけど、だけど、ここで告白しておきますと、
私、村上春樹がよくわからんかったのですよ………!!!

だってさ、パスタとか鼠とか青豆とか意味が分からない。「ねじまき鳥クロニクル」なんて題名の時点でよくわからない。読んでみると「僕」の独白が続いてやっぱり意味分からない。ねえみんなこれほんとに意味分かって読んでるの??? 私の感受性が及ばないだけなんだろうけどさ???
村上春樹を通らずんば本好きにあらず、という圧力を勝手に感じながら、私は「ハルキ・コンプレックス」を抱えたまま人生22年目に突入してしまいました。

しかしですね!
ハルキ・コンプレックスが最早どうでもよくなり始めた最近になって、なぜか、私、村上春樹沼にずぶずぶと浸かりつつあるのです。
人生何があるか分からない。今になっての村上春樹。
ま、でも村上春樹だろうとなんだろうと、好きなものは多い方が人生楽しいですよね。本を読んでうっかり癒されてしまう何かがあるのはいいものです。

そんなわけで今回は、私のように「正直、村上春樹いみわからん」と思ってらっしゃる方に、「こっから読んだらどうかしら」とひっそり本をご紹介しようと思います。
ハマるも八卦、ハマらぬも八卦。
あなたもよき読書ライフをお送り下さいませ。

 

***

1.村上春樹が嫌いな女は、村上春樹が嫌いなわけじゃないのよ。


私はここで声を大にして主張したいことがあります。村上春樹がニガテ、っていう女性のあなたに向けて、です。
あくまで春樹が苦手な女性限定。男性のあなたは飛ばして二番にお進みください。

~~~(こっから男子禁制)~~~

さて、華の女子会となったところで主張します。
はい、村上春樹が嫌いなそこのあなた。
いいですか、村上春樹が嫌いな女性は村上春樹を嫌いなわけじゃありません。村上春樹を好きな男性が嫌いなんです。

村上春樹というのはやっぱり天才で、何が天才って「これは私(僕)の物語だ」と読者に共鳴させる力が頭抜けているんですね。彼の小説の中には、あなたがいる。それは村上春樹が精神の深い井戸を掘り抜いた先で物語を紡いでいるからです。村上春樹と私(僕)がつながってることは本当だ、と私も思います。
がしかし! ここで何が問題って、彼の小説の主人公である「ウイスキーと美人が好きで、休日の昼間はパスタを茹でる僕」が「おれだ……!」と思ってしまう男性が多いことなんですよっ!
ちがうよ~それは小説の中の表現にすぎないよ~なんて声は彼らに届きません。村上春樹の語りが上手いがために、表層の僕と、深層の僕をごっちゃにしてしまうんですね。つまり村上春樹が好きな男性は、「ウイスキーと美人が好きで、休日の昼間はパスタを茹でる僕」を「これが俺の真の姿!」と思ってしまう。
とすると、私たちが生きるのは現実世界ですので、現実世界ではなんだかナルシストな女好きに見えちゃうわけですよ。まったくもう。(男なんてすべからくナルシストで女好きだなんて意見はここでは知りませんよ私はっ) あなたが嫌っているのはそんな男たちではないのでしょうか。

はい、というわけで、「私が嫌っているのは本当に村上春樹なのか!? 村上春樹をずらっと本棚に並べていたアイツではないのか!?!?」と一度自分の胸に手を当ててみることを私はおすすめ致します。
そして「もしかして村上春樹自身は実際そこまで嫌いじゃないのかも」と思ったあなたには、こちらの二冊をご紹介致します。

◆『村上さんのいるところ』(村上春樹(著)・フジモトマサル(イラスト)、新潮社)◆
ネットで話題になった村上春樹への質問集。めちゃくちゃ面白いです。奥さんにトホホと肩を落としながら、野球の結果に一喜一憂し、まぁがんばりましょうねと言ってくれる村上春樹をなんだか好きになってしまう本。誰かを見るには、イメージよりも本人の声を聴くのが一番です。

◆『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』(河合隼雄・村上春樹、新潮文庫)◆
人間の精神の底の方を漂うことに長けた、二人の対談本。村上春樹の小説を読んだことがない方でも面白いと思います。人間の心に違うアプローチで接する二人の言葉は、あなたの心の奥にも届くのでは。私は彼らの「物語の効用」を説く箇所がとても好きです。

 

2.村上春樹より先に「批評」を読んでしまおう。


邪道でごめんなさぁい! 多方面から怒られそうですが、村上春樹の小説よりも先に批評本を読んで、「お腹をすかせておく」ことを私はおすすめします。
というのも、昔は文壇から批判されてた村上春樹も、近年はたくさんの批評家が言及する存在になりました。というか批判も含めて、現代に生きてる批評家は、村上春樹について何か言いたくてしょうがないんでしょうね。村上春樹を無視できないんですよ、みんな。

「一般論で言って、書評というのは人々の食欲をそそるものであるべきだと、僕は思うんです。」と村上春樹は『少年カフカ』の中で言ってますが、この文は必ず撥ね返って批評家に刺さるようです。
批評家が「村上春樹に言及するときには、がんばって読者のおなかをすかせなきゃ……!」と思わざるをえない無言のプレッシャー。そのおかげで、私たちはわりと楽しい村上春樹批評を読むことができます。

◆『村上春樹にご用心』(内田樹、アルテスパブリッシング)◆
一番のおすすめはこちら。あふるる村上愛が伝わってくる、まさしく「おなかのすく」書評。書評というより、村上春樹を通してみる世界のとらえ方を語りかけてくる本。村上春樹を読んだことのない人ですら楽しめる書評、ってすごい。

◆『謎とき 村上春樹』(石原千秋、光文社新書)◆
村上春樹を読んだことがあって「や、意味分からん」と思った人におすすめです。文学研究とは文学に隠された謎をといてゆくことにあります。謎は謎のままにしといたほうが、と思う方は読まないでください。だってこの謎解き、鮮やかすぎるんだもの!

原文の前に批評だなんて、と顔をしかめられる方もいるでしょうが、考えてみてください。星空やホロスコープが読めなくても、だれかが解釈してくれた星占いを私たちは楽しんでるじゃないですか! 星占いを読んでみて、面白そうだな~と思ったら、実際に外に出て星空を眺めてみたらいいのです。星座を知ってから見る星空だってきれいなんですから。
星空を眺める前に、まずは星占いのプロフェッショナルの話を聞いてみてもいいんじゃないかな、と私は思います。

 

3.村上春樹は短編やねん!


そしていよいよ原文・村上春樹。私は村上春樹の短編を全力でおすすめしたい。
や、長編もそりゃいいですよ。『ノルウェイの森』も『海辺のカフカ』もそれはもう名作です。でもいきなり長編を読むより、まずは短編で「へえ、村上春樹って面白いな」と思ってからのほうが村上春樹は楽しいのではないかと思うのです。
村上春樹の短編は、どこかきゅんとするものが多いです。まるで昨日見た夢の断片みたいな、ある1シーンが印象的な物語たち。
意味の分からない小説は、そのまま意味が分からなくていいのです。(ってさっき言ったことと矛盾してるようですが) 夢を見てるみたいな感覚で、ふわふわと現実から浮遊できればそれでいいんです。結局は。

読んだことのない方は、ぜひ、短編できゅっと心の奥底を掴まれてみてほしいです。
おすすめはこちらっ。

◆『カンガルー日和』(村上春樹、講談社文庫)◆
表題作はたしか国語の教科書で読んだのですが、私はこの本の中の『四月のある晴れた日に100%の女の子に出会うこと』って短編がとても好きなんですよね。「恋愛」の「恋」の部分をきゅっと絞った水滴のような物語。
ちなみに、前述した『村上さんのいるところ』で「100%の女の子に出会えましたか?」と聞かれた村上春樹の回答も、大変素敵でにやけてしまいます。セットで読んでみてくださいね。

◆『パン屋再襲撃』(村上春樹、文春文庫)◆
表題作が好き。「日常の歪みと裂け目、そしてその修復」という村上春樹小説に一貫したテーマを、重くなく夢心地で描いてるのが、とても、いい。短編はこうでなきゃあ! とにこにこしてしまいます。このテーマに惹かれたあなたは絶対長編も大丈夫です。僕に付き合って物語を追っかけてください。『象の消滅』や『ファミリー・アフェア』もこつんと心に響いてくる物語です。ぜひ日曜日にパンを片手に読んでください。

 

***

真の村上ファンが見たら卒倒されそうなリストになってしまいました。あくまでここに載ってるのは「村上春樹が苦手な人のための」「入門編」ですので、許してくださいね。私はちなみに『ダンス・ダンス・ダンス』が今のところ一番好きです。

しかしまぁ、なぜ私がここまでして「村上春樹を読んだらいいよ!」とおすすめするのか。

それは、最初にもちらりと言いましたが、まぎれもなく、「村上春樹はあなたのために書いている」からです。
……うーんオカルトめいてますね、スミマセン。でも私はほんとにそう思うんですよ。村上春樹は、本当に、あなたに向けて物語を紡いでいるんです。
というのも、彼のすごいところは、深く深く潜っていった先に、私たちが奥底でつながってる部分で物語を語っているとこだから。その深さがちょっと現代日本作家の中では群を抜いてるんだろうなぁ、と。

彼の小説は、学問的に言えば集団的無意識みたいなものへのアクセスがすごく深いところでなされてるから、こんなに読まれる。そして、それはどこかであなたのことも癒してくれると思うんです。
同じ時代で同じ言語話者にそういう作家がいるって、知っておくだけでも全然違う。あなたもまた、今は全然興味のない村上春樹にすくわれる日が来るかもしれない。
だからこんな記事を書きました。

ま、こんなこと言ってますが、ちらりと読んで面白かったら読むってだけでいいんだと思います。小説を読むのに難しい蘊蓄なんていりません。考えるな感じろーってやつです。

さてさて、読んでくださってありがとうございます。
少しはあなたの食欲が湧いてるといいんですけどね。

おすすめです、村上春樹。

 

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