fbpx
チーム天狼院

私たちは、京都に騙されている。《三宅のはんなり京だより》


鴨川の橋を自転車で渡って、ふっと不思議に思うときがある。
私たちは、なんでこんなに京都が好きなんやろう。

 

―――いや、「私たち」なんて逃げちゃいけない。「私」は、だ。

 

京都が好きだ。
京都の歴史が好きだ。街並みが好きだ。食べ物が好きだ。
京都という街の雰囲気そのものが大好きだ。

私の好きな作家さんは、「京都は面白い街だ。――少なくとも何かを幻視しようする者にとっては」とエッセイに書いていたことがある。
そう言いたくなるのはわかる。
だって京都はいつも思わせぶりなのだ。
「なんかここであったんやろうな」って思わせるような景色に満ちている。その石畳の隙間に、木の柱の裏に、川に架かる橋の下に、きっとここには何かあったんだなって予感が隠れる。

実際、よく目を凝らしてみると「ああ○○って戦いがあったところなのか」なんて分かったりして。
そして私は微笑む。
やっぱり京都。なんかあったんやん、って。

 

だけど、だけどだ。よく考えてみて欲しい。
そもそも、そこに歴史のない街なんて存在しないのだ。
東京だって大阪だって、場所があって人がいたら、そこには歴史がある。
ただその差は、物語として後世に語られ続けるかどうかだけで。

ただなぜか、私たちは、京都だけを「歴史のある街」として、憧れる。

やっぱり京都には何かある、って微笑む。

 

―――もしかしたら、私たちは、京都に騙されてるんじゃないか。
この思わせぶりな横顔に、くらっと幻視させられてるだけではないのか。

 

いや、そんなはずはない。
わたしは少しぐらっとした目の前を立て直す。

だって京都には千年前から残る建物があって、文化があって、碁盤の目の通りがあって……。

 

だけど、本当はそれらも少しずつ変化を遂げながら「生き残ってる」ことをわたしは知ってる。
少しずつ歴史の影響を受けながら、今の形の京都になったということも。

奈良や東京といった、ほかの街と同じように。

 

じゃあ、なんだろう。
何がこんなに、京都の何が私を惹きつけるのだろう。

 

――東京に行った友達が言う。
「鴨川見るだけでなんか泣けるわ」と。

 

わかる。私も京都の中で鴨川が一番好きだ。
友達と花火をしたり、飲み会をしたり、一人でぼーっと考え事をしたり、たくさんのやさしさが鴨川を包んでる。
鴨川のほとりで自転車をこぐとき、一番四季を感じる。

鴨川は、ただの川じゃない、って思う。
京都の真ん中を流れる川。京都の何かを保っている川。

 

ふっと、私は「方丈記」の冒頭を思い出す。

行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。世の中にある人とすみかと、またかくの如し。

 

――ああそうか、川なんだ。

私は橋の上から、ふっと鴨川を見る。
水はずっとずっと流れ続けながらも、川であることは変わらない。
そこで過ごす人は変わり続けながらも、鴨川はずっと京都の真ん中を流れる。

きっと京都は、そういうふうに、私たちを騙し続けているのだ。

京都には何かある。京都には歴史がある。京都には、何かが、いる……。
京都が「特別」であり続けるのは、そこにいる人や文化が変わり続けながらも、「鴨川」のようなシンボルをずっと変えないことにあるのだ。
鴨川、金閣寺、清水寺、碁盤の目。
京都は記号にあふれている。

 

川はいつだってそこにある。

だから私たちは、いつも安心して、「ああ京都には何かある」と言える。

 

そして私は、京都を好きになる。
「なんでこんなに京都が好きなんだろう」って言いながら。

 

その本当は、いつだって謎に包まれている。

 

 

京都は本当の姿を見せない。
ぼやぼやとその姿を煙に巻いている。

それでいいのだ。
それで私たちは京都の謎に惹きつけられ続ける。

そして時々、シンボルを見返して、ああ京都っていいなぁってやっぱり安心する。

そうやって私たちは、ずっとずっと京都に騙され続ける。

だから、私は京都が好きなのだ。

 

京都に天狼院ができる。
また、京都に謎が増える。

私は少し微笑んで、鴨川を背に自転車を漕ぎ始めた。

本好きの、本好きによる、本好きのための夢の部活「月刊天狼院書店」編集部、通称「読/書部」。ついに誕生!あなたが本屋をまるごと編集!読書会!選書!棚の編集!読書記事掲載!本にまつわる体験のパーフェクトセット!《5月1日創刊&開講/一般の方向けサービス開始》

【天狼院書店へのお問い合わせ】

TEL:03-6914-3618

【天狼院公式Facebookページ】 天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。

【天狼院のメルマガのご登録はこちらから】

メルマガ購読・解除

【有料メルマガのご登録はこちらから】

天狼院への行き方詳細はこちら

【通信受講/日本全国対応】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ2.0」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜《この春、大人気ライティング・ゼミが大きく進化します/初回振替講座有/全国通信対応》

 

【平日コース開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ2.0《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜《6月開講/初回振替講座有/東京・福岡・全国通信対応》

 

*本講座、読/書部「リーディング&ライティング講座」は、「月刊天狼院書店」編集部(通称「読/書部」)に入部(決済完了)されている方は無料で参加いただけます。
《詳細はこちらから》「月刊天狼院書店」編集部(通称「読/書部」)イベント詳細/申し込みページ

 

 

なお、「読/書部」にご参加いただいたお客様にも記事を寄稿していただいております。「読/書部」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、スタッフのOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

本好きの、本好きによる、本好きのための夢の部活「月刊天狼院書店」編集部、通称「読/書部」。ついに誕生!あなたが本屋をまるごと編集!読書会!選書!棚の編集!読書記事掲載!本にまつわる体験のパーフェクトセット!《5月1日創刊&開講/一般の方向けサービス開始》

 

【天狼院書店へのお問い合わせ】

TEL:03-6914-3618

天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F

TEL:03-6914-3618
FAX:03-6914-3619

東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021

福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

TEL 092-518-7435 FAX 092-518-4941

【天狼院公式Facebookページ】 天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。

【天狼院のメルマガのご登録はこちらから】

メルマガ購読・解除

【有料メルマガのご登録はこちらから】


関連記事