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ありさのスケッチブック

【嫌われ役】どうして彼女は辛い役割を担い続けるのか《ありさのスケッチブック》


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「このプロジェクトの全体の動き遅すぎない? 危機感持ってる人私だけなのかな」
ぐさああっっ
う……痛いところを突かれた。
うん、その通りだと思う。
本当にのんびりし過ぎてこのままじゃ本番の二月に間に合うか不安かも。
いやでも、コアメンバーとはいえど、私は全体の責任者ではないし……
私に言われたことではない……

私は痛いところを突かれた胸をさすりながら、
とあるプロジェクトの進みの遅さを他人のせいにしようとしていた。
このプロジェクトでは、来年の二月に開催する六日間の合宿型イベントの設計をしている。
本当だったら二回のミーティングで決まる予定だったテーマが、今も決まっていなかった。

その遅れが若干気になりながらも、テーマの決定は企画チームの仕事だし、
と見ないようにして自分が責任者である営業チームの仕事に専念していた。
そんな中での、営業チームのメンバーからの指摘だった。

ま、まずい。これじゃぼろがもっと出てきてしまう……
焦った私はそそくさとスケジュールを組みなおした。

***

ここだけの話、私は冒頭の指摘をした彼女のドストレートで歯に衣着せぬ物言いが苦手だった。
柔らかい枕詞は一切使わず、思ったことははっきりと伝える。
相手が煮え切らない返事をしたらなおさら口調は強くなる。
どんな相手に対しても彼女が意見する時の意思の強さは変わらなかった。

そんな彼女と出会ったのは、今年の二月のこと。
今彼女と共に設計しているイベントでお互い参加者だったのだ。
しかし、その場ではグループが違ったのもあり、ほとんど話せなかった。
もしかすると、一言も話してないかもしれない。

せっかく同じ場にいたのにもったいないことしたなあ……と思っていたのだが、
私はそれから二ヶ月もしないうちに彼女と数ヶ月一緒に活動する機会を得た。

最初から、私は警戒しまくりだった。
私は極度の人見知りで、相手と打ち解けるのに非常に時間がかかる。
さらに、私の苦手とする、何でもストレートにいうタイプの子だからなおさらである。
私はいちいち彼女の反応を気にしたり、会話が途切れないように必死だった。
それが伝わってしまいそうなのも怖くて、いつも落ち着かなかった。
そんな絶望的な状況だったにも関わらず、一緒に活動して四か月経つ頃には、
なんとか会話の合間の沈黙にビクビクすることなく話せるようになってきた。

そんなころに来たのが、冒頭のメッセージ。
プロジェクトの進みの停滞感という、なんとも痛いところを突かれたのであった。
またこんなドストレートに……
さすがだなあ……
相手の反応を気にするあまり、スパッと気持ち良く意見を言えない私は、
この頃になると何も気にせずズバズバと気になったことや不満を言ってのける彼女が羨ましくもあった。

そんな彼女のイメージが変わり出したのは、ある日の彼女の発言からだった。
「私さ、○○に嫌われてるんだよねー」
え、と私は戸惑いながら彼女の方に向き直った。
嫌われている、というネガティブな言葉をつかっているにも関わらず、
いつもと変わらないカラッとした物言いだった。
その後も続く彼女の告白を聞きながら、
そんなことないでしょー、とかたまたまだよー、とか相槌をついていたが、
内心私は驚いていた。
彼女が人からの嫌悪を気にするとは思ってもなかったからである。
私は彼女の痛いところをつついたりするストレートな発言は、
相手の反応を全く気にしないからこそできるものだと思っていたからである。

それからは注意しながら彼女の言動を見ていたのだが、
やっぱり嫌なことは嫌だというし、
思った不満はすぐに口に出てしまうし、
まあ、いつも通りだった。

そんな中で気になる言動が一つだけあった。
「私は嫌われに行っているから」とか、
「絶対あの子に嫌われた―」とか
嫌われた、を連呼することだった。

そこで彼女は言いたいことをストレートに言いつつも、
相手の反応も気にしていることを確信した。

ここで、新たな疑問が生まれた。
どうして、キツイ言い方をすると嫌われるとわかっているのに
そのまま「嫌われ役」でいるんだろう……?

その時はわからなかった。
彼女が嫌われ役になってでも指摘を繰り返す訳が分かってきたのは、
それから数日後のことだった。

私と彼女はその時東北で開催されるイベントの手伝いに来ていた。
準備も含めて四日目にはイベントも無事終了し、
私たちは現地の学生と共にで公園でしっぽり飲んでいた。

そのうちの現地スタッフの一人がぼそっと口を開いた。
「おれ、××に就職する可能性、すごいあるからなあ……」
××とは、お堅い人間ばかりで固められたような企業だった。
その企業は現地での知名度は高いが、規則でガチガチに縛られているような企業だった。

彼の発言を聞くや否や彼女は容赦なく言い放った。
「あんなガッチガチのところにいたら、
絶対もう何もできなくなると思いますよ」

これまたドストレートだな……とひやひやしながら
私はどうフォローしようか考えていると、
彼はおずおずとこう返答していた。

「いや、性格的にああいう堅い感じが合っていると思うんです……」
確かに、彼は真面目そうできちんとしている印象がある。

「今、それ変えればいいじゃないですか。
あんなところいたらつまんない人になりますよ」
彼女の二回目の反論を聞いた時、ふと気が付くことがあった。

あ、これ本気で相手のこと心配しているから言っているんだ。
彼女が心配という感情を自覚しているかは分からないが、
相手に真剣に向き合おうとしていることは間違いないだろう。

私だったら「僕はこういう人だからいいんです」と言われたら、
もっといい道があるかもしれないことに気づきつつも
「それならいいかもしれないですね」と返してしまうと思う。

これでは、相手のことを思いやっているようで
相手のことを全く気にもしていないのと一緒だ。
今現在の相手が傷ついてしまうことによる心の負担を気にして、
未来の可能性を示すのを止めようとしているのだから。

その分、彼女は少なくとも私以上には彼の未来を心配している。
少々雑ではあるが、彼が今よりも視野を広く持つように促している。

今嫌われても良い、その人のためになれば。
それが、彼女の行動指針なのだ、と気づいたのはその会話を経た後である。

きっと彼女は今のような言い方をして、
実際に煙たがられたり、嫌がられたりしたことがあったかもしれない。
敬遠されやすいだろうな、とは思う。
しかしそれは彼女が嫌な人だからではないし、
気を遣えないからでもないはずだ。

彼女の言うことは、正しすぎるんだと思う。
その通りすぎて耳が痛いんだと思う。

実際、私がプロジェクトの遅延を指摘された時は胸が痛かった。
しかし、どうにかした方がいい状態であったのは紛れもない事実である。
痛いところを突く彼女の発言は、本気で改善しようとする彼女なりの優しさだと思う。

本当に優しい人というのは、
私のように反応を気にし過ぎて
回りくどい言い方をして肝心のことを伝えきれない人ではなく、
彼女のようにどう反応されようが
変えるべきと思ったことはストレートに伝えられる人なのだと思う。

今は、彼女の発言は向き合うべきことを常に提示しているため、
正しすぎるからこそ嫌がられたりするかもしれない。
しかし、少し時間が経った頃に、
今の状態にあるのはあの時の彼女の発言のおかげだ、
と感謝する瞬間があるのではないだろうか。

誰しも一回はふとした瞬間に誰かのことばを思い出す瞬間があると思う。
そのことばは、思いがこもっていたり、強い口調だったりすることが多いのではないだろうか。
もしそうであれば、彼女の発言はまさにそういうことばなのだと思う。

私は、彼女に伝えたいことがある。

何かを伝える時に口調がきつくなってしまう、と悩んでいたけど、
私はそれが羨ましいと思っているよ。
なぜなら、相手に伝えたいことをはっきりと伝えられているってことだから。
さらに、まわりくどい私のことばよりも伝えたいことが正確に相手に届くはずだから。

いつも至らないところを指摘してくれてありがとう。
あなたの嫌われに行く姿勢は相手を思う優しさだって気づけてよかった。
痛いところを突いてくるのも、本当に改善した方がいいことを
気づかせようとしたからなんだよね。やっとわかった。
いやー、本当に気づくの遅すぎだよな。
頼りない私に、力になるよって言ってくれてありがとう。
これからも、よろしくね。

***
彼女は、この記事を読むだろうか。
読んでほしいような気もするし、読んでほしくないような気もする。
まわりくどい私は、こんなやり方で彼女に言葉を届けようとしたくなってしまう。

この記事を書いたことが彼女にばれたら、
きっと私は彼女に、直接言えよ! と小突かれることだろう。

***

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