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チーム天狼院

やっぱり観に行くんじゃなかった。シンガーソングライターという夢を目指す、幼い頃からライバルで尊敬してる同い年の女の子のライブになんか。


*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:田中望美(チーム天狼院)
こんばんは。
私は今、魂を抜かれた殻っぽ状態です。

やっぱり行くべきではなかった。
同い年のあの子のライブになんか。
迷っていたのです。ライブが始まる午後8時ギリギリまで。
あの子の声が漏れ聞こえているライブ会場の扉の前でも迷っていました。
心の中で、引き返すなら今しかないともう一人の自分の声がします。

でも、私は扉を開けてしまいました。
それももう、あの子の人間性に取り憑かれてしまった私のせいでしょう。

入ってしまったら、もうあとには引き返すことはできません。
ここからは、私とあの子の勝負です。
私は隠れ負けず嫌いなので、素直にあの子のライブを聞こうとしました。
天の邪鬼で意地を張るのは、かっこ悪いからです。

でも。
悔しいほどに、痛いほど心をえぐられます。
器大きく、すごいねっ、きっとシンガーソングライターになれるよって思いたかったのに、そう思いたかったのに。

私は、私は……とても嫌でした。
いろんなあの子のダメな部分を探しました。
どこがいいんだろう。これくらい上手い子なら世の中にたくさんいる。
いくらでもいる。
それでも夢は実現する、自分の目指すものになれるって信じてるの??
いやいや、無理だよ。というか、ならないでよ。成功しないでよ。

幼い頃からお互いの家で遊んで、一緒の習い事も励まし合って頑張って来た女の子。
子どもながら、お互いの良いところを尊重して関わってきた。離れてからも、そうだと信じてた。
その子は、本当にちっちゃくて、声もちっちゃい。あんまり自分を全面に押し出さない。控えめ。静か。
それに比べて私は、ハチャメチャ。お調子者。お転婆。
対象的だったけれど、本当に仲が良かったのです。私は、いつも「のんちゃん」て呼んでくれていたあの子のことが大好きでした。

でも、あれから10年以上が経って、私はその子に対して、少しずつ苛立ちを感じていました。
その苛立ちは少しづつ溜まって来ます。
最初は、一緒に歌とダンスのライブをしない? と言う提案を断られた時。
お祝いのコメントが、他の人よりもそっけなく感じた時。
会いたいという誘いを断られた時。

口では、そっか! わかった。ごめんね、忙しいのに。と笑顔で返していたけれど、
心の中では、
は? 何様? 私だって忙しいのに、こうやってライブに来てるのに。
自分のことばっかりじゃない??

そんな、汚い思いがでてくるのです。
そんな風に思う自分のことが一番、いっっちばん嫌で、嫌で仕方なくて、とても悔しかった。

だから、その思いに蓋をして、いつもその子の前では、愛想よく偽りの笑顔を振りまいていました。強がって、私は順調だよ。あなたのことなんかちっとも羨ましくないよってことを、謙虚にアピールしていました。中々変なやつだと自分でも思います。

今日、ライブに行って、その子の歌の2、3曲目で涙が出ました。
本当に心が苦しかった。
ミュージックバーのカウンターの高いイスとテーブルに手を置き、おさえていないと倒れてしまうんではないかというくらい。たった一口のお酒のせいだとは思えません。

そう。本当は、彼女のことが羨ましいのです。彼女のように生きられない自分が、とてもとてもダメに思えて、悔しいのです。
彼女は真面目で不器用。それだからこそ、とてもとてもまっすぐだから。一見か弱そうに見えて、実はものすごく心が強いのです。信じたことを貫く強さが彼女にはあります。

私は、どうだろう。
彼女は、この世に存在するたくさんの魅惑的なものを犠牲にすることに臆せず、歌一本で勝負している。
私は??
いろんなことに手を出して、逃げて、言い訳をして持ちきれないのにいろんなものを守って生きてない??

それでいいんだろうか?
それで、自分の求めるものに手が届くはずがない。
自分に甘すぎやしないか??

本当に悔しいくらい、彼女が作詞作曲した歌を聞くと、
自分にそう問いかけられているような気がして、心臓のオペをされているかのようにグサッときます。私の心はぐちゃぐちゃにかき乱され、思いが溢れ出します。心全開。心開放。もう。だから嫌だったんですよ。私の何もかもすべて見透かされたような気持ちになるから。
あんなに、気持ちを込めてバカ真っ直ぐに歌われたら、そうなるに決まってる。
それがとても怖かったんです。自分の見たくない部分が、でも、まっすぐ向き合わないといけない自分が出てくる予感がしていたから。

だから、行きたくなかったんです。
でも、行かなきゃと直感的に思ったのは、自分が出るダンススタジオの発表会本番が間近にせまってきているからでした。稽古中に、彼女の歌う姿を見て、私も伝わる歌い方を研究しなきゃと思ったし、意識を変えたかったからです。

実際に学ぶことはたくさんありました。
一人の表現者、アーティストという点で、
舞台に立つ人の人柄がめちゃめちゃ出るな~と思ったし、
技術が少しばかり劣ってしまっても、想いと努力と試行錯誤の「量」が比例していれば伝わるものは伝わるんだな~。
それが、本物なのだな~。
そうやっていく人が成功していくんだろうな~とか。
本当にたくさんのことを考えさせられました。
だって実際に彼女の歌う姿を見て、ただいい声とか、いいリズムとか可愛いとかそういうんじゃなくて、
自分事で具体的なことを考えさせられるんですよ。人生考えさせられる歌なんです。もう、最後は完全に彼女の世界に連れてかれていました。私の中を彼女がのっとったのです。支配です。だからアンコールのときには既に魂ぬけちゃったんです。
みんなが手拍子しているのに、私はどうしてもうまく手拍子が打てませんでした。それほどでした。勇気が出る曲も、明るい曲も、しっとりした曲も切ない曲も。全てに彼女の本気の思いが詰まっていて、受け止めきれないほど真っ直ぐに来るから、どんな曲も終始モヤッとした灰色のわだかまりがありました。

でも、しょうがないのです。
私は私で、あの子はあの子。それは事実で、悔しかろうが、優越感に浸ろうが、
認めるしかありません。
あの子の真っ直ぐな思いを見たおかげで、
自分の甘さとやるべきことが明確に見えました。
やるしかない。やったらやっただけできるんだ。そう強く信じて前を向くしかないんだと思いました。

彼女が私のことをどう見ているかなんて、ちっともわかりません。
今まではいろいろ想像して、
もしかしたら、目の先にも入ってないのかもしれない。それはそれで悔しいし、それほど自分のやりたいことに真っ直ぐだということだから、キツイし焦りもある、とか、
もしかしたら、私に対する態度が冷たく感じるのは、私のことを夢見ごっこしようとしてくる鬱陶しいやつだと思っているんじゃないかとか。あるいは逆に、向こうも私のことを意識してライバル視してるんじゃなかろうか、とか。それだったらちょっと嬉しいな、みたいな。

まあ、本当のところはわかりませんが、でもそうやって彼女のことを巡ってぐるぐる考える暇があるのなら、私は私でやるべきことを淡々とこなして、周りが見えなくなるくらい集中して行ったほうがいいに決まってるとふと思ったのでした。大切なことを見失っていた。

彼女に私の世界を支配される時間がもったいない。
もっと強くわが道を、我が人生を行かなきゃ、届ける側にはなれない。そうじゃないと、いつまで経っても受け取り、消費する側。

そう。私は人に夢や感動を届ける側になりたいのです。

だから、書くし、踊るし、歌うし、お芝居をして表現する。
表現を追求する。
最初は誰だって下手でダサい始まり。
それで結構。
それでも一歩ずつ一歩ずつ。
そうやって生きていくしかないのだから。
やればやっただけ進んでいくのだから。

一緒にライブやりたいって言わせるくらい、魅力的な人間になってやる。媚びてはなかったつもりだけど、その時まで、もう彼女に媚びたりしないし、サヨナラすることにする。きっとお互いの夢が成就するまで、密に関わってはいけないのかもね。
私達は届ける側になりたいのだからね。お互い主体的に動いていかなきゃだもんね。

ありがとう。今日、このタイミングでライブに行って 良かった。もっともっと強くならなきゃ、強くなれるって思ったよ。

***

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