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チーム天狼院

鎧は脱がないことに決めた


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:田中麻美(チーム天狼院)
 
「私、顔、怖いですか?」
 
とある平日の夜。場所は大学の近くのラーメン屋さん。集ったのは私と、私の同期と、先輩で合計3人。
その場所で私は尋ねた。私の顔、怖いですかと。
 
「……喋れば怖くない」
 
やや間を置いて答えた先輩の隣で、同期の彼女はうんうん、と頷いた。そうそう、話してみると怖くないんだよね、お前は、だそうだ。
 
「それって、話す前は怖いってことじゃないですか」
「そうだね」
 
当然のように言った先輩。私は何も言えずに黙る。同期はそんな光景を見てなぜか爆笑している。
 
顔が怖い、とよく言われる。意識して怖い顔をしているわけではない。どうやら私は、生まれつき怖い顔をしているらしい。怖い顔を持って生まれて来てしまったらしい。
 
私の20年ちょっとの人生において、顔が怖いエピソードはひとつやふたつではない。アルバイト先では「笑うイメージがない」と言われ、両親には「たまに殺気立っている」と言われ、すれちがっただけの小さな子にやたらと怯えられる。高校生のとき、顔が怖かったせいで不機嫌だと勘違いされ、それが部活の先輩に対してものすごく不満を持っているからだと思われ、その先輩に相談を受けた部長に呼び出されたこともある。実際はそんな不満なんてまったくなく、尊敬する先輩であったのだが、そう誤解させてしまったようだ。
 
よく、視線だけで人を殺すとか、そういった表現があると思う。私の場合、それが視線でなく顔なのだ。
怖い顔は人を遠ざける。近寄りがたい。怖い顔をしている人間に好き好んで近づこうなんて輩は、何か裏があるに違いない。普通の人間は近寄らない。
 
こうやって考えてみると、顔が怖いって、鎧みたいなものだと思う。なんだか堅そうで、ごつくて、叩いてみてもこちらの手が痛くなるばかり。関わらないほうがよさそうだ。
鎧甲冑を身に着けた私は、こうやって知らず知らずのうちに、人を遠ざけてきたのかもしれない。鎧がなければ、もしかしたらもう少し友達が多かったのかもしれないし、不要なトラブルに巻き込まれることもなかったのかもしれない。もう少し、円満な人間関係を築けていたのかもしれない。
 
中学生のとき、同じクラスのとある男子にやたらとビクビクされていた。あのときはその理由なんてわからなくて、でも仲の良い友達でもないし、と別に気にしていなかった。もしかしたらそれも、鎧甲冑を身に着けた私が怖かったのかもしれない。閉鎖的なクラスの中で、どうしても関わらなければならない場面が出てくる。席が隣になってしまったとき。同じグループになったとき。私が鎧を身に着けていたばかりに彼を怯えさせていたとしたら、申し訳ないと思う。
 
顔が怖いし、あまり口数が多い人間ではない。そりゃあ、出会ったばかりの人を怯えさせるのには十分だ。私がそんなことを考えていなくても、私の意志に反して、身に着けた鎧が人を遠ざける。堅くてごつい鎧甲冑は私の身を守ってくれるものなのかもしれないけど、他人との関わりを遠ざけるものでもあるのだ。
じゃあ、怖い顔をしなければいいじゃん、という話だが、意識して怖い顔をしているわけではないので、どうにも怖くない顔、というのがよくわからない。常にニヤニヤ笑っているわけにもいかない。それは別の意味で怖い。かえって人を遠ざけるだろうから、まだ鎧のほうがマシというものだ。
 
どうしたもんかなあ、と考える。鎧を脱ぐことはできないのかもしれない。たぶん、できない。顔を変えるって、自力では無理じゃないか?
 
話してみれば怖くない、と同期の彼女は言った。話す前は怖いのだと。
 
そして思いついた。だったら、頑張って話してみればいいのでは? そんなに自分から積極的に話すわけじゃないけど、一度話してみることで怖くない人認定されるのであれば、これはもう、頑張って話すしかない。
私をよく知る友人とか、先輩とか、家族とか、その人たちは鎧甲冑を身に着けたままの私と日々会話して、関わりを持っている。一度仲良くなってしまえば、鎧を着たままでも大丈夫なのだ。話せば怖くないことを知っているから。怖いのは顔だけだとわかっているから。鎧甲冑を着た、でも怖くない人間として接してくれている。
 
だから、鎧を脱ぐ方法じゃなくて、鎧と共存する方法を探ろうと思う。顔が怖くてすみません、でも頑張って笑顔で近づいていくのでお話ししてください。もしかしたらこの顔も、個性なのかもしれないから。近寄りがたいけど、話してみたらそんなことはなかった。そんな人間になれるのであれば、ただ怖くない顔を目指すよりずっといい。
 
こうして私は、生まれ持った鎧と共に生きていくことを決めた。
***

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