女子部

深夜の池袋のファーストフード店で、ナンパに出くわしたときに女が内心思っていること《川代ノート》


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「ねえ、じゃあさ、はっきり言うわ。LINE教えて」

池袋某所、23時43分。
チャラチャラした男の声が、左から聞こえる。

はあ、と思わずため息が出た。
どうしてこんなことになってしまったんだろう。

 

 

「サキ、お疲れ〜」
「お疲れ様で〜す」

私はただ、仕事を終え、帰路につこうとしていただけだった。
そこでちょっと寄り道してしまっただけだ。
ああ、疲れた。お腹すいた、とつぶやきながら池袋駅までの道を歩く。
書店員もなかなかハードだ。今日も終電近くなってしまった。
早く帰ってベッドに飛び込みたかったけれど、どうしても空腹を抑えきれなかった私は、目に付いたファーストフード店に入った。

ちょっとハンバーガーとポテトでも食べて、残ってる仕事片付けて、ちゃっと帰ろう。
そう思っていただけなのに。

 

「いや、これも何かの縁だからさ。ね、いいじゃん」

しつこい男の声がまた、聞こえてくる。いい加減にしてくれ。
LINEのアカウントをなんとかして聞きだそうとして、必死である。

「あっ、ごめんなさい。あたし携帯壊れてるんで〜」

声がやたらと店内に響いている気がする。もう真夜中近いからだろうか、店内にはあまり人がいない。
店中の全員がこちらを見ているんじゃないかという気がして、なんだかそわそわしてしまう。

「あー、出た出た。絶対嘘でしょ?」

「いやいや」

こういうときに女が言う「携帯壊れてる」はイコール「お前なんかにナンパされても連絡先教えるわけねえだろボケ」という意味だということを、決して忘れてはならない。
やめてくれ。しつこい男は嫌いだ。

「ねえ、いいじゃん。仕事は何してるの?」

「え〜と、接客業」

「接客かあ。大変だねえ」

男はバカだなあ、とつくづく思う。

こんなに簡単に、女がつれると本気で思っているのだろうか。

 

 

彼ら二人組が隣の席に座ってきたのは、私が座ってから5分後くらいのことだった。
いつもは若者でごった返すファーストフード店も、深夜だから人もまばらだ。観光してこれからホテルに帰るというところなのだろう、よくわからない言語をしゃべっているアジア人がカウンターでダラダラとしゃべっている。やたらとカラフルなキャリーバッグをゴロゴロと引きずっている女子二人。コスプレイヤーだろうか。テーブル席には露出の多い、渋谷ギャルと丸の内OLのちょうど中間くらいのキャピキャピした若い女の子たちが3人、ポテトを食べながらしゃべっていた。ドア付近の電源がある席では女子高生たちが携帯を充電しながら勉強していた。期末試験が近いのか、受験勉強なのかはよくわからないが、こんな深夜に勉強なんて体に悪い。女子高生なら女子高生らしくはやく家に帰って寝るべきだ。ま、でもこういう深夜に勉強という体験は強く記憶に残るいい思い出になるのだけれど。

中途半端に人がいる店内は、独特の、少しだれたような生ぬるい空気に満ちている。
まあそれほど長居する気はないのでどこでもいいのだけれど、広めのスペースを確保したかったので、ギャルOL女子たちの会話がうるさいのが多少気になったものの、まあいいか、すぐに帰るんだしとテーブル席についた。

私が携帯をいじりながらポテトを食べていると、男二人が、まっすぐにこちらに向かってくるのが見えた。
ちらり、と顔を見る。

広告代理店で働いていそうな、ツーブロックのこなれた感じの男と、黒いTシャツにピアスをつけた肩幅の狭いギャル男風の男。
いつも思うのだけれど平日深夜のファーストフード店に来るそれなりの歳をした人間というのはどういう仕事をしているのだろうか。どうして広告代理店で働いていそうな男がこんな時間にオシャレな私服を着てコーヒーを飲んでいるのだろう。
まあ私も人のこと言えないけどな、と思いつつ、私は黙ってポテトを食べ続けた。広い店内でもテーブル席だけはほぼうまっていて、空いているのは私とギャルOLの間の席だけ。いくらでも席が空いているのにわざわざここには座らないだろうと思っていると、驚くべきことに彼らはむりやりこちらに座ってきたのである!

いやいやいや、いくらでも空いている。
カウンターも電源席もソファ席も、二人分のスペースなんていくらでも空いている。

なのに。
店内は空いているのに、彼らはわざわざ私の隣を選んだ。

嫌な予感がした。

あー、これは、と思った。

くるな、たぶん。

 

 

 

「あっ、どうもー。何してるんですか?」

男たちは、チャラチャラした口調で話しかける。

「え〜?」

「いや、ほら。何してんのかなって」

「別に何も……」

イヤホンをつけているのに、やかましい声が左側からどんどんやってくる。しゃべりはとどまるところを知らない。もう、なんだ。なんなんだ。いい加減にしてくれ。私はナンパ男のチャラチャラした会話を聞くためにここに入ったわけじゃないぞ。ポテトを食べながらまだ残っている仕事をするために来たんだ。家に帰ると集中できないから終電までここでやっていこうと思ったんだ。Macbookを開いてあからさまに「仕事してます」アピールしてるのに、ちょっとは人の迷惑とか考えないのかよ。

男は止まらない。彼氏はいるの、今日はどうしてきたの、ねえ、何食べてるの、今度のみいきましょうよ。
あー、もう、しつこい!! 察してくれ。頼むから察してくれ。誰がお前らみたいなチャラチャラしたナンパ男と付き合うっていうんだ。どうしてわざわざお前らみたいな池袋のファーストフード店でナンパなんかしてくるやつと飲み会に行かなきゃいけないんだ。

でも男は諦めない。しつこいな、と本気で思う。
それにしても、とちらりと二人を見比べる。黒Tシャツのギャル男と、広告代理店風のツーブロック。どういうつながりなんだろう。アンバランスだ。よくよく見ればべらべらしゃべっているのは黒Tシャツの方ばかりで、広告代理店の方は黙って話を聞いているだけだ。あー、なるほどな、と思う。広告代理店をもう一度見る。ピンクのTシャツに、ハーフパンツ、それほど気合を入れている感じでもないが、おしゃれをしていないというわけでもない。こっちの方は自分に自信があるんだろうな、と私は思った。だいたいピンクのTシャツを着る男に自信がない男がいるわけがないのだ。黒Tシャツの方はもしかしたら、広告代理店の方に少し引け目を感じているのかもしれない。だから若い女にその場で声をかけても俺はゲットできるぞというところをアピールしたいのだろう。たしかにその気持ちもわかる、と思った。広告代理店の余裕は、何か人を焦らせるようなところがある。俺は別にどっちでもいいけどな、という感じ。俺のところには女なんて向こうからやってくるからさ、とでも言いたげな態度である。顔も石川遼から真面目さと誠実さを抜き取ったような感じで、まあイケメンに分類されるだろう。

あー、なんだかそう思うと、黒Tシャツの方がものすごく不憫になってきた。

「ね、じゃあさ、お願い。ここで会ったのも何かの縁だしさ。ライン教えて」

そうか、もう今の時代のナンパは「メアド教えて」ではなく「ライン教えて」なのか、と妙に冷静に観察してしまう。
ナンパの現場に出くわしたのが久しぶりすぎて知らなかった。そうか、今の時代はラインなのか。なるほど。

「ええ〜? ライン?」

ラインを教えるかどうか、しぶる声がまた店内にやたらと響く。どうしてだろう、なんだかこの店の全客の視線がこちらに集中しているような気がする。みんなきっと期待しているのだ。あの黒Tシャツ男は、あの女のラインをゲットすることができるのだろうかという目で見られている気がする。みんな期待している。こっちを見ている。みんな見ている。注目している。このテーブル席がまるで格闘技のリングの上みたいな気がしてきた。どっちだ? どっちが勝つんだ? がんばれ、男! いやいや、もっと粘れ、女! やめてくれ。みんなこっちを見ないでくれ。私はただパソコンをパタパタ打っているにすぎないただの一書店員なんだーーーー。

「あ、じゃあ……ラインだけなら」

ゴーン! 終了〜〜〜〜〜!!!

勝敗が決まったことを知らせるゴングがどこかでなったような気がした。

ついに、黒Tシャツは勝利した。
女が折れた!!!
女が折れたぞーーーーーー!!!!
ワアアアアア!!!
ヒューヒュー!!!

そんな拍手喝采がきこえる。ああ、そうだ。女は負けた。断りきれなかった。すんでのところで負けた。男が勝ったのだ。

おめでとう、おめでとう。
よかったな、若い女のラインID、ゲットだぜ。

 

 

 

 

 

「あ〜、そろそろ終電だな」

「だなー」

満足げな黒Tシャツは、ラインの画面を見ながらニヤついている。
広告代理店の方は、微笑ましい顔をして黒Tシャツを見ていた。

「まあまあかわいかったな」

「な。最後の方結構ノリノリだったよな」

ナンパが成功した後の会話というのはこういうもんなのか、と妙に感心してしまう。

「とりあえずライン送っとこ。『さっき話したタツヤだよ! よ、ろ、し、く、ね』っと」

「お前もよくやるよなー」

「まあ、いいじゃん。いい暇つぶしになったっしょ」

「まあな。こんなとこでナンパ成功させたの、俺らくらいだろうな」

あれだけ必死だったのに、男というのは現金である。
きっと単に酔っ払ってたまたま隣にいた女に声をかけてみたにすぎないのだろう。

ナンパされる女側というのは、男が思っている以上にそわそわしているし、ドキドキしている。「え〜、どうしようかな」なんて嫌がったふりをしてじらしつつも、必死で自分を落としたい男の姿をもっと見ていたいだけなのだ。

「お、そろそろあいつらくるって。俺らももう行こうぜ。終電だし」

「そうだな。いやー面白かったわ」

そう言いながら、男二人は、コーヒーしかのっていないトレーを持って席を立ち、出口に向かう。
黒い肩幅の狭い背中と、ピンクのガタイのいい背中が、遠ざかる。

そうだ。女はいつだって期待している。かわいくなりたいという欲求が強い女はとくに、期待している。いつだって。
それは彼氏がいるかいないか、結婚しているかいないかは、関係なく。女としての根本的な欲求だ。女はいつだって男に女として魅力的だと思われたいのだ。「自分は話しかけられる価値がある」と思いたいのだ。だから渋谷の街を歩く時、新宿の街を歩く時、池袋の街を歩く時。ちらちらとこちらを見る若い男の視線に、期待してしまうのは仕方がない。ナンパをしてきた男と付き合うか付き合わないか、ラインを教えるか教えないかというのはまた別の問題なのだ。「自分は声をかけられるほどの価値がある」と実感できること自体が重要なのだ。

それはどこにいたって同じことだ。たとえファーストフード店だとしても、若い男がずいとこちらにやってきたら、「自分をナンパしたいのかも」と期待し、ドキドキしてしまうのは仕方のないことなのだ。

だから、私は悪くない。
悪くないぞ。断じて。

男二人がいなくなる。遠ざかる。なんだか、私一人だけが取り残されたような気がしてくる。
リングの上にいるのは私だけになる。でも視線はもう感じない。もう勝負は終わった。勝敗はついた。男たちの勝ち。さしずめ私は、ただのレフェリーにすぎなかったのかもしれない。

「さっきのライン教えてくれた子、なんて名前?」

「あー、チハルちゃんだって」

「へえ、かわいいじゃん」

あーあ、最後にナンパされたのいつだっけな、思い出せないな、なんて思いながら私は、無事にギャルOL女子のラインをゲットし、上機嫌で去っていく黒Tシャツと広告代理店の後ろ姿を見つめていた。

 

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私だってナンパされる女になりたい!
魅力的になりたい!
というわけで、私はこの度、天狼院女子部に、かなり気合いを入れています。
私と同じように、自分磨きをしたいという同志よ。魅力的になりたいという同志たちよ。
最後にナンパされた日が思い出せない、あるいはナンパされたことすらないという同志たちよ。

さあ、つどえ。天狼院に。
女子力を徹底的に磨く、夏にしようじゃないか。

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【講師プロフィール】

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安田 香織 kaori yasuda
model&actress
日本大学藝術学部演劇学科卒業。
2011ミス・ユニバース ジャパン ファイナリストとなり、ネット投票1位を獲得。
現在はCMやTV、舞台等、モデルや役者として活動中。
HP:kaoriyasuda.com

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2016-07-25 | Posted in 女子部, 安田塾, 川代ノート, 記事

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