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『世界で一番美しい死体』

我が社はこれより、突貫工事に突入する。《3/22『世界で一番美しい死体〜天狼院殺人事件〜』監督日記》


「今回の豊島公会堂での公開は無謀なので、私としては認めるわけにはいきません」

年末、会計顧問の山田真哉先生に言われたことだ。
山田先生は、単に天狼院の会計顧問というだけでなく、天狼院の友人として、今まで度重なる危機を救ってくれた恩人でもある。
さすがに、今回こそはだめかと思った。
一方で、何か方法はあるはずだと考えを巡らせていた。

「たとえ、映画や劇団をやるにせよ、どちらも脚本以外はすべて誰かに任せて、2月からは本業に専念してください」

至極、もっとな意見だ。
僕が誰かに同じように相談されたとしても、そう答えるだろうし、劇団について詳しい山田先生の言葉だからなおさらのことだ。

天狼院書店店主として、そして、会社の社長として、僕は本当に忙しい。
取材やアポだけでも、いくら絞っても週に15件は入り、イベントを立案、運営して、店舗の運営も見なければならない。
平行して、著者の先生のプロデュースの仕事、完全に復活させた本の編集協力の仕事とやらなければならないことは無数にある。

秋に雑誌『READING LIFE』を創刊し、劇団天狼院を旗揚げした時には、ほとんどの業務がほぼ2ヶ月間ストップし、それらの制作費とは別に、試算してみると300万円ロスしたことがわかった。
それは、全財産1万5千円の段階から天狼院を立ち上げた僕にとっては莫大な損害だった。

その秋のショックから、ようやく立ち上がろうとしていたときのことだったので、どう考えても無謀な話だった。

おなじく、試算してみると、映画と劇団の制作費と仕事がストップすることによるロスは、およそ400万円に及ぶことがわかった。
つまり、豊島公会堂のキャパ802人を満席にしてようやくトントンというのが、今回のプロジェクトの会計的な見立てである。

そう考えると、山田先生の言葉が、すべて正しいことがわかる。
もし、映画や劇団で大きな赤字を計上したとしても、僕が本業においてフルスロットルで取り組んでいれば、天狼院の運営にはそれほど大きな支障がないだろう。
けれども、僕が完全に映画と劇団にコミットしてしまえば、天狼院も経営的に危うくなることになる。
どうみても、間違いのない、歴然とした事実だ。

僕は、ほとんど、迷うという習性がない。
大小、様々な案件に対して、即断し、即決する。
けれども、僕は、この映画と劇団について、幾度となく腕を組んで悩んだ。

簡単な計算だった。

400万円−400万円=0円

これが、満席で最高だった場合の数値だ。

思い悩み、決めきれないうちに、時間だけが進んだ。
この悩みは、クリエイティブな感性に、少なからず影響した。

脚本が、いつまで経っても仕上がらなかった。
悩みがあるなかで、机に座ったところで、いつものアウトプットができるはずがなかった。

ようやく、初稿をあげて、それを奪われるようにして香盤作りが始まっても、正直いってしまえば、僕は煮え切らなかった。

その間にも、主演に起用した御伽ねこむさんをモデルにしてプロカメラマン榊智朗さんが撮ったメインビジュアルが上がってくると、やはり、全体のデザインのアートディレクションを僕がすべてやりたくなった。

出来上がってきた写真がすばらしかった。

時間が費やされるとわかりつつ、任せてもいいとわかりつつ、僕はデザイナーの長澤貴之さんと二人三脚で、ほとんど不眠不休でやりとりしながらメインビジュアルのデザインを仕上げた。

そのメインビジュアルが決まったとき、この映画と舞台の目指すべきレベルが明確に示されたように感じた。
このメインビジュアル以上の作品内容にしなければならなくなった。

それでもなお、僕はひとり腕を組み思い悩んでいた。

波状に押し寄せてくる仕事に忙殺されるなかで、決断を先送りしていた。

ところが、昨日のことである。

今回の作品の音楽監督をお願いしていた作曲家の酒井麻由佳さんが天狼院を訪れた。

「三浦さんが徹夜で脚本を仕上げるという投稿を見て、同じタイミングでテーマ曲を作ってみました。あのメインビジュアルを見て、それにインスピレーションを受けてできた作品です」

自信に満ちた笑顔で僕にそう言った。

僕は、一抹の不安のようなものを覚えながら、その曲を聴いてみた。

とたんに、何も言えなくなった。
全身に鳥肌が立った。
何より、涙が溢れそうになるを堪えるのに必死で、言葉を発することができなかった。

 

 

たちどころに、頭の中にシーンが浮かんできた。

レースのカーテンが揺らめく窓辺に陽が射していて、
ウェディング・ドレスに身を包んだ世界で一番美しい死体が横たわっている。

ファースト・シーンがこの音楽の中で、頭にくっきりと描かれた。

同じ場所で同じように聴いていた映画部顧問の檜垣賢次さんも、不思議なほど同じシーンを思い描いていたという。
しかも、ファーストシーンだった。

天狼院の裏で、檜垣さんとファーストシーンについて、話し合った。

「ミニクレーンを使いましょう。2分18秒、そのままこの音楽を使って、ねこむさんのメインビジュアルにつなげ、タイトルに行きましょう」

仕事で疲弊していた檜垣さんも、まるで生き返ったように笑顔で生き生きとそう言った。

「いいですね! このファーストシーンが決まれば、映画と演劇は決まる。最高のものになる」

僕の言葉に、檜垣さんは笑顔をたたえながら、頷いた。

テレビドラマ『華麗なる一族』は山崎豊子さんの原作のベストセラーで、何年か前に木村拓哉さんが主人公の鉄平を演じてヒットしました。

業界の既得権益層がまさに実質的な権益を握って、コントロールをしている中で、鉄平は無謀と言われた高炉建設に踏み切る。

しかも、短期間で高炉建設に成功しなければ会社が倒産することが目に見えている。

そのときに、木村拓哉さん演じる鉄平は、社員や従業員にこう宣言する。

 

「我が社はこれより、突貫工事に突入する」

 

歓声の中で、社員や従業員は一丸となり、高炉建設に向かうことになる。

ピンチで逆転したいときに、僕はいつも、このシーンを思い出します。

そして、同じようにこう宣言したいと思います。

 

我が社はこれより、映画と演劇の突貫制作に突入する。

僕が陣頭に立って、全てを指揮する。

 

天狼院映画部、劇団天狼院、そして天狼院のスタッフのなかで、僕についてきて頂ける人には、本日、新たに役割を割り当てます。
少ない制作時間の中で、最高の作品を作るために、各々死力を尽くすことを期待します。

プロもお客様もスタッフも隔たりなく、一丸となって、最高の作品を作り上げましょう。

僕らのこれまでの行動を唯一証す方法は、最高の作品を作り上げて、世の中をあっと驚かせることです。

観客に鳥肌を立たせ、感動させる作品を作り上げてやりましょう。

そして、3月22日、満員御礼にした豊島公会堂で、ともに、スタンディングオベーションの喝采の中に笑顔で立ちましょう。

どうぞよろしくお願いします。

2015年2月22日
映画『世界で一番美しい死体〜天狼院殺人事件』監督
劇団天狼院主宰

三浦崇典

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『世界で一番美しい死体〜天狼院殺人事件』特設ページ

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