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【劇団天狼院】演出は旅人を導く灯りなのである【演出デイズ】


 

11月13日木曜日夜、大きな明かりが灯った。

 

 

「大丈夫です!だから稽古しましょう!とりあえず!」

と、何度稽古場で言ったか知れない。

本番一週間前、手元に届いたばかりの台本・・・暗記する時間の短さに役者陣の不安は拡大していた。

それは当たり前の事だ。私だって一週間で台本を覚え無くてはならない、となると不安とプレッシャーで胃が痛くなくなる。

キャストである彼らは演技経験がほとんどない所謂「素人」なのだ、より一層不安に思うのはおかしいことではない。

劇団天狼院の役者はほぼ「天狼院書店のお客様」なのである。唯一プロとして参加している石神でさえ、顔色が悪くなっているにも関わらず、

「大丈夫!平気!頑張ろう!」

と言って笑っている私が一番おかしいよな、と思った。

 

 

ある日、石神に稽古の帰り道、「本当はどう思ってるの?」と問われた。

「なんとかなるっしょ、セリフさえ覚えちゃえば不安は無いよ。」と応えた。

石神は本当に?といぶかしげにしていた。「由美がそういうなら・・・」と台本片手に帰って行った。

それを見送り、一人電車に乗り込んだとき、私は猛烈な不安が横に立っていることに気が付いた。

不安はいつでも付きまとった。私の陰に成りすまし、常に付いて回った。

「本当に大丈夫なの?」「無茶じゃない?」「無理してどうなるっていうの?」

と隙あらば囁いてくる。

 

「うるせえ!邪魔すんな!」と陰を蹴散らし続けて居られたのには理由があった。

 

本気度には感染力がある、と、店主三浦に言われたのは台本ができあがった当日のことだった。

稽古内で台本を配り、おのおのに課題を渡して解散した後、天狼院書店に残った私に三浦さんはこう言った。

「熱量は伝わる、その発信源にならないと。」

お前は演出なんだから、と。

演出家というのは神である、と石神はよく稽古で口にしていたが、演出家はその作品を完成に導く案内人なのだ。

役者は旅人である。演出家という天からの案内人の導きに従って歩みを進め、目的地に向かう。

その案内人が照らす灯り、方向を指し示す灯りの大きさ、明るさ、熱量は役者の力に反映する。

「お前が一番、成功を信じていないと。」

不安が隣で苦い顔をしていた。身体にまとわりついて耳を塞ごうとする。

三浦さんはそれを見抜いているのだな、と思った。

「勝てるかどうかは、お前次第だよ。」

元来わたしは負けず嫌いなのだ。負け戦になればなるほど燃える性質でもある。

その帰り道、相変わらず付きまとう不安を駅のホームから突き落とした。

山手線に轢かれる不安の陰を見て、ひとつ覚悟が出来たのだ。

 

私が揺らいではいけない、と思った。

私が揺らいだとき、旅人達を照らす灯りが霞んで彼らは路頭に迷ってしまうだろう。

だから絶対、本番が終わるまでは私は揺らいではいけないし、弱音を吐いてはいけないし、全力疾走しなくちゃいけない、と思った。

 

豊島公会堂前に公演がある。そこでチラシ配りを始めた。

800のキャパを埋めるために、そして「劇団天狼院」を知ってもらうために。

そして何より、「劇団天狼院旗揚げ公演の成功」のために。

いてもたっても居られなくなってしまったのだ。

何かしないと、何とかしないと、必死になって台本を覚えている彼らのために天上から観ているだけではなく、何かしてあげないと、頭をひねり、うんうん唸りながら、とりあえず歩き回って池袋中のバーやご飯処にチラシを置かせてもらった。

チラシ配りなんか集客にどれほど影響するかは分からない、未知である。

それでも、不安がっているだけでは駄目だ、やることやらねば、出来る事をやらねば、いま出来る事を全部やらねばと思った。

それに呼応するように、キャスト達、スタッフ達が立ち会い、案を出し、積極的になり・・・

個々のエネルギーが一つの大きな熱量に変わっているのが分かった。

 

そして本番当日、劇場に入ってからの緊張感の高まりは素人とかプロとかを超越していた。

舞台の板の上に立つ彼らは、大きな熱の塊だった。

その熱は感染していった。客席に、そして受付にいるスタッフにまで。

照明卓から見ていて解った。

 

「熱量は感染する」ということが。

 

上演が終わり、ステージ上が天狼院書店となった時、お客様がこぞってステージ上に上がって行くのを見て、泣きそうになった。

終わった、無事。そしてお客様の顔がほころんでいる。

安心した・・・力が抜けていくようだった。

演出家として、各々の演技面に関しては物申したいところは勿論あるけれど、技術云々よりも遙かに「劇場が奇跡感に満ちている」という状態に感動していた。

 

 

それこそ、劇団天狼院らしい姿なのかもしれない。

お客様をも巻き込む熱量、奇跡感。13日にそれを体感していただけた方には共感していただけるかと思う。

また来年春、劇団天狼院は大きく動く。

奇跡を起こすために。

 

その際には、ぜひ、奇跡を体感しに劇場にいらっしゃることをオススメしたい・・・不安の陰なんか一発で吹き飛ぶような、煌々ときらめく灯りをお見せ致します。

 

 

劇団天狼院旗揚げ公演の映像上映会、日程が決まりました。

13日に都合が付かなかった方も是非こちらご参加くださいませ!

そして上映会後、次回春公演参加者募集&歓迎会も行います!

 

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TEL:03-6914-3618

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2014-11-20 | Posted in イベント情報, チーム天狼院, 記事

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