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劇団天狼院

彼女がAVに堕ちるまでに《11月13日劇団天狼院旗揚げ公演》


これはあくまで私見である。
当の本山由美はこの内容をまだ知っていない。
ただ、今、どうしても書いておくべきだと思ったので有り体に書く。

あれは今から、6年ほどまえのことだったと思う。
そう、2008年3月のことだった。
僕はそのとき、所沢の小さな書店で店長をしていた。

「あの、今度高校卒業するんですけど、大丈夫ですか?」

そう言って、バイトに応募してきたのが、本山由美だった。
女優をしていると誇らしげに彼女は言った。
と、言っても、取り立てて騒ぎ立てるほどに可愛いとも思えなかった。
しかも、女優をやっていると言う割に、笑うと歯並びがとても悪かった。

ただ、いいやつそうだと思って採用することにした。

女優をやっているというから、お高く止まっていると思いきや、まるでそうではない。
本当に素直でいいやつなのだ。
そして、演劇がとてつもなく好きだということがわかった。
純粋に演劇に打ち込んでいるのをみて、いつか芽が出ればいいと願った。

2009年の4月に、僕は池袋で起業するわけだが、よく、僕の小さな会社に来るようになっていた。歯並びが悪い彼女だったが、小さな映画で主演を務めるようにもなり、萩原流行さんや風間トオルさん、坂口良子さん、杏里さん親子とも共演するようになった。

相変わらず取り立てて騒ぎ立てるほど可愛いとも思えなかったし、相変わらず歯並びも悪かったけれども、19歳の彼女は順風満帆のように見えた。

それから彼女は小さな劇団でピータパンを演じるようになり、おんぼろのワンボックスカーで地方巡業をする毎日を送った。たとえば、小学校の体育館や街の文化センターで演じる、あれである。
最初のうちはよかったが、それを続けていると彼女は疲弊していくように見えた。そして、なかなか結果が出ないことに焦りを感じているようにも見えた。

そのときから、僕は正直いってしまえば、女優としての彼女の将来はそれほど明るいものではないだろうと考えていた。客観的に見ればそうだ。
国民的美少女オーディションとか、ホリプロスカウトキャラバンとか、そういうところでグランプリを取るような超絶美女でも、鳴かず飛ばずの人もいるのに、取り立てて騒ぎ立てるほど可愛いとも思えない本山が、それに対向するには明らかに分が悪い。
しかも、残酷なことに、そういったアイドル的なスターを目指すのならば、彼女の旬はもう過ぎようとしていた。

それなら、と僕は考え、それ以降、同じことを彼女に言うようになった。

「自分の劇団を作って、演出をやればいい。演出でトップを狙えばいい」

本山は、元来、素直でいいやつなので、けしかけると本当にやってしまう。
劇団ロオルという小さな劇団を作った。
みんな、演技はそこそこうまいが、決定的に本が悪かった。
頑張って赤字にならないようにはしているが、それでも自分すらも食わせることはできない。
バイトをしながら、彼女は「女優」と名乗り、演劇を続けていた。

2013年のことである。
映画で脱ぐことになったと、彼女はなぜか誇らしげに言った。
僕は仕事やら天狼院の準備やらで超絶忙しくて劇場の映画には行けなかったのだが、DVDになったときに、彼女と一緒に彼女が脱いだという映画を観た。

ストーリーが死ぬほどつまらなかった。
どうやればそんなにつまらなくできるのか、ほとんど理解できないくらいにつまらなかった。

ただ、彼女が初めて脱いだシーンだけはとても綺麗だった。
知っているから言うんじゃないけど、本当にそのシーンは誇っていいほどに綺麗だった。

綺麗だったが、ちょっと僕は首をひねった。
共演している子がAV女優で、それは別に悪いことではないが、そっちの路線に行くのは、演劇が本当に彼女の進むべき道ではないと思った。

最初に脱いだ作品は、まあ、百歩譲って芸術だったとしよう。
けれども、そのあとの2作でも、彼女は脱いでいるという。
しかも、完全に脱ぎ要員として、キャスティングされている。

脱ぐと言っても数百万円が本山に入るわけではない。
ほんの数万円程度のことだ。
そこに、アートは本当にあるのだろうか。
必然性は、あるのだろうか。

いや、脱ぐのは悪いことではない。うん、AVだって悪くはない。
実際に、僕も前から知っている彼女が脱ぐシーンを見て、ワクワクしたことは否めない。

ただ、僕が知る本山に限っては、本当にそこに行きたいのかと疑問なのだ。

このままでは、本山は必要とされる限り、脱ぎ要員として使われてしまう。
素直で、いいやつの彼女のことだ。そこでも前向きに頑張ってしまうのだろう。
その先に何があるだろうか。
今、彼女は24歳で、そうなると女優としても岐路であって、鬼も十八番茶も出花的な需要は急速になくなっていくだろう。もしかして、脱ぎ要員としての需要すらなくなってしまうかも知れない。やがて、AVに堕ちるというシナリオだって十分に考えられる。

ところが、思い出して欲しい。彼女は取り立てて騒ぎ立てるほどに可愛くはないのだ。
日本のAVの世界は今や世界レベルだ。本気で綺麗な子がAVにはたくさんいる。ちょっとやそっとでは返り討ちにあうに違いない。

たしかに、歯を矯正して、前よりかはるかに綺麗になったけれども、やっぱり、国民的美少女コンテストやホリプロスカウトキャラバンやミス・ユニバースにはかなわない。

やはり、彼女が本当にやりたいことで輝くには、演出の道しかないだろう

それだから、僕は劇団天狼院で彼女を演出にすることに決めた。
そして、彼女を女優としては出さないことも同時に決めた。

そもそも、前に本山も天狼院の記事で書いていることだが、劇団天狼院の構想は、実は天狼院書店をオープンさせる前からあった。オープンとほとんど同時に、劇団も立ち上げようと構想していた。書店が持つ劇団は必ず面白くなるだろうと考えていた。
けれども、マンパワーが足りずに、その立ち上げが今年にずれ込んだのだ。
そのときから、演出を本山にしようと考えていた。

そして、ようやく、劇団天狼院が旗揚げすることになる。

雑誌『READING LIFE』の編集も同時にあり、なかなか劇団のかたちを作るのが遅れてしまった。何より、僕が担当の本が遅れてしまった。

なんと、本が仕上がったのが、公演10日前であり、劇団の告知が始まったのが9日前である。

しかも、劇団天狼院旗揚げ公演『膝上29センチ以下の彼女』はキャパ802名の大きなハコでやる。
準備が遅れたのは、ひとえに、劇団主宰の僕の責任である。

それにもかかわらず、元来いいやつで、素直で前向きな本山は、文句ひとついうことなく、大丈夫、うまくいく、間に合う、と言っている。
そして、台本が書き上がるやいなや、その台本を気に入って、翌日から劇団員の方々に演出をはじめたのだった。

正直に言おう。

演出にも、ガッツリ僕が関与しなければならないのではないかと考えていた。

けれども、彼女は堂々とほとんど素人の劇団員の方々に演技指導をしていた。的確に、しかも楽しそうに演出をしていた。

それを見て、僕は安心した。彼女に任せておけばいい。
そして、やはり、間違いではなかったと思った。

彼女は、演出に向いている。

これから数十年、彼女が演劇の世界で行くとすれば、台本でもなく、女優でもなく、演出に特化したほうがいいと思った。

意味もなく脱ぐのではなく、専一にその道を極めればいいと思った。

劇団天狼院で、おそらく、初めて彼女の才能の片鱗が見えるだろうと思う。演出に特化することによって、女優として出たいというフラストレーションが、いい意味でパワーに変換することができれば、面白いことになる。とてつもなくいい劇になるだろう。

女優でもなく、アイドルでもなく、ましてや脱ぎ要員でもなく、

演出家 本山由美

としての、彼女の本格的なデビューを皆様も僕と一緒に見守って頂ければと思う。
そして、彼女が現出させる世界を、堪能して頂ければと思う。

11月13日(木)豊島公会堂。

一夜限りの劇団天狼院旗揚げ公演。

新しい劇団の誕生と、そして、次代を担う演出家の誕生をご覧頂ければと思います。

どうぞよろしくお願います。

《劇団天狼院旗揚げ公演『膝上29センチ以下の彼女』の詳細・前売り券はこちらから》

劇団天狼院旗揚げ公演『膝上29センチ以下の彼女』《11月13日豊島公会堂》

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2014-11-05 | Posted in 劇団天狼院

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