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旅部

【江ノ島にきたフレンチカップル】海は、繋がっている


 

記事:楠田誠一(旅部)

 

「私、帰りたくない」
「僕も、君と離れたくないよ」
「でも、私はもう明後日にはフランスに帰らないと行けないのよ」

 

女性は、男性の肩に顔を乗せ、身体を男性にぴったりと寄せていた。

ここは江ノ島の砂浜の海岸である。
目の前には、視界に入る限り、右から左まで、砂浜と海とが広がっている。

 

 

天狼院書店は、観光バスをチャーターし、お客さんと店のスタッフを乗せて、江ノ島にやってきた。

書店だというのに、なぜか自ら旅行を企画し、募集をかけた。
バス1台は満席になった。
記念すべき第一回目の開催が、本日5月30日土曜日なのだ。

 

この旅行では、写真講座である写真部と映画を撮影する映画部という二つの講座があった。

 

映画部では、昨年上映された映画「世界で一番美しい死体」のシーン14番、そのリメイクを撮影していた。

映画部講師の檜垣賢次さんが、本格的なプロ仕様のカメラや機材を持参し、
カメラ、マイク、ワイヤレスマイク、録音機材。その使い方などを解説してくれていた。

参加者の二人ずつがペアになって、映画のワンシーンの台詞を覚え、実際のカメラを使って撮影した。

 

撮影場所の江ノ島前の砂浜、防波堤に座った役者のすぐ隣、10mほど離れた場所に、この外国人カップルが座っていた。

最初はこの偶然の映画撮影を興味深く眺めていた。

近くでずっと眺めていたカップルの存在に、店のスタッフであり今回の旅のメインスタッフであるなっちゃんこと山中菜摘さんが気がついた。

あの二人に、天狼院書店の広報ツールであるTENRO-IN NEWSを渡そうと。

 

「誰か英語しゃべれる人はいますかーー?」
僕が気がつくまでは、誰も手を挙げるメンバーがいなかったようだ。

 

「なっちゃん、僕がやるよ。いってくる」
「えーーっ、ほんとですか? 英語、大丈夫ですか?」
「まぁね、ホームステイ何人も受け入れているし、そこそこなら」
「えーーっ、お願いします」

 

僕は砂浜から防波堤の階段を上がり、彼らに近づいた。

 

「どこから来たんですか?」

 

もちろん、英語で聞いたわけだが。

 

「どのくらいの期間の日本旅行なの?」

 

彼らはフランス人カップルだった。彼氏のほうが、4カ月大学に短期交換留学をしており、彼女は彼を追いかけて2週間の日本滞在にきていた。

 

「東京の大学に留学に来ています」
「えっ、東京大学?」
「東京大学ではないんです。ソフィア、分かりますか?」
「あぁ、上智」
「よくご存知ですね」
「何を学んでいるんですか?」
「経済学です」

 

彼のほうは、英語が流暢だった。しかし、彼女のほうは英語が苦手なようだった。
僕が話していることを翻訳し、彼女にフランス語で語りかけていた。
僕も覚えている限りのフランス語を交えて話した。

 

「フランスから来たんですか?」
「そうです、パリに住んでます」
「僕も学生のときに、夏休みに1カ月、パリにいたんですよ。シテ・ウニヴェルシテールに」

 

パリ14区のパリ大学都市である。たくさんの寮の建物があって、夏休みのバカンスシーズンは、旅行者に短期の期間貸しをしているのだ。
シャワー・トイレ共同のシングルベッドルームが、1カ月約6万円だった。

TENRO-IN NEWSを彼らに渡す。
しかし、天狼院書店のことを彼らに説明するのが、これまた難儀だった。
自分で説明していても、何を言っているのかよく分からなくなってきた。

彼らも、クエスチョンマークだらけだったように思う。
書店なのに、観光バスをチャーターした旅行企画をし、おまけに今ここで、映画撮影までしている。
最後まで彼らには納得がいく説明になってなかったように思う。

やがて、僕らは集合時間間近の16時になり、撮影機材を片付け始めた。

さきほどのカップル、彼女の方は泣いていた。
大きな涙がいくつもいくつも頬を伝って流れていた。

 

「あと、2カ月もすれば、僕はフランスに帰るんだよ」

 

彼はどうにかして、彼女をなだめようとする。

 

「その時間は私にとっては、とてもとても長過ぎるのよ、それまで待ちきれないのよ」

 

彼女にとっては、遠い遠い未来なのかもしれない。

彼は彼女を抱き寄せた。
一目も気にせず、熱い抱擁とキスとを始めた。
周りの視線は、まったく気になっていなかったのだ。

 

「この海は繋がっているんだよ。日本もフランスも」
「えぇ、そんなこと分かっているわ、頭では」
「海も空も、繋がっている、だからもう少し待っていてほしい」

 

海は繋がっているからこそ、彼らは江ノ島にきたのだろう。
そのことをしっかりと確認するために。

 

***

この記事は、5/30天狼院旅部にご参加いただいたお客様に特別企画として書いていただいております。

また、ライティング・ラボのメンバーになると、記事を寄稿していただき、店主三浦のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

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2015-06-03 | Posted in 旅部

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