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ライティング・ラボ

これで貴方もスベり知らず!小噺の秘伝のレシピを公開《陸奥亭日記》


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記事:野田賀一(ライティング・ラボ)

 

「1分くらいで何か面白い話をしてもらえませんか?」
落語をやるようになってからというもの結構な頻度でこう言われることが増えた。
「落語をやっている=面白い話が出来る」

という固定概念。これほど怖いものはない。
勘違いしている方が多いようなので、この際ハッキリ言っておくが、あいにくこちらとらそんなものは持ち合わせてはいない。
そもそも、間が悪く話がつまらない事を治そうと、笑いの型が出来上がっている落語を始めたのであって、そんなアドリブを求められても出来っこないわけである。

 

ところが、「場の空気」っていうやつは本当に恐ろしくて、
「話をやってください」というフリに対して、対処を誤ると一気に場がシラケてしまう。
加えて大概そう言ってくる輩は、
「当然やってくれるんでしょうね。」
という脅迫にも似たプレッシャーをかけてくる。
キリキリ、キリキリ。ああ、思い出しただけでも胃が痛くなる。

 

「仕方がないからとりあえず何かやってみるか」
と、渋々とっついてはみたものの、落語の演目は少なく見積もっても10分。
これやり始めたら間違いなく大ブーイングですわな。
「そんなに長いの要らないよ! いつ終わるんですか
ってね。

 

そんな訳で、1分程度で終わる話のいわゆる「落語のまくら
をやるのだけれど、こちらはズブの素人、聞き手は落語を知らないという絶望的な組み合わせですからね。
終わった後に、ポツリと一言。
「ふぅーん。そんな感じね」

 

なんなんだ、その上から目線は。
あぁ、もう本当にこの一連のくだりは思い出しただけで腹立たしい。
精一杯の勇気を振り絞って、精一杯やってみてこの結果である。
本当に憂鬱で、嫌で嫌で仕方がない。
だが、これだけでは終わらないのが厳しい現代社会である。
場の空気以上に怖いのが、

 

落語やっている

そのくせに面白い話を言えない

落語は大したことない

 

という連想である。
確かに自分の実力不足は事実だが、落語はバカにするなと。他の落語家さんに失礼だぞと声を大にして言いたい。ああ、このおぞましき「つまんないスパイラル」

一旦陥ってしまったら、最後。抜け出すのは至難の技かもしれない。

 

だがしかし、そこにはたった一つだけ一筋の光がまだ残っている。
それは、「本」である。
幸いにも僕らには知の宝庫である、本という武器があるではないか。
それからというもの、
本を読みあさって、ついに小噺の秘伝のレシピなるものを確立した。

 

「いやいや、そんなん付け焼き刃で出来るもんじゃないでしょ!」

 

ところがどっこい。
このレシピ通りに素材を料理、つまり構築していけば、至極簡単に小噺が作れてしまう。
もうこれであんなくだりとはオサラバですよ。むふふ。

 

その秘伝のレシピ。公式はたったこれだけ。
「騙しの手口+定義のちゃぶ台返し」

 

これだけだとイマイチよく分からないので、実際に小噺を2つ作ってみた。

 

タイトル:【オレオレ詐欺】
「ばあちゃん、オレだよ、オレ!」
「あら、しばらく振りに電話かけてきてどうしたんだい?」
「いや、車で事故ってさ。相手に怪我させちゃって、慰謝料と治療費で300万を今日中に払わないといけないんだよ。お金貸してくんないかな?」
「あら、それは大変! そしたらすぐ振り込みに行くからちょっと待ってて。」
10分後、銀行にて
「銀行着いたわ。振り込み先の口座教えてくれる?」
「ああ、〇〇銀行の△△支店の123456だよ

婆ちゃん、通帳を広げた所で、
「あら? あなたもしかしてオレオレ詐欺ね!」
「いやいや違うよ! オレだよ」
「いや、絶対そうだわ。だって孫が男だったのは去年までだもの。手術費用を半分出してあげたの忘れてたわ

シチュエーションを変えて、もう一つ。

 

タイトル:【食い逃げ】
「食い逃げよー! 誰か捕まえて! あなた、大変よ。食い逃げだわ!」
「いいよ。追わなくて。」
「なんでよ! あたし達のお店、ただでさえ潰れそうなんだから、あんなの逃しちゃダメよ!」
「だから、追わなくていいんだって」
「あなた、店がどうなってもいいの!?」
「ああ、牡蠣フライが少し傷んでたからな。通報したらこっちが捕まるかもしれねぇ」

 

どちらも途中までは騙しが上手くいっているのだが、最後のオチの部分で話そのものの前提をひっくり返すだけで、もう小噺になってしまっている。
オレオレ詐欺の方は、孫は男だという前提を実はニューハーフになっていたというオチに。
食い逃げの方は、悪いのは逃げた奴という前提を実は店主も悪い奴だったというオチにする。
ただ、それだけである。
加えて、最後のオチであるが、これは話の流れを吹き飛ばしてしまうような意外性のあるものが良い。
ただし注意しないといけないのは話とかけ離れてはいけないということだ。
その為に話の要素を予め羅列しておくと良い。

 

例えば、オレオレ詐欺の方であれば、
「孫は車に乗れる」

「孫は18歳以上の青年」
といった話の前提になっている要素がある。
この要素とは、事前に何の定義もしていないにも関わらず、勝手に読み手がそう思い込んでいるものである。

これをオチにしてみると、
「孫は教習所に通ってるんだった」=車の免許を持っていなかった
とか、
「孫はこの前産まれたばっかりだった」=車の運転を出来ない
といった具合になる。

 

また、途中まで騙しが上手くいっているという話の流れもオチを際立たせるにはプラスになる。
なぜなら、
「騙しが上手くいきそうなのに、最後にそう来たか

というように、自然にオチへのフリになっているのである。

 

最後にちょっと長めのものをご紹介。
タイトル:【物忘れ】
「先生、最近物忘れが激しくて困ってるんです」
「そうですか、それじゃあ毎日通って私に千円ずつ渡してください。まぁ、貯金だと思ってくだされば。忘れた頃に一気にお返ししますよ。それだけで治りますよ」
「え? たったそれだけで治るんですか?」
「はい。だって千円が気になって物忘れしないでしょう」
「あ、あぁ、なるほど! ありがとうございます」
「あの患者もバカだな、まんまと引っかかってるよ。忘れるまでどんどん溜まっていって忘れたら全部俺のもんになるのに」
2週間後、
「あのー、先生、最近物忘れが激しくて困ってるんです」
「そうですか(シメシメ)。それじゃあ今日から毎日通って千円ずつ私に渡してください。忘れた頃に一気にお返ししますから。千円が勿体なくて忘れないでしょう。それで治りますよ」
「ああ、なるほど。ありがとうございます! あっ、それじゃあ今日までの分全部返してもらえますか」
「え? いやいや、だって今までの支払い分なんか覚えてないでしょう」
「やっぱり。今まで先生がお金取ってたんですね! どおりで最近お金が無くなると思った。物忘れは激しくても、あなたがヤブ医者だということだけは忘れなかったんです」

 

騙しの手口さえ思いつけば、後は最後に話の前提を崩すだけ。
なんだか出来そうな感じがしてきませんか?
ぜひトライしてみていただきたい。結構やり出すとハマりますよ。

 

さあ、これで準備万端。どっから小噺のオファーが来てもへっちゃらだ!

 

「陸奥亭さん、あのー小噺はいいんで今度は落語お願いします」
えー、なぜか準備が出来ると途端にオファーが来なくなるのがこの世の常でございまして。

 

「あれ? そういえば、陸奥亭さんって落語出来たんでしたっけ?」

 

いや、そこの前提は崩さなくていいのよ。
あ、もしやそれはまだ落語の腕が認められてないということね。

 

くっそー、今度は落語の練習だ!
見てろよ! 爆笑の渦に叩き込んでやるからな!
いや、でも仕事溜まってるし、週末は育児に家事もやらなきゃって・・・・・・何? 子供が熱出したって!?

 

あの、誰か・・・・・・落語と、仕事と、育児の秘伝のレシピください(涙)
どうもお後がよろしいようで。

 

 

***

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2015-07-13 | Posted in ライティング・ラボ, 記事

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