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ライティング・ラボ

【課外授業】先生、お願いだから笑って。


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記事:Ryosuke Koike(ライティング・ラボ)

笑いのツボは人それぞれである。

同じ話をしたとしても、笑い転げてくれる人もいれば、頭上に?マークを出現させ真顔のままの人もいる。笑いの種類によっては、嫌悪感を示す人もいる。
私は、どちらかというと笑いのストライクゾーンが広い方である。笑える機会が多いので得している気もするが、意識せず同じ感覚で人に話をしてしまい、反応がなかったときの滑り感も多く味わっているので何ともいえない。

息子は、私よりさらに笑い上戸である。どこに投げてもほとんどストライクになる。反射反応とはいえ、生まれて数分後には既に笑顔をつくっていたので、生まれつき笑い慣れているのだろう。

一方、同じ子どもなのに娘はハードルが高い。あっという間にフォアボールになる。上の息子に通用した笑わせ方が効かない。いないないばあも、変顔も、こちょこちょも、親は一生懸命なのに真顔のままである。生後6か月でため息をつかれると、驚きとともにがっかりする。

そして、この兄妹間の差異は笑いに限らない。乳児の頃から夜もぐっすり寝てくれていた息子に比べて、娘は全然寝ない。寝かせるための抱っこの体勢や揺らし方も異なる。ミルクも飲んでいた息子に対し、全く飲まない娘。水が嫌で風呂を怖がっていた息子に対し、自ら手でバシャバシャして顔に水がかかっても遊ぶのをやめない娘。

2人とも自分の子どもなのに、反応もそれぞれ違うため扱い方も異なってくる。息子への対応の仕方が、娘にとって有効であるとは限らないのだ。

 

これは、仕事についても同様に当てはまる。
自分にとってこれまでとは全く異なる新しい課題が与えられたとき、最初のアプローチをどうするか。
私の場合、これまで自分が蓄えてきた知識を総動員してまずは色々と考えてみる。ついで、過去に同様の、または類似した課題に対応した事例がないか調べ上げる。さらに、先輩や同僚、知人に対処方法について聞いてまわる。
まずは、私を含めた過去の経験をベースに考えることになる。

理由はある。
効率性を求める現代では、実行したが効果がなかったということで無駄な時間をつくってしまうのはもったいない。とりあえず場当たり的に対応しているうちに袋小路に陥ってしまい、どうにもならなくなってしまうのは、後任者や関係者に迷惑をかけることになりよくない。過去にやっていたこととの整合性を図らないと、相手の予測可能性、期待を無視することになってしまう。

このような、極端に言えば石橋を叩いて渡る方式の考え方は、ある程度上手くいくことが想定されるものである。しかしながら、未知の課題に取り組むのだから、準備万全だったにもかかわらず全く的外れで失敗してしまうことがある。過去の事例、経験が有効であるとは限らない。
そして、何よりも最初の一手まで時間がかかる。対応が遅くなることで事態が悪化することだってある。さらにずっとやっていると、頭が、行動様式が、過去に縛られてしまう。

これは個人に、集団にある危険をもたらす。
失敗したとき、過去に類似した事例がなかったのだから仕方がありませんでしたという自己弁護に走る口実を与えることになる。
逆に、過去と全く違ったアプローチをして失敗すると、過去を活かさないまま自分勝手に挑んだ結果だと非難される。仮に成功した場合でも、場合によっては、過去との整合性をないがしろにしており勝手であるという指摘も受ける。

失敗が怖くなる。失敗しないような正解を事前に求めてしまう。

もちろん、人の生命や身体に関わることは、慎重に考え、失敗のリスクを減らさなければならない。けれども、数多ある課題において、必ずしも過去との連続性の断絶や失敗することが、致命的になるとは限らない。むしろ実際は少ない気がする。

失敗してはじめて見えてくる成功の道もある。
思いついたらやった方がいいとき、走りながら考えた方がいいときもある。
それに、過去に縛られすぎることは、実は目の前の課題に正面からきちんと向き合ってないかとも思う。

試行錯誤がいる。新しいものへのチャレンジに近道はない、自分で考えてやるしかない。
3歩進んで2歩下がってもいいじゃないか。

 

私のあやし方に不満があるのか、今日も娘は泣く。
考えてみれば、子どもというのは大人から見れば理不尽な存在である。こちらのことなどおかまいなし。理屈など関係なく自分の感情に正直な、やっかいな相手である。
育児にまつわる生活上の課題について、いろいろと考え、試して、ときには失敗し、ときには成功する日々を毎日送っている。
親は勉強させてもらっているのだ。

床に仰向けになっている娘の顔を、頭上の方、つまり逆さまに覗き込んでみた。
文字通り娘にとって視点の変化があったのか、大笑いした。
まったく、なんなんだよ。
そう思い苦笑していると、娘の顔が急に険しくなり赤くなった。
鈍い連続した破裂音に遅れて、あのぷ~んとした臭い。
ずぼらな球審の息子は、それだけでゲラゲラ大笑い。

小さな家庭教師たちの授業は今日も続く。

 

***
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2015-11-21 | Posted in ライティング・ラボ, 記事

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