ママ起業のリアル

はじめに《ママ起業のリアル》


記事:ギール 里映(READING LIFE編集部公認ライター)
 
 

「このまま、子育てだけして、人生がおわるのかな?」
 
共働き家庭の数が専業主婦家庭の2倍となった2019年、結婚をしても仕事をやめない女性が圧倒的に増えました。女性の生き方や働き方は、過去20年の間にものすごい変化をみせています。そんななか、妊娠して子どもを生み、そこで一旦仕事を離れて子育てをしはじめてふと、女性はある壁にぶち当たります。それが、「私、このままでいいのかな」という不安です。
 
夫がいて、子どもがいて、そこそこ安定した暮らしがあり、お金持ちではないけれど、超貧乏でもない生活が一応は保証されている。しかしそこで女性たちは、収入がない自分に後ろめたさを感じたり、またその暮らしになんとなく不安や足りないものを感じ、仕事に復帰することを考え始めます。
 
通常子持ちの主婦が社会復帰をするとなると、育休中であればもとの会社に復職という形ですし、また新たに仕事を探すなら、バリバリのフルタイムの仕事というより、夫の扶養控除内でおさまる月8万円のパートの仕事を選ぶことが一般的ではないでしょうか。そういう選択を自ら意図しているのか、もしくは社会の概念にそういう選択をさせられているのかはわかりませんが、その自分の選択に大きな不満があるわけではないけれど、どこか、もやもやしたものを抱えてしまうというママたちが、実は少なからず存在します。
 
「どうせ仕事をするなら、毎日サービス残業を強いられる過酷なフルタイムの仕事でもなく、月8万円のパートの仕事でもない、自分らしい働き方をして、家族や子育ても一緒にがんばっていきたい」そんなふうに考えるママたち。果たしてそんなことは、可能なのでしょうか。
 
好きなことを仕事にする、というフレーズは、大学生の就活でも、転職市場でも、リタイアしたあとのセカンドライフの場でも、様々な場で使われています。しかし果たして自分の好きを仕事にし、日々充実して幸せに仕事をしている人たちはどれくらいいるのでしょう?
 
「そんなこと、できるはずがない、好きなことを仕事にできるのは、ごく僅かな一部の恵まれた人たちだけだ。普通の人には無理だよね」
 
そんなふうに思うことが当たり前じゃないかな。
 
しかし、そうではない人種がいます。それがいわゆる、ママ起業家と言われる人たちです。
フルタイムでもパートでもない、自分の足で立つ起業を志すママたちが、実は少なからず存在するのです。
 
総務省のデータによると、起業家人口は2015年度には514万人に登ります。最近では1年で約80万人が起業をしており、そのうちの1/3は女性です。そしてこの中の多くは、子育て中のママたちです。
 
自分の好きを仕事にするとか、週に2日働くだけでOLさんの月収が手に入る、などの謳い文句で副業したり起業したりする人たちがあとをたちませんが、現実はそう甘くはありません。起業家、それも個人起業家の7割が実に食べていけないというデータもあるぐらい、起業の道のりは楽ではありません。
 
起業の現実を、数字で見てみましょう。
実際1年目で廃業する起業は30%に上り、10年続けることができている起業はほんの10%未満にとどまります。そのため「起業=リスク」と捉え、人生の選択肢に入れない人も大勢います。続けることがいかに難しいかが、数字を見ても明らかです。
 
また一般に起業において、男性の場合は融資を得たり、初期投資が大きかったり、比較的規模の大きい事業を考えるのに対して、女性の起業はもうすこし小規模になります。自分で支払える範囲の自己資金で小さく始めるので失敗が少なく、そのため継続する率も高くなります。詳しいデータはありませんが、実は廃業する多くの起業は男性なのではないかと私は思っています。
 
ただ女性の起業家の9割は、年商が100万円未満、というケースがほとんどですので、決してこれだけで毎日の暮らしを支えているわけではありません。そのため、女性の起業、しかもママの起業は、男性社会の常識から見たらままごとのように見えるのかもしれません。
 
しかしママの中にも、大きな世界を描こうとする人たちがいます。男性並みか、ときには男性を上回るパワーや行動力をもって、仕事を大きくすることができる人たちです。
私も幸い、その一人になりました。
私は、一般社団法人の経営をしています。これまでに学んできた食の知識を体系化して、子どもの能力を開花させる食事法として、全国のお父様、お母様、そしてお子様の未来に関わる方たちにお伝えする仕事をしています。4年前にたった1人で立ち上げたビジネスは1年で軌道にのり、それから山谷ありながらも、比較的順調にビジネスを成長させてきました。2018年には法人化し、これまでに累計3000名以上のお客様に出会うことができました。つまり少なくとも、3年生き延びた30%の中には入っているというわけです。
 
心から、思います。
「ママであろうと、関係ない!」
自分がやりたいことをやるのに、性別も、肩書も関係ないんだということを、自分自身が体験させていただいています。
 
なぜ私が起業を志したのか。私は実は、世界を変えたいと思っています。
子どものころ、こんなことを言っても、誰も相手にしてくれませんでした。「何いってんの」と一蹴されて終わりですし、そもそも言い出すことも恥ずかしくてできなかった。だけど今ならそんなことも、こうやって言えるようにもなりました。
 
私はこの世界を、もっと人が思いやりを持ち、人が人を大切にして、どんな人にも居場所がある社会にしたい、と思っています。しかしそんな世界をどうやって作ればいいのか、全く考え付きもしませんでした。むしろ「私には無理だろう」「そんなことできるわけがない」とすら思っていました。そんなときに出会ったストーリーが、100匹の猿のストーリーです。
 
100匹の猿のストーリーとは
サル山に、猿が100匹暮らしていました。ある日、その中の1匹が、水辺で芋を洗い始めました。美味しく食べたいと思ったからでしょう、一生懸命洗い始めました。それを見ていた隣の猿は興味津々、その猿に訊いています。
 
「おう、なにやってんの? それ?」
「ああ、芋洗ってんだよ。お前もやってみる?」
「いいね、じゃあ洗ってみるよ」
 
そういって2匹目の猿も、芋を洗い始めました。
 
すると、3匹目の猿が、その2匹の猿に近寄ってきて訪ねました。
「おう、なにやってんの?」と。
2匹の猿は、芋を洗っているんだと教えてあげました。
そして3匹目の猿も一緒に、芋を洗い始めました。
 
こうして、4匹目、5匹目、6匹目と現れた猿は、順次芋を洗い始め、結果たくさんの猿が芋を洗うことになりました。
 
そうして、ついに芋を洗う猿が100匹になりました。
すると、不思議なことに、全く同じことが、全然別のサル山でも始まったのです。
こうして、全国あちこちのサル山で、みんなが一斉に芋を洗い始めることになりました。
(ここまで)
 
これが、同時多発の原則、つまり、物事が広まっていくことのファーストステップなのです。
このストーリーを聞いた私は、そうか、まず100人に出逢えばいいんだ、と思い、そこから100人に出会うためにどうすればいいのか、考え、実践してきました。
こうして無事1年後には、100人のお客様と出会うことができ、これをきっかけにビジネスが軌道に乗り始めたのです。
 
私の方法が、全員に役にたつかどうかはわかりませんが、リアルなママ起業の経験談として、これから起業をしたい、もしくは起業をしているというママたちの参考になれば、そんなにうれしいことはありません。
また各章の末尾には、ママ起業を乗り切り、成果出すために役立つレシピを添付しています。家事や育児、ときには夫の世話と両立してまで想いを貫く仕事がしたいと願うママたちに向けて、しんどいときこそ食のチカラを借りて生き抜いてほしい、そんなメッセージを込めて、お届けしてまいります。
 
では、ボナペティ!

 
 
 
 

❏ライタープロフィール
ギール 里映(READING LIFE 編集部公認ライター)

この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

http://tenro-in.com/event/103274


2020-03-16 | Posted in ママ起業のリアル

関連記事