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メディアグランプリ

ストーカーから逃げてきた。ただ今休職中。

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:RIKO(ライティング・ゼミ冬休み集中コース)
 
 
「なんでオレに心を開かないの? そんなんじゃ仲良くなれないよ」
親切そうに言ってはいるが、イライラしているのだろう。痩せた体が小刻みに震えている。
 
 
「お客さまが来ますので、もう、いいですか?」私がやんわりと帰ってほしいことを伝えても、その男は玄関からなかなか出ようとしない。ジェスチャーで扉の方へ移動するよう促したことで、やっと出ていってくれた。
急いで玄関の鍵をかけ、緊張感から解放されると、今度は私が震えだす番だった。
怖かった。
 
 
40歳にもなってストーカー被害者になるなんて思ってもみなかった。40代でも、50代の人からみたら「若い」のだと知った。
 
 

警察に相談するまで半年悩んだ。
「ストーカーなんて大袈裟なんじゃないか?」「ストーカーされる方にも悪いところがあるんじゃないのか?」自問自答を繰り返していた。だんだんとエスカレートし始めた時にも、そのうち治まるかもしれないと様子をみていた。
 
 
ストーカーは近所に住む50代後半の男性で、精神病を患っていた。
働いた経験はなく、ひきこもりがちだったが、高齢の親が施設に入ったのをきっかけに外出することが増えると、すぐに、周囲の人間を見下したような言動が近所で話題にのぼるようになった。
 
 
私も挨拶程度の会話はした。「(高学歴の)オレとまともに話ができるなんて、あんた何者?」「すげーいい女だな」などと言われて、変な人と思ってはいた。
だけど、まさかストーカーになるなんて。
 
 
私に夫がいるうちは問題なかった。
離婚した後も、近所には「夫は単身赴任中」と説明していた。
にもかかわらず、どうやって調べたのか離婚したことを知って、「オレが守ってやるよ」とわざわざ家まで言いにきたのだ。離婚はしていないから大丈夫だと言っても聞く耳を持ってくれない。
 
 
私の交友関係を調べて注意してきたり、帰りが遅くて危ないと、やることなすこと口を出してくる。
私が外に出るタイミングを見計らって駆け寄ってきては「あいつは昔オレを裏切った! あんなやつと付き合うな」などと、唾を飛ばしながら意味不明なことを怒鳴り散らすのだ。
 
 
目を血走らせ、小刻みに震えながら10分以上も怒鳴り続ける初老の男性を思い浮かべてほしい。「監視は止めてください」と言っても「全然わかってない」と怒りを煽ってしまう。
 
 
「オレはインターネットに詳しくて闇の仕事を請け負っている。なめないほうがいい」と脅すようなことまで言い始め、だんだんと攻撃的になっていった。
 
 

念のため、あいつと呼ばれた人物に確認したが、裏切るどころか知り合いですらないとのことだった。
 
 
ストーカーになってしまったのは、自分を世話してくれた両親がいなくなり不安だったことも背景にあるのでは、と想像する。
悪気がないとわかっていたので、最初のうちは強く言えなかった。善意を拒絶されたときのショックは大きい。私は純粋な人を傷つけてしまったのだろう。だからといって同情はしないけれど。
 
 
どうしたら私から関心を逸らすことができるのか? 引越して遠くへ行くか? 誰かと再婚したらいい? 私自身が強くなればいいのか? 悩むばかりで月日は流れていく。
 
 

結局、警察から「この家の前に不審者がいると通報があったので、話を聞かせてほしい」と連絡があったことで相談することができた。
その頃には、私の家の前をひっきりなしに行ったり来たりして中を覗き込むなどしていたので、心配して通報してくれた人がいたのだ。
 
 
警察はすぐに動いてくれた。
①私から事情を聞く。
ストーカーと認定されるには基準があり、時系列で詳しく起こった出来事を説明する必要がある。いつ、どんなことがあったのかメモを取るとよい。証拠が残るように監視カメラを置くと尚よい。
②相手から事情を聞く。(この瞬間から、ストーカーを刺激してしまう可能性があるのでしばらく家へ戻らないよう指示を受ける)事実確認の結果、次に接触したら逮捕だと厳重注意。
④警察から定期的に安全確認の連絡が入るようになる。
 
 
警察から注意を受けたストーカーは、もう私に接触することはなくなった。
 
 
それでも近くに住んでいるという状況は変わらず、反省しているのか逆恨みしているのか、相手の様子が見えない分、不気味さは増していった。被害妄想が激しいことを知っているので、何をされるかわからない怖さがあった。外出もままならず、眠れない日が続いた。
 
 
様子を見にちょくちょく顔を出してくれる友人もいたし、ストーカーなんかに負けるなと励ましてくれる人もいた。だけど、1度芽生えた恐怖心に勝つことは難しかった。
私は家を離れることにして、バタバタと引越しを済ませた。
 
 
2014年に全国の20歳以上の男女3500人を対象に行われたアンケートによると、ストーカーにあったことがあると答えた女性は約10%もいるそうだ。
ストーカー加害者は、交際相手や元交際相手である割合が3分の1という結果になっているので「ストーカーされる側にも原因がある」場合も中にはあるだろう。けれど加害者が、知らない人というケースも意外に多い。
 
 
被害が現在進行中で、人知れず悩んでいる人がいるかもしれない。
 
 
私の場合は警察がしっかり話を聞いて対応してくれた。メモを取って整理しておくだけでも、いざというときに役立つだろう。まずは相談しよう。
 
 
どうしたら防げたのかはまだわからない。
 
 
けれど、私はいま、自由に外へ出られる喜びを噛みしめている。

 
 
 
 
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2020-01-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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