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「美容室難民」の自分について本気で考えてみた


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:神東美希(ライティング・冬休み集中コース)
 
 
「痒いところはございませんか?」
 
「あります」と言えたらどんなに楽か。
 
私は美容室が苦手だ。
 
お金を出してサービスを受け、リラックスすべき空間のはずなのに、店を出る頃にはどっと疲れている。
 
それってなんか変じゃない?
 
相性の良い美容師さんに巡り合うのって、結婚相手や恋人を探すよりはるかに難しいのではないか、とさえ思う。
 
時間をかけてようやく信頼関係を構築できたかと思うと、結婚などを理由に退社してしまう。
また新しい美容室を探すが、なかなかお気に入りに巡り合えず、店を転々としている。
 
そう、私は「美容室難民」なのだ。
 
日本全国に約24万店もあるという美容室。
歯医者が6万店、街中に溢れているコンビニでさえ5万6,000店というから、いかに多いかお分かりいただけるだろう。
 
ちなみに、私の暮らす静岡県には約8000の美容室があるという。これは全国で10番目に多い数。
 
それだけの美容室がありながら、どうして私は「美容室難民」になってしまうのか?
 
大まじめに考えてみた結果、理由は大きく2つに絞られた。
 
1. 自分の希望どおりのスタイルにならない
 
2. 美容師さんとのコミュニケーションに疲れる
 
検証してみよう。
 
まずは「自分の希望どおりのスタイルにならない」件から。
 
硬くて太くてボリュームのあるクセ毛。
それが私の髪質だ。
サラサラのストレートヘアやポニーテールに憧れたけど、そんなのは夢のまた夢。
 
子どもの頃から自分の髪が嫌で嫌でたまらなかった。
 
朝起きたら髪の毛大爆発!
どんなにハードスプレーを撒いてセットしても、ヘルメットを被っているようにしか見えない。
 
特に思春期には、この髪型をからかわれるのが嫌で「学校に行きたくない」と本気で思ったものだ。
 
美容室へ雑誌の切り抜きを持っていって希望を伝えても、その通りになった試しがない。(そもそも顔の造りが違うのでは? という突っ込みはご遠慮いただきたい……)
 
私の髪質や好きなスタイルを理解してもらうには、かなり時間がかかる。
 
なのに、人見知りかつ面倒くさがりな性格が災いして、「もっとこうしてください」と言えないのだ。
 
最終仕上がりの際、鏡を見て「なんか違うな……」と感じても、勇気を出して「もう少しだけ短くしてください」というのが精いっぱい。
 
なんせこちらの髪質が厄介なので「お手数おかけして申し訳ありません」的に下手に出てしまう。
 
気に入らないところがあっても、二度も「こうしてください」なんて言えるわけがない。
 
本当は、私の表情や言い回しから「満足していない」ことをうまく読み取ってもらいたいのだけど……。
 
次に、「美容師さんとのコミュニケーションに疲れる」件。
 
先にも述べたように、極度の人見知り。
とはいえ、そこそこの社会性はあるばかりに、話しかけられると無碍にはできない。
 
美:「今日はお休みなんですか?」
私:「はい、お休みです」 (それ以外の答えが見つからない)
 
美:「どんなお仕事されてるんですか?」
私:「サービス業です」 (どこまで詳しく話していいか分からない)
 
美:「お休みの日は何されてるんですか?」
私:「いろいろですね……」 (趣味がないのだ!)
 
向こうだって別に私に興味があるわけでもなかろう。
業務上のリップサービスと分かっていても、聞かれたら答えないわけにはいかない。
 
しかしこれが本当に悩ましい。会話が続かないのだ。
 
そこで私が編み出したのが「ひたすら雑誌を読みふけるフリをする」という技。
 
たいして興味のない女性週刊誌でも、ものすごく集中して読んでいる。
かのように見せる。本当はたいして頭に入ってないんだけども。
 
そこまでやると、察しのいい美容師さんは話しかけてこない。
「このお客様はそっとしておいてほしいタイプなんだな」と一歩引いてくれるのだ。
 
タチが悪いのが、察しの悪い美容師さん。
 
「この前、〇〇に旅行に行ってきたんですけどね~」
 
会話が途切れたのを申し訳ないと思ったのか、ついに自分の話をぶっ込んで来た。
 
(私にどう答えろっていうのよ!!)←心の声。
 
そう言えたらどんなに良いか。
 
でも実際は「はぁ、そうなんですか。うらやましいですね」
なんて、こっちがヨイショしたりしちゃって……。
 
何とか「雑誌読みふけるフリ作戦」に持ち込もうとしても、その隙を与えてくれない。愛想のない相槌を打つのが精いっぱい。
 
雑誌作戦より効果的な方法はないものか?
 
以上、大マジメに検証してみたものの、余計に謎は深まるばかり。
 
「あれ?」
 
ここまでを読み返してみて、我ながら「なんて傲慢で嫌なヤツなんだ!」と気づいてしまった。
 
「お金を払ってサービスを受けるんだから、至れり尽くせりじゃなきゃ嫌よ! 満足して当然なのよ」
 
「なんでこっちが気を遣わなきゃいけないのよ、そっちから歩み寄りなさいよ」
 
「お客が何も言わなくても相手の気持ちを汲み取るのがプロでしょ?」
 
まるでそう言っているじゃないか。
 
私自身もサービス業(観光業)に従事しているが、こんなお客様がいたら嫌だ。
 
サービス提供者側の気持ちは痛いほど分かっていたつもりなのに、自分が逆の立場になったら、こうも性悪になってしまうとは!
 
サービスとは、提供する者と受ける者、その両者がより良い空間に作り上げていくものだ。
 
ましてや美容室なんて、自分がキレイになるために行くのだから、「こうなりたい」という希望をうまく伝える努力を惜しんではいけないはずだ。
 
私は自分の意見や希望を伝えることを諦め、雑誌作戦や適当相槌に逃げていた。
なのに「相性のいい美容師が見つからない」と不満ばかり。
 
これじゃまるで、自分のことは棚に上げて「高給取りじゃないと嫌だ」「身長が高くないとダメ」などと、相手の条件ばかりをあげつらう婚活女子ではないか。
 
理想は結構だが、自分自身をよく見つめることも大事だよね。
(他人事なら何とでも言える)
 
このままじゃ私も一生、美容室難民。そんなの嫌だ!
 
相手に求めるばかりではなく、自分自身が少し変わることから始めてみようか。
 
「ヘアカタログを見せてもらっていいですか?」
「私、こんなスタイルが好きなんです」
臆することなく希望を伝えてみよう。
 
「前髪は伸ばしたほうがいいですかね?」
「普段のお手入れはどうすればいいですか?」
プロの技術を信じて相談してみよう。
 
「雑誌を読んでてもいいですか?」
空気を読みすぎるのはやめて、それとなく苦手なことを分かってもらおう。
 
美容室って案外、「伝える力」が試される場なのかもしれない。
 
やってみようじゃないか!
 
満足いくスタイルに仕上がるだろうか。
清々しい気持ちでお店を出ることはできるだろうか。
 
この世のどこかに、私を待っている美容室がある…… はず。
 
 
 
 

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2020-01-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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