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優しい虐待


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:高木信幸(ライティング・ゼミ 冬休み集中コース)
 
 
45.8%
 
 

この数字が意味するもの。
 
 

日本の子どもたちに、「今の自分に満足しているか」という質問に対してイエスと答えた割合を示している。
 
 

日本では半分の子どもたちは、自分に満足していない、言い換えれば自信がないという状況なわけだ。
 
 

驚くべき数字だ。
 
 

さらに驚くべきことは、この数値、先進国の中で最も低い。
 
 

アメリカを見れば、80%以上という数値を示しているのである。
 
 

日本の数値の低さに、驚きと悲しさを感じるのは僕だけではないはずだ。
 
 

日本の子どもたちは、自己肯定感が低い、などという言葉を頻繁に聞いたりする。
 
 

どうして、このような状況が生まれてしまっているのだろうか。
 
 

この質問の対象になった子どもよりも、もっと幼い子どもたち、つまり、未就学児たちは、自分に満足していないとか自信がないとか、そういった発想そのものがないはずだ。
 
 

それが成長とともに、自信を失っていく。
 
 

お隣のアメリカでは自信をつけながら成長していくのに。
 
 

成長の過程に大きな要因があるはずだ。
 
 

僕は親との関わりに大きな影響があると考える。
 
 

僕は塾の教師だった。

 
 
立場上、保護者と子どもを交えた3者面談をすることが多々あった。
 
 

ある男子生徒だ。
 
 

この子は、ものすごく消極的な子。
 
 

大人しくて、話しかけても自分の意見をなかなか言えない。
 
 

申し訳ないが、見るからに自信のカケラもなさそうな子だった。
 
 

その子との面談での出来事だ。
 
 

僕が子どもに向かって質問する。
 
 

勉強のことことか、普段の生活のこと。
 
 

そうすると、子どもは沈黙する。
 
 

それを見かねた母親が間髪入れずに、割り込んでくる。
 
 

「あなたは、こうよね」
「いつもそうだもんね」
「ね、そう思ってるんでしょ」
 
 

と彼の代弁を始める。
 
 

対して彼は、否定することはなく、ただただ頷くだけだった。
 
 

30分の面談で彼が発した言葉はほとんどなかった。
 
 

僕が子どもに投げかけた問に対して、母親が答える、というなんとも不思議な面談になったのだ。
 
 

つまり、彼は知っているのだ。
 
 

黙っていれば、お母さんが助けてくるってことを。
 
 

今までそうだった。
 
 

そして、これからもそうだって思ってるかもしれない。
 
 

え、そんなことあるの?
 
 

と思うかもしれないが、これと似たケースは結構ある。
 
 

母親は、なぜこのような対応をするのか。
 
 

それは、子どもが可愛いからだ。
 
 

このお母さんだって、笑顔が素敵でとても朗らかな優しそうな方だった。
 
 

だから、守ってるんだと思う。
 
 

「答えられないのが、可哀想」
 
 

「私はあなたのこと一番わかっているから代わりに答えてあげるね」
 
 

「私があなたを守るのよ」
 
 

と、ちょっとオーバーかもしれないが、そう言った気持ちが母親にはあるんだと思う。
 
 

愛情表現なのかもしれない。
 
 

もちろん、子どもを愛する気持ちは尊いものだ。
 
 

しかし、その表現の仕方を間違えてはいけない。
 
 

子どもは、いつか親を離れて自立する。
 
 

このお母さんは、子どもの高校受験の面談や就職試験の面接でも同席して、彼の気持ちを代弁するのだろうか。
 
 

それは、無理だ。
 
 

母親が子どもを守ろうとして手を差し伸べる、これは子どもの成長の機会を奪っていることになるんだ、ということを知ってもらいたい。
 
 

優しさからくるこの行為は、言葉を乱暴にして言えば、虐待のようなものだと、僕は思う。
 
 

親はサポートしてあげる必要はある。
 
 

しかし、ヘルプは成長を止めてしまう。
 
 

別の面談でのことだ。
 
 

この生徒は勉強がとってもよくできる女子生徒だった。
 
 

学校での定期テストでは、毎回1位をとるような。
 
 

その子とも同じように3者面談をする。
 
 

同じように質問する。
 
 

勉強のこと、生活のこと。
 
 

彼女はハキハキと答える。
 
 

母親は黙ってる。
 
 

時々、母親に意見を聞いたりする場面はあるが、それに対しては「そうね」と優しく微笑むのみ。
 
 

僕からお母さんに子どもの様子を伺うと、こう答えた。

 
 
「全て彼女を信頼して任せてますから」と。

 
 
この家庭が特別なんでしょ、という声も聞こえて来そうだが、実は、成績が良い生徒の親は共通してこれと似たようなことを言う。
 
 

30分の面談で、彼女は自分の意見をしっかりと自信を持って僕に伝えることができた。

 
 
同じ中学生でもこうも違うのだ。

 
 
「あなたはこうよね」という親が決めつけたレッテルを貼れば、子どもは楽で良い。

 
 
自分では自分というものを考えなくて良いんだから。
 
 

でも、他人の決めた自分に何の価値があるんだろうか。

 
 
その結果が自分に満足できない、という子どもをつくっている気がする。

 
 
45.8%

 
 
約2人に1人はそうなってしまっているわけだ。

 
 
子どもの成長を本当に願うのであれば、子どもに自分で決めさせる。
 
 

失敗も経験させる。
 
 

自分で考えさせる。

 
 
ということが重要なんだと思う。

 
 
着る服も、食べるものも、見るテレビ番組も、付き合う友達も親が決めて、敷かれた
レールの上を歩く子どもの気持ちはどんなだろうか。

 
 
批判を覚悟でもう一度言うが、優しい虐待だと思う。

 
 
子どもの成長を奪うという意味において。

 
 
これからの日本を背負って立つ子どもたちに、考えるというタネをまき、失敗という水を与え、自信という大輪の花を咲かせて欲しいと切に願うのは僕だけだろうか。

 
 
 
 
***
 
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2020-01-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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