メディアグランプリ

愚痴で生まれる友情に、ピリオド


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記事:yuko(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
転職先は、愚痴の宝庫だった。
 
「営業」という合わない職に疲れ、辿り着いた転職先は、受付事務の仕事だった。
給与すら半分になったが、営業と比べたら、仕事内容も楽勝といったところだ。
職場メンバーも、みんな優しい。
うん、ここならやっていける! そう確信していた。最初のうちは……。
 
「○○さん、あの言い方キツすぎじゃない!?」
「私達より給料高いのに、全然仕事しないよね!?」
 
昼休みに吐き出される、愚痴。愚痴。愚痴。
まだ新人で、やる気に溢れていた当時の私にとって、正直苦痛の時間だった。
他人の愚痴とは、聞いているだけで、なんとパワーを奪われることか。
いつしか私は、休憩場所を変え、一人で昼休みを過ごすようになった。先輩には、角が立たないよう、理由をつけて。
……あの時、私も何か言われていただろうか?
 
人間の脳とは、主語を認識できないという。
自分が発したネガティブな言葉は、自分が言われていると錯覚するそうだ。
ストレス発散で発した言葉は、皮肉にも自分に振り掛かっているのである。
そして、聞いている側も同調することによって、ストレスを感じる。
まさに負のループ。ストレスの塊。
 
しかし、考えてみて欲しい。「ザ・ポジティブ!」という人に、愚痴を言いたいとは思わない。
言う雰囲気にさえならない。全く盛り上がらないからだ。
たとえ、ポジティブな人や心穏やかな人に愚痴ったところで、反応が薄かったり、「ん~そうかな~」と濁されたりする。こちらとしても面白くはない。
まして、ポジティブな言葉でフォローなんてされた日には、ストレスの捌け口がピシャっと閉ざされ、余計なストレスさえも上乗せされてしまう。
 
となれば、人は「同調してくれそうな人」に対して愚痴るということになる。
なんてことだ。私は同じ波長をもっているということか! ショック!!
私は、先輩から、「愚痴を言ってもOKな人」に分類されていたのだ。
もちろん、私は所謂「ポジティブな人」ではない。もっと言うとネガティブだ。
ただ、愚痴を聞くのは嫌いなハズ……だった。
 
あれから約10年経った。
私は当時と同じ職場にいる。
そして、変わらぬ先輩と、「ストレス発散」と称して、愚痴を言い合っている。
……あれ? 私、変わった?
 
いや、そうではない。元々私が持っていた負の要素が、引き出されただけだ。
先輩方は見る目がある。私が「同調してくれる人」だと、当時から見抜いていた。
私は自分に失望する。あんなに意気揚々と始めた仕事だったのに、長年居座ったおかげで、私は本性を剥き出しにしてしまった。
しかも、「愚痴を言い合う」ことで、その先輩とは、互いに一番の理解者、支えあう仲になるという、皮肉なオマケ付きだ。
 
マイナスな力はある意味強い。同じ悩みや不満を持っている者同士が集まると、途端に結束が固くなる。これは、女性特有かもしれない。
「女性家系で、父親が嫌われて独りぼっち……」、というシチュエーションをよく聞くが、それは、母と娘が、「父親」という同じ対象に不満を持っているために生まれる。
同調し合って愚痴を言い合える仲間こそ、「信頼できる相手」であり、それに乗ってこない人は反りが合わないとして排除される。
奇妙な世界だ。
 
ただ、私は今、この世界にいる。
私は変わらなければならない。
元来、愚痴の多い職場なんて、楽しいわけがない。
この世界の住人は、一時的なストレスは解消されても、また新たなストレスを持ってくる。「負」を見つけやすい体質になってしまっているからだ。
 
よし、変わってやろうじゃないか!
「脳は、主語を認識できない」のであれば、まずは、「ありがとう」だ。
周りの人達に「ありがとう」を多発することで、私が「言われる」。
 
無理やりでも口角を上げることによって、不思議とイライラが軽減される。
 
あとは、ポジティブな言葉への脳内変換。不本意なことが起きた時、「でも、そのおかげで〇〇できたし!」とか、「でも、〇〇とまではいかなくて良かった!」とか、良い方向への「でも」を活用する。
 
それでも、まだまだ負の私が顏を出すから、プライベートを充実させる。
愚痴は、暇だからこそ出る。忙しくすることで、心を満たす。
 
今のところ、そんなところだ。
まだまだ変革中なので、その先輩とも仲良くやれている。徐々にでも、今の状況から抜け出そう。
変われるだろうか?
水面下で動き始める私を見て、先輩は面白くないかもしれない。
10年間で培った、「固い結束」が崩壊することも、不安要素ではある。
しかし、これは私の人生だ。変な優しさを見せるのはやめよう。
いや、先輩とは、もっと違った形で上手くやればいい。
 
類は友を呼ぶ。
ポジティブになりたければ、ポジティブな仲間を作ればいい。
お金持ちになりたければ、お金持ちのネットワークに入り込めばいい。
女子力を高めたければ、憧れの人と繋がればいい。
本日、2019年大晦日。
2020年、理想に近づいた自分で、私は違った世界を見てみたい。
 
 
 
 
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2020-01-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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