メディアグランプリ

女子大学生とセックスをめぐる哲学的考察

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:火星(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
インターネットの記事を見て、私は口から心臓が飛び出しそうになった。
 
女子大学生がSNSでこんなことを書いていたというのだ。
『まだ付き合ってないけど、もっと仲良くなれたら良いな。またHしたい』
 
日本人の読解力が低下していると言われて久しい。
私だって自分の読解力にそれほど自信があるわけではない。
しかし、断言できる。
これを書いた女性は付き合っていない男とセックスしたのだ。
間違いない。
 
私の認識では男女とは付き合って、それからセックスするものなのである。
しかし、今の一部の若者にとっては、セックスしてから付き合うということが、ごく自然にあることのようなのだ。
 
なぜこうなったのか。
ニワトリが先か卵が先か。
付き合うのが先かセックスが先か。
ギリシアの哲学者のように私は悩んだ。
しかし、悩んでいても答えは出なかった。
 
あたりまえである。私は、付き合う前にセックスをする若者ではないのだ。
せめて、ギリシアの哲学者だったら「ヘウレーカ!(わかったぞ!)」と叫び、全裸で街中を走り回るくらいはできたかもしれない。
 
考えても答えが出ないのであれば仕方がない。
付き合う前にセックスをする、そんな女子大学生に会ってみよう。
 
およそ2週間前、私はマッチングアプリに登録をした。
システムを簡単に説明すると、男女がそれぞれ相手のプロフィールに興味を示して「いいね」を押せば、メールのやりとりができるようになるというもの。
 
私は、18歳から24歳の大学生くらいの年齢の女性にかたっぱしから「いいね」を送った。
 
「いいね」は1つも返ってこなかった。
 
さらに25歳から30歳までの女性も、31歳から35歳までの女性も、36歳から40歳までの女性も私に「いいね」をくれなかった。
 
やむを得ず、私は方針を転換することにした。
マッチングアプリというものにもいくつかの種類がある。
その中には、プロフィールの希望する関係の欄に「大人の交際」というのを選ぶことができる、少々いかがわしさを感じるものもあるのだ。
 
それに登録してみると、逆に女子大学生のほうから私に「いいね」が送られてくるようになったのである。
マッチング成立しメールのやりとりができるようになった。
 
小躍りしたのも束の間。一緒に食事をするだけでも、彼女が要求してくる金額は高額だった。
しかし、他に方法もない。出会う約束をした。
 
自称女性大学生に出会った第一印象は、最近のカメラアプリってすごいねというものだった。
ファミレスでコーヒーを飲みながらの会話は、まったくはずまなかった。
 
しかし、これまでどんな男性と会ったことがあるのかを聞くと、そのときだけ彼女は少し嬉しそうに答えるのだった。
 
私が一度も「いいね」をもらえなかったアプリを彼女も使ったことがあるらしい。そのアプリで出会った男性と、出会ったその日にセックスをしてそれっきりになったとのこと。彼女もそういう関係を望んだのだそうだ。
 
ここにいたっては、もう付き合う前か後という話ではない。セックスだけの関係が登場である。
 
私は困難な哲学の命題を突きつけられた弟子のように質問をした。
「なぜ、セックスだけでよいと思ったのでしょうか」
 
彼女もこころなしか真理を知っている師匠のように回答した。
「付き合うのは安心感がほしいから。でもセックスだけでいいというのは、さびしいときとか、性欲でセックスだけしたいときがあるから」
 
それで分かった。どちらが先とか後という問題ではないのだ。
 
SNSの女子大学生の例で言えば、彼女は男性と付き合いたいと思ったし、それと同時に男性とセックスもしたいと思った。
しかし男性のほうは、彼女とセックスをしたいと思ったものの、付き合いたいとは思わなかった。
 
だから、結果だけを見れば、その女子大学生は、付き合う前にセックスをしていたことになるのである。
 
「ヘウレーカ!(わかったぞ!)」
 
そんな私の大発見をよそに、つまらなそうな顔をした彼女は、私から金をぶんどって去っていった。
1時間で五千円。
しかし、困難な命題に対する一つの答えを見つけることができたのだから安い出費と言うべきだろう。
 
マッチングアプリを利用する女性がたくさんいることからわかるように、女性も男性との出会いを求めているのは間違いない。
 
しかし、晩婚化が進み、生涯独身も珍しくなくなった現在、女性が男性を選ぶのは結婚相手を見つけるためだけではない。
 
交際やセックスだけや同じ趣味の友達など、女性も色々な関係を望み、それに応じて積極的に男性を選ぶ時代が来た。
 
そして、結婚と違って、交際やセックスだけならば、同時に複数人と関係を持ったり、次々と相手を変えることができる。
 
そうなると、一部の男性が多くの女性との関係を持つようになったことは想像に難くない。
 
セックスだけの関係を持てる男がいる一方、まったく出会うことすらできない私のような人間がいる。
 
これが今という時代の現実である。
セックスしてから付き合う女子大学生というのは、その氷山の一角でしかないのだ。
 
さて、私が「いいね」を1つももらえなかったアプリだが、実は今でも毎日起動をしている。そうするとログインボーナスというのがもらえて、「いいね」を送れるのだ。
 
私は今日も「ヘウレーカ、ヘウレーカ」と呟きながら、女子大学生に「いいね」を送っている。
まだ1つも「いいね」は返ってきていない。
 
 
 
 
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2020-01-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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