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メディアグランプリ

嫌いが好きになる瞬間


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:中村未希(ライティング・ゼミ特講)
 
 
お向かいさんからカブトムシの幼虫を10匹もらった。
 
なんでも昔、山で採ってきた2匹のカブトムシが増えに増え、今では50匹以上に繁殖しているという。
うちには小さな息子が2人いるので声がかかったというわけだ。
 
カブトムシはだいたい夏の時期に幼虫から、さなぎを経て成虫となり、卵を産んで生涯を終える。
 
去年はじめて、ご近所さんに2匹いただいて育ててみたのだけど、これがまた楽しい。
 
くねくねと身をよじりながら土の中にもぐる幼虫の姿を目にした時、「こんな弱そうな白い幼虫が立派なカブトムシに成長できるのか」と疑問を抱いた。
それでもなんども幼虫の餌となる土(昆虫マットと呼ばれている)を変え、フンを掃除しながら数ヶ月過ごした。
 
7月になり、もうそろそろさなぎになるのではないかとそわそわしている自分を見つけた。
なんでも幼虫の間に病気になって死んでしまうものもいるらしい。
毎日Youtubeでカブトムシの関連の動画を見ては今か今かと待ち構えた。
 
ある日、病気で幼虫が死んでしまう夢を見た。
夢にまで見たとはよく言ったもので、本当に夢に出てくるのだから面白い。
私は起き上がると、急いで玄関を開け虫かごを覗き込んだ。
そこには幼虫から立派なツノを生やしたさなぎの姿に変化を遂げたカブトムシの姿があった。
 
私は基本的に虫が嫌いだ。
昔、実家のこたつの中に寝転んでいた時に、小さな虫が耳の中に入って来て、そのまま奥に逃げこんだということがあった。
耳の中に指を入れ、動くものを引っ張った時、手の中に人生で一番嫌いな虫の足を見つけた。
奥へ奥へと逃げようとする虫、耳の中で嫌いな虫がウゴウゴとうごめいて気持ち悪いやら怖いやらで泣き叫ぶ私。
ピンセットでもそんな奥まで届かないからと、冷静な母はすぐに救急車を呼んだ。
救急車を待つ間、耳の中でごそごそと動く虫の感触を大人になった今でも忘れられない。
 
そのほかにも南の島が大好きで、あちらで過ごす時間が多かった私は様々な虫と戦ってきた。
わざわざ飛んで来て頭の上に着地した巨大な虫もいた。
好きでも嫌いでもなく、虫に対して無関心を貫き通してきた私だったが、食事中にテレビで虫の姿を見ようものなら、たちまち食欲を無くししばらくは気持ち悪さと戦うといったような立派な虫嫌いになってしまった。
 
それから時は経ち、私は息子を産んだ。大好きだった仕事をやめ、たばこやお酒もやめ、子育てに奮闘する日が続いた。
生活だけではなく、食事もガラリと変わった。
いつの間にか日課にしていたコーヒーが飲めなくなっていた。
甘いものに見向きもしなかったのに、時間を見つけてはスイーツを食べ歩く日々が続いた。
活動時間も子供中心のものになった。
 
どんどん大きくなり、興味を持つものもコロコロ変わる子供の頭の中はどうなっているのだろう。
いつまで見ていても飽きることはない。
アンパンマン、トミカ、シンカリオン、プラレール、ポケモン、妖怪ウォッチ、機関車トーマス、仮面ライダー。
今まで見たこともないアニメを見たり、おもちゃで遊んだりするのは楽しかった。
 
そんな中夏が来た。
夏は楽しい。
スイカを割ったり、プールで泳いだり、ひまわりが咲いたり、お祭りに行ったり。
そうこうしているうちに自然の流れで夏の風物詩、カブトムシに辿り着くのだ。
 
初めて息子たちと一緒にカブトムシの幼虫を見たときは、こんなブニャブニャした生き物があんな立派な固そうなカブトムシになるのかと不思議だった。
そして同時にあれほど虫が嫌いだったのに、嫌悪感なく、純粋な好奇心でブニャブニャの幼虫を眺めている自分自身にも驚いた。
 
時が経ち、自分を取り巻く環境が変わると自分自身もこれほどまでに変わるのか。
とても些細なことだと思う。
それでも私にとってはとても大きな変化であり、驚くべき出来事だったのだ。
 
さなぎになったカブトムシは順調にくねくねしながら(さなぎは動くのだ!)快適そうな日々を送っていた。
Youtubeでさなぎから成虫になる瞬間をなんども予習していた私は、仕事机の上にさなぎを入れた観察用のペットボトルを置き、今か今かと変化の時を待った。
眠る時と雑用以外はほとんど一緒に過ごした。
 
ある日、30分ほど外で用事を済ませていると、家に帰宅した時にはすでに黒くて固そうな立派なカブトムシになっていた。
きっとずっと見られ続けていたので向こうもチャンスを伺っていたのだろう。
これもまた快適そうに脱皮を遂げて、誇らしげにカサカサと動いていた。
2匹目も同じように机の上で待っていたが、1匹目同様私の不在時を狙って成虫に変化していた。
 
見るのも苦手だったのに、成長の過程をこれでもかと見せつけられて、いつしか私はカブトムシに夢中になっていた。
 
今年もまた夏が来る。
今も玄関にはバケツいっぱいに元気なブニョブニョした幼虫が静かに過ごしている。
今年はどんな関係を彼らと過ごすことになるのだろうか。
今からとてもワクワクしている。
 
 
 
 
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2020-01-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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