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メディアグランプリ

“つまらない”は、自分探しの旅へのチケット


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:浦部光俊(ライティングゼミ特講コース)
 
 
「そんなこと言われたって、つまんないものはつまんない」 8歳の娘は、そう言って拗ねてしまった。
 
布団に入った娘と“ディア ガールズ”という絵本を一緒に読んでいた時のことだ。
 
「髪が長くたって、短くたって、みんな違うからきれい」
「嫌いなものは、はっきりと嫌いといったっていい」
 
成長する女の子がぶつかる悩み。“ディア ガールズ”はそんな悩める女の子への応援メッセージをシンプルな言葉で綴った絵本。
 
「お父さん、これはどういう意味?」
「それはね」
 
なんて会話をしながら読み進めていたのだが、あるメッセージに差し掛かった時、娘の顔色がスーっとひいた感じがした。絵本に目を移すと、そこには、
 
「つまらないとずっと言っていることが一番つまらない」 と書かれていた。
 
ちょうどその日の昼間の出来後だ。
「こんな場所、つまんない。早く帰りたい」 最近、出掛けるたびに繰り返す娘に対して、つい感情的になってしまった。
「そんなことばっかり言ってると、もうどこにも出かけないよ」 きつい言葉をぶつけてしまったばかり。娘は、納得いかないという表情を浮かべ黙ったままだった。
 
2人の間に気まずい空気が流れた。
 
これは深い入りせずさくっと流そうかな、内心、そう思ったのだが、思い直す。あんな言葉、いつまでも繰り返されたらたまらない、ここはちゃんと理解してもらおう。
 
「今日みたいに、つまんないって言っていると本当につまんなくなっちゃうんだね。これからはどうやったら楽しめるか、考えるようにしてみよう」
 
と言った途端、冒頭のセリフだ。「つまんないものは、つまんないの!」 プイっ、そっぽを向いた娘はふて寝してしまった。
 
大事なことを伝えようとしている言葉なんだけどな。どうしたらわかってもらえるんだろう。考えてみても答えは出ない。
 
「まだ早かったのかな……」
 
そう、確かにまだ早すぎたんだろう。僕の娘は8歳。しばらく前までは、親が与えるものなら何でも楽しんでいたが、最近は、親と出かけるよりも、友達と遊ぶほうがおもしろいだとか、おもしろい本は自分で見つけられるといったことに気づき始めてきた。自分の好み・趣味が確立しつつあるのは確かだ。
 
ただ、そういった自分の世界の存在に彼女自身が自覚的かというと、その辺りはまだまだ曖昧だ。ほとんど時間、彼女は、親(=世間)から与えられた世の中に生きていて、本当の彼女(=自分の世界に生きている彼女)が姿をみせる時間はまだまだ限られている。そんな彼女にとって、世の中はまだまだ与えられたもの。つまらないものは、つまらない、のだ。そこには良いも悪いもない。単に事実を述べたに過ぎないんだろう。
 
「つまらないとずっと言っていることが一番つまらない」
 
これが本当に伝えたいのは、つまらないなんて言ってないで、おもしろいこと見つけてみよう。そうしたら、なんでも楽しめるよ。世の中、自分次第で変わるんだという応援メッセージのはずだ。ただその真のメッセージを受け入れるには、彼女自身の世界はまだまだ未完成なのだ。
 
「心配しなくても、そのうちわかるようになる。まだ少し早かっただけだ」 確かにその通りなんだろう。この先、様々な経験を積んでいき、彼女の世界が確立していくにつれて、理解も深まっていく。
 
ただ、その言葉だけでは気持ちの整理がつかないもう一人の自分がいる。「つまらない、つまらない」 そう繰り返す彼女は、僕に何かを伝えようしているじゃないんだろうか。目を閉じて、今まで彼女と過ごした時間を思い浮かべてみる。
 
ちょっと前までは無邪気になんでも楽しんでいた。その彼女が、自分の世界を持ち始め、変わりつつある。新しい道を歩み始めるんだな、そんな風に思ったとき、彼女の姿が、今まさに出発しようとする旅人とダブって見えた。
 
「そうか」 奇妙な納得感に包まれた。彼女は旅立ちの時を迎えたんだ。今まさに自分探しの旅に出発するところなんだ。
 
「いってきます」 不意にそんな声が聞こえてきた。もう一度、耳を澄ます。
「お父さん、お母さん、行ってきます! 私、今から出かけるからね。自分で面白いものさがしにいってくるね」 今度はそう言っている気がした。
 
「そうか」 彼女は、ずっと僕たちに伝えていたんだ。つまんない、つまんないというのは、彼女が自分探しの旅のチケットを手に入れたというサイン。今から、行ってきますって、教えてくれていたんだ。
 
「今、伝えないと」 早すぎることなんてない。今、急にそんな気がしてきた。旅立つ彼女に僕が一番伝いこと、それは、人生には、自分の力で変えられることがたくさんあるってことだ。
 
「つまんない」 彼女は今日も繰り返す。僕はまた言ってしまう。不機嫌になったっていい。いつか思い出してくれたらそれでいい。つまんない、つまんないって言っているのが一番つまんないんだよと。
 
 
 
 
***
 
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 

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2020-01-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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