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メディアグランプリ

■文章は人を動かす。仕事を辞めたいと言った妻を救った代筆人


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:バロン(ライティング・ゼミ特講)
 
 
仕事に行く時間になるとお腹が痛くなる……。
 
妻が新しい職場に勤めることになったときの話だ。
その支店では、新たに女性の事務職員を配置することとなった。
男性職員数6人の小さな支店で、事務担当としてパート採用された。
 
そこには、やっかいな人間がいた。
 
それは課長だ。
自分はいかに優秀であるかということを常に言い、承認を求めてくる人。
感情の起伏が激しい人。
話しかけにくい雰囲気をもっている人。
部下がいなくなると、その人への不平不満ばかりを言っている人。
もしかしたら、あなたの職場にもこんな人間がいるのかもしれない。
課長はこれらに当てはまる人物だった。
 
そんな人間がいたため、妻は職場に行くことが嫌になっていた。
寝つきが悪くなり、朝になると憂鬱感で体が重い。
仕事に行く時間になると、お腹が痛くなる。
こんな状態が2カ月ほど続いた。
妻は、その職場を辞めようと何度も思っていた。
 
ある日、「調書」を提出する機会があった。
この調書は、年1回、仕事の内容や分量、職場環境など、自分が気づいたことなどを記入するものだ。
 
私は、妻の現状を変えるためには、この調書を使うしかないと考えた。
私が代筆人となり、妻の思いを代筆して調書を作成し、職場環境と人間関係の改善に協力しようと思った。
 
まず、妻から聞き取りを始めた。
今まで我慢してきたこと、改善してほしいことなどを話してもらった。妻の口からは、まるで噴水から水が噴き出すかのように、留まることなく言葉が出てきたのだ。
 
聞き取りは、1時間近く経過した。
素材がそろった。代筆人の仕事は、思いや言葉を文章に変えることだ。
 
例えば、昼食休憩について。
小さな事務所内での昼食は、常に男性の目にさらされている。
そんな環境では、リラックスできない。
しかも、昼食中も常に電話対応を強いられている。
これでは、オンオフのメリハリをつけることができない。
そこで、物置になっている小部屋を片付けて、女性用の休憩所を作ることを提案内容として書いた。
 
例えば、トイレの利用方法について。
その支店は、男女共同利用のトイレだ。
便器についた汚れは最低限、自分で拭いてもらいたいということを書いた。
 
もう一つ書いたことがあった。
それは、課長について。
 
課長は管理職である。
本来、管理職の仕事は、部下が能力を発揮できるようにマネジメントを優先しなければならない立場であるということ。
また、感情の浮き沈みが激しく話しかけにくい。安定した感情を保っていただきたい、ということも記述した。
 
ある程度、原稿ができあがった。
しかし、一点、再考することがあった。
それは課長についての部分である。
 
こちらとしては、人間関係を良好にするつもりで作成した。
しかし、人はいきなり欠点をつかれると、保守反応がはじまる。
自分は間違っていない、という思考ブロックを固めることにつながる。そうなると、こちらが望むような結果には結びつかないと思った。
 
そこで、2種類の調書を作成した。
一つは職場環境のみについて記述したもの。
もう一つは、課長に対する要望を追加したものだった。
 
再考の結果、一つ目の職場環境についてのみ記述した調書を提出することにした。
しかも、本来の調書とは別に、A4で2枚分の用紙にぎっしりと書いたものを添付し、割り印まで添えて用意した。
 
ところが、すぐに提出できなかった。
本当にこんな調書を提出してよいか、考える時間を要した。
数週間迷った末、提出する日を迎えた。
 
妻は、勤務時間終了後、課長に調書を提出してすぐに帰宅。
しかし、その日に限って、職場のカギを持ち帰るのを忘れてしまった。カギがなければ、朝イチで職場に入ることができない。
 
そのため、一度、職場から出てきたのだが、再び戻ることにした。
事務所に戻ると、他の職員は、「お疲れ様」などの声をかけてくれたが、課長だけは、顔を上げず、私が提出した調書を食い入るように見ていた。その姿がとても印象的だった。
 
そして、妻は2日後、職場に出勤。
 
すると……
 
世界が変わっていた。
 
一番苦痛だった課長の表情が、変わっていた。
笑顔になっていたのだ。
今まで、決して、世間話などをしてこなかったのに、この日からは、課長から声をかけてくるようになった。
それは、なぜか分からない。
課長のことを書いた調書は提出していないのに……
休憩室やトイレ等の要望事項も、できることから改善していくと言ってくれた。
 
私は、この話を妻から聞いた瞬間、
もしかしたら、調書に添付した別紙の内容、文字数、そして割り印まで押して提出した本気度が伝わったのかもしれない……。
 
文章の力で人を動かすことができたことに喜びを感じた。
 
伝えたいことを直接、口に出して言えないことがある。
どんな言葉で表現してよいか分からず、詰まることもある。
 
そんなときは、文章の力を使って伝えるのが最適である。
 
代筆人は料理人である。
口からでてきた「言葉」という素材を調理して、「人を動かす文章」という料理を作るからだ。
 
そして、代筆人は迷った人の行動に、背中を押す役割があるのかもしれない。
せっかく「調書」まで作ったのだから……と。
 
今では、妻はイキイキと職場に行っている。
ストレスも、入社当時からは激減し、テキパキと業務をこなす。
伝票の処理、見積書の作成など、職場では頼られる存在になっている。
本来もっているパフォーマンスを発揮することができているようだ。
 
そして、もう一つの提出しなかった調書は、いつも机の中にしまっている。
人の心は、常に変わりやすい。
何かあれば、いつでも提出できる準備をしているのだった。
 
 
 
 
***
 
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2020-01-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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