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セルフではないガソリンスタンドに行く理由


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:ゆうき かのん(ライティング・ゼミ平日コース)
 
「今月も状況は厳しいです。経費削減に努めて下さい。」
 
経理を担っている私は、そのように言う。
領収書を見る度に、本当に必要なものなのか?
接待交際費が極端に多くないか?
 
消費税が増税されたことにより、更に注意深く領収書の内容を見るようになった。
 
営業部門の時は、経理の言っていることが、細かくて面倒だと思っていたが、
いざ経理や総務を担当することになると、見方が変わるものだ。
費用対効果はあるのだろうかと、営業に確認する事もしばしばある。
 
経費削減と精算方法の簡略化の為に導入したものの一つに、ガソリンの法人カードがある。
ある一社のガソリンスタンドのみ使用できるカードで、単価も値引きがあり、法人での一括清算が可能なものだ。
 
このカードを導入する前は、贔屓にしているガソリンスタンドがあった。
よくプライベートの話をしたり、サービスで掃除をしてくれたりする、顔なじみのスタッフさんが何人もいる場所だった。
 
しかしカードを導入すると、そのカードを使用しないで欲しいというのである。
使用できる会社ではあったものの、値引き率が合わないらしい。
 
そこは、都内の中心部にあり、大通りから一本入った場所に店を構えている。
道幅が狭い関係で、大型のタンクローリーでガソリンを運搬する事が出来ず、その影響も加わり、単価が高いガソリンスタンドとなっている。
 
カードを使用すると、コストに見合わないからという理由から、断りがあったのだ。
 
少しでも経費を抑えたいと思い、社員にはなるべく他のスタンドで給油するように伝えており、私自身もそのようにしていた。
 
我が家の近所にあるガソリンスタンドは、比較的広く、またポイントカードや、LINE会員の特典、レディースや子連れだと色々なサービスを受けることが出来て、専らそこで給油をしている。
ただし、ここは『セルフ』である。
最近はセルフスタンドの看板をよく見かける。
そして、セルフの方が単価は安い。
 
品質も変わらない同じガソリンであるなら、少しでも安い方が助かる。
 
ただセルフだと、窓拭きが無いのが残念だ。
ウォッシャー液をかけた後、ワイパーが届かなかった部分が跡になって残っているのが気になる。
 
我が家の車はワンボックスカーの為、タイヤに足を掛けたりしないと届かないのである。
背が低い私には、この窓拭きが大変な作業となり、諦めることもしばしばある。
 
少し前の事。
お世話になっていたガソリンスタンドの前を通った時、スタッフの方が私に気付き、声を掛けてくれた。
 
「最近来てくれないじゃない!」
「お子さん大きくなったでしょ!毎日通勤大変だね」
「今度車持っておいで!綺麗にしてあげるから!」
 
申し訳ない気持ちで一杯になった。
あんなにお世話になっていたのに、急に行かなくなってしまった事が……
単価が高いからという理由だけで、社用車も一斉に利用しなくなってしまったのだから。
しかもその指示をしているのは紛れもなく、この私である。
 
ちょうど車内の清掃がしたかったのと、何より私の心が痛かった事もあり、久し振りにお世話になると決め、後日お世話になる事を約束した。
 
車を預ける日、いつものスタッフさんが、にこやかに私を待ち構えてくれていた。
 
「おはよう!」
「今日も朝からご苦労様!車ちゃんと綺麗にしておくからね!!」
 
その温かい言葉が嬉しかった。
 
でも次に出てきた言葉に驚いた!
「このタイヤまずいよ!バーストするのも時間の問題だよ!!」
 
えっ!どういう事?
このまま乗り続けていたら、バーストしてしまうの??
 
そう、購入してから車検を一度通したが、冬場はスタッドレスに交換するものの、一度も交換したことが無かったのだ。
毎日乗るようになってから二年近くなり、走行距離も6万kmを超えているので、タイヤが悲鳴を上げるのも分からなくはない。
 
もし、このまま乗り続けて高速道路を運転中にバーストしてしまったらどうしたら良いのだろう??
子供たちを乗せて運転している最中に何かあったら、間違いなくパニックになるだろう……
 
車を預けた後、頭の中ではそればかり考えていた。
 
『セルフ』スタンドは、価格が安いというメリットは大きい。
ガソリンスタンドの一番の目的は、給油をする事であり、
それ以外の物は不要な事なのかもしない。
 
しかし、今回のように危ない状況を指摘してくれることは無い。
近況を話す事も、情報を得たりする事なども勿論無い。
 
目的が達成されれば、それで良いのだろうか?
コスト削減という事で、人が携わっていた仕事が、どんどん無くなっていって良いのだろうか?
 
セルフや機械化する事を否定はするつもりは、全くない。
むしろセルフは必要であるとも思う。
 
ただ、『人』がやる仕事は、温かさがある。人情がある。
その他にも『人』だからこそ出来ることはあるはずだ。
 
こなすだけの仕事をしているようだったら、その仕事は機械に負けてしまうのかもしれない。
「この人だからお願いしたい!」
そう思ってもらえるような、人間性も高めていかなければならないのだと思う。
そうやって常連の顧客が付くのかもしれない。
 
このガソリンスタンドもセルフの波に飲み込まれずに、生き残って欲しい!!
スタッフさんの心温まる接客を受けたいし、車の状況も見て欲しいから!
 
そして、私自身も機械に負けないような『人』になろうと思う。
 
 
 
 
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2020-01-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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