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感染線胃腸炎にかかったら


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:谷口季代子(ライティング・ゼミ特講)
 
 
5年前の冬に、私は救急車で近くの鈴木病院に運ばれた。
脱水症状が進んで、危険な状態になったから。
脱水が進むと、なぜか手の指がグーで固まる。開こうにも自分の意志で指を開けない。そうなると救急車を呼ぼうにも、携帯電話を握ることも出来ない。
「死ぬかもしれない」と思っていたとき、たまたま夫が早く帰ってきて助かった。
あと数時間遅く帰ってきたら……と思うと恐ろしい。すでに意識が混濁し始めていたから。
 
当時2歳の長男が、ノロウィルスなどで知られる「感染性胃腸炎」にかかった。
夜中に嘔吐があり、その後下痢が頻繁に出た。
その前の冬にも感染していたから、どうすればいいのかは分かっていた。
吐瀉物や下痢には、感染性胃腸炎のウィルスが含まれている。
そのウィルスは経口で感染し、通常のアルコール消毒薬では死滅しない。だから以下の対策を取る。
以下、東京都福祉保健局の資料「防ごうノロウィルス感染」抜粋
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/pamphlet2/files/noro_tomin27.pdf
① 直接触れない。使い捨てのゴム手袋を使用する(使い捨てでない場合は、消毒する必要があり不便)
② 汚れたシーツや衣服は、捨てても良いなら躊躇せずに捨てる。洗うなら、塩素系の消毒薬(0.02%以上)の濃度で殺菌する。かなり色落ちするが仕方ない。
③ 床も同様に、消毒薬(0.1%)で拭き取って自然乾燥させる。塩素の匂いが部屋に充満するので、換気を良くする。
④ 掃除に使ったふきんや手袋は速やかに捨てる。汚れ物がゴミ袋の中で乾燥すると、ウィルスが空気に浮遊する可能性があるので、しっかりとゴミ袋の口を閉じる
⑤ 下痢が止まってもしばらくは便からウィルスが放出される。おむつの処理は使い捨てゴム手袋で行う。
 
これら対策を取るには、冒頭の「使い捨てゴム手袋」「塩素系消毒薬」「大きなゴミ袋」が、家に準備されてないといけない。なぜなら、子どもの感染性胃腸炎は、何の前触れもなく起こるから。
夜中に突然吐き出したとき、家に準備がないと、世話をする大人が感染するリスクが高まるのだ。
 
長男が吐き出して、いつもどおり対策をしたはずだった。
でも、そのときは0歳4ヶ月の長女も抱えていた。そのせいか、対策にモレがあったようだ。長女も感染した。ミルクを吐き出し、下痢を始めた。
なんと、ダブル看護だ。
嘔吐から下痢がとまるまでは、だいたい3日程度かかる。
ウィルスとの3日間戦争の始まりだ。
ものすごいプレッシャーだ。いつ自分も感染するかもしれないのだから。
 
幼児と赤ちゃんのダブル看護は、本当に大変だ。二人とも、大人のようにトイレで吐くということが出来ない。吐きたくなったらその場で吐く。反対に下痢はオムツがキャッチしてくれるが、大量のときはキャッチしきれないこともある。
一日中、掃除・消毒・おむつ替えに追われた。
昼になると長男が回復してきた。すると、回復した長男の遊び相手というタスクも加わった。
これが曲者だった。
看護中の掃除・消毒・おむつ替え、食事・ミルクのタスクは、一つ一つ注意深くやる必要がある。なぜなら、確実に作業しないとウィルス混入のリスクが高まるからだ。
「遊び相手」というタスクが加わったことにより、注意力が落ちた。何かの作業が散漫になってしまい、そのスキにウィルスが私の体内に入り込んだのだ。
翌日の昼が過ぎて、何だか胃の辺りが重い。嫌な予感だ。
しばらくして、強烈な吐き気に襲われた。吐いては、経口補水液を口にする。
暗くなってくる頃、腹痛と下痢が始まった。
あまりの腹痛に床でのたうち回っていると、2歳の長男が「かあちゃん、なにしてるの?」と無邪気に乗っかってくる。
説明したり振り払ったりする元気は、もはやない。
「ヤバい。私も感染した」と夫にメールを打った後、嘔吐と下痢が劇症化してきた。
子どもたちが泣こうが喚こうが、何もできない。トイレに座りながらバケツに吐いた。
だんだん脱水が始まったのか、頭が痛み、手の指が強張ってきた。
救急車を呼んだらいいのかもしれない、と思い始めたときは、時すでに遅し。脱水症状が進んで手がグーに固まり、自分の意志では開かなくなった。そして、体中の力が抜けてトイレに座っていることさえ出来なくなった。私はトイレの床に横たわり「死ぬかもしれない」と思い始めたのだった。
その後は冒頭のとおり、夫が18時半ころ帰ってきてくれた。病院に運ばれ点滴を打ち、翌日には退院できたのだった。
対策グッズを用意して、対応の心得もあったのにこの始末だ。
何もなかったらと思うと、本当に恐ろしい。一家共倒れは免れない。
 
私が鈴木病院で手当を受けていたその夜、夫は一人でダブル看護を引き受けていた。
夫も昨年の長男の看護を経験していたから、相応の心得はあったが、同時に4ヶ月の長女の夜泣きと下痢に付き合わなければならなかった。
「いやホント、試されてるって思ったよね」
ひと晩の試練を乗り越えた夫は、ホッとした表情でそう言った。
「今となっちゃ笑い話だけど、あの晩から、僕一人でも二人の世話が出来るって自信になったかな」
あまりおすすめできない方法だが、夫は強制的にイクメンになった。
 
あれから5年経って、子どもたちは二人とも強くなり、毎年の感染はなくなった。
でも油断すると、ウィルスはどこからともなく入ってくる。
我が家は今年も、使い捨てゴム手袋、塩素系消毒液、大きなゴミ袋を用意済み。
ご家庭に小さな子どもがいるみなさま、感染性胃腸炎の対策をどうぞ万全に!
 
 
 
 
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2020-01-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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