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お正月の休日診療所

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【2月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:平山いずみ(ライティング・ゼミ特講)
 
 
長男が熱をだした。38.9度。
しかも大晦日の夜に。
もう13歳だし、市販の解熱剤飲ませて一晩寝れば、きっと朝には治っているに違いない。
あまり心配してなかった。
 
だが、翌日39度オーバー。
インフルエンザを疑う。
せっかく安くないお金払って、予防接種受けたのに。
だからインフルエンザの予防接種は信用できない。
……そうブツブツと頭の中で呟きながら、今日の休日担当医に電話をした。
 
「おいくつですか?」と年齢を聞かれた。
「13歳です」と答えると、「子供は診られませんので、総合病院へ行ってください」と言われた。
なんのための『休日担当』医なんだ。
またもブツブツ呟きながら、紹介された総合病院へ電話をする。
病状と年齢を伝えると、今度は「小児科医がいますので、来てもらって大丈夫です」と言ってくれた。
「ありがとうございます!」なんてよそ行きの声で言いつつ「でもさ、ダメですって言われたらどうしたらいいのよね……」と思った。
 
まぁ、とにもかくにもすべきことが決まったので、混む前にと、長男を連れて隣町の総合病院まで車を走らせた。
 
だが、入り口が封鎖されてる。
「救急の方へ」って書いてある。
救急はどっちだ?
不親切な地図見ると、どうやら、ぐるっとこの大きな病院を回り込まなくてはいけないようだ……
辛そうな息子を連れ回す。
40度近い熱があるのに……
「ごめんね。もう少し頑張ってね」
そう、声をかける。
 
受付をしたら、さらに歩いて二階まで行くよう言われた。
我慢強い長男は、文句も言わず息だけ荒く、私の後についてくる。
文句を言う元気もないのかもしれない。
 
小児科へ着き、熱を測り、高熱なので別の待合室へ行くよう指示された。
その待合室には、高熱の子供達と、それにつきそう親がすでに10組くらい待機していた。
 
長男は倒れこむように座った。
最近は甘えることも、もうすっかり無くなっていたのに、この時ばかりは私の膝を枕に体を倒した。
大きくなったなぁ……と長男の頭を撫でながら思う。
 
そんな時、少し離れたところにいた女の子が大きな声で泣き出した。
3歳くらいだろうか。
「おなかいたいーーー ママ抱っこしてーー」と泣いている。
ふと見ると、その子は床にしゃがみこんで両腕をお母さんに向かって高く掲げていた。
 
そのお母さんは……抱っこ紐で赤ちゃんを抱いていた。
お父さんやおばあちゃんの姿はない。
お母さんが一人で、二人を連れて来ていたのだ。
一人で二人は抱っこできない。
そして傍らには子供二人分の大きな荷物。
 
抱っこしてほしいよね。
抱っこ、してあげられなくてごめんね。
ここまでよく頑張ってきたね。
おうち帰ったら、ぎゅーーってして一緒に寝ようね。
だから、もう少し頑張ってね。
 
そのお母さんはそう言いながら、おなかが痛いと言って泣くお姉ちゃんを撫でていた。
 
お正月なのに。
彼女は傍らに赤ちゃんを抱きながら、私と同じように、病院に電話をかけ、あの大きな荷物を持って、痛がって泣くお姉ちゃんの手を引き、あのぐるっと遠い救急の入り口まで来たはずだ。
食い込む抱っこ紐。
お姉ちゃんの泣く声が、心を締め付ける。
ごめんね。ごめんね。と繰り返すお母さん。
 
私は、そんなお母さんの方をぎゅーーってしてあげたくなった。
きっと泣きたいのは、お母さんだって一緒なのだ。
 
私もそんな時があったな……
どうしても仕事が休めなくて、まだ1歳にならない次男を、39度近くあるのに、病児保育に預けたり。
長男が3歳の頃、風邪をこじらせて点滴を打っている間、まだ小さな彼を病院に一人置いて、その間に次男を違う病院へ連れて行かなくてはいけなかったり。
次男が頭を打って意識を失った時、震えながら救急に電話したり。
 
その時は必死だったから、辛いとか苦しいとか何も感じていなかった。
ただその場を乗り切ることで精一杯だった。
でも、子供達の苦しそうな顔、涙が頬をつたう寝顔は、今でも鮮明に覚えている。
 
そしてその時、私もすごく不安で、自分の無力さが子供に申し訳なくて……心で泣いていた。
ただ誰かあと一人でいいから助けてくれる人がいたら……と何度思ったか。
 
こういうと、育児に協力的でないけしからん旦那なのかと言われそうだが、そうではない。
主人も実家の家族もこころよく協力してくれる。
だけど、実家は遠かったし、なぜか主人がいない日に限って、こういうことって起こる。
 
母親には、どうしようもなくて、一人でなんとかしなきゃいけない日の方がずっとずっと多いのだ。
 
病院だけじゃない。
街角で、お店で、電車の中で……
もちろん、自分の子供をちゃんと見ていない親もいるかもしれないが、ほとんどのお母さんは、周りに迷惑をかけまいとびくびくしている。
 
泣いている子供を抱くお母さんもまた、泣きたい気持ちなのだ。
 
おなかが痛かったお姉ちゃんは、お医者さんにも「頑張ったね」と褒められ、最後はにっこりとして帰っていった。
きっとあのお母さんは、家に帰って、薬を飲ませ、ぎゅーってしながら一緒に寝て、ようやく落ちついて眠りについたその子を撫でながら、そこで初めてほっとするのだろう。
一緒に赤ちゃんも寝てくれて、ゆっくり一杯の温かいお茶を飲める時間がありますように……
 
ちなみに、うちの長男はインフルエンザは陰性だったが、なんと高熱は5日間続いた。
新年早々引きこもりで、初詣にも行けなかったが、自分でトイレに行き、熱を測り、薬を飲み、ベッドに入る彼を見て、あの必死だった子育て期間も、たった数年のことだったのだと気づく。
 
たった数年。されど渦中にいるときは、それが永遠に感じるものだ。
健気で愛おしいお母さん達に、寄り添える私でありたい。
 
 
 
 
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2020-01-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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