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胃弱の中高年は、いますぐ五島うどんを食べたほうがいい


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記事:いづやん(スピード・ライティングゼミ)
 
 
うどんが好きだ。
 
今まで「出されたら食べる」という位置づけだったうどんも、一時期の讃岐うどんブームに乗って、「わざわざ食べるもの」に昇格したのだった。
 
本場の香川で何軒か回ったこともあるし、都内でも「うまい」と評判を聞くと、友人と連れ立って行ったりもした。
 
あの独特のコシは、やはり美味いものだ。
 
だが、そんな讃岐うどんとの蜜月も、終わりを告げる時が来る。
 
「なんだか、もたれるんだよなあ」
 
そんなことを、食べた後に毎回感じるようになってきたのだ。
 
元から胃弱だった僕は、歳を重ねるごとにさらに胃の働きが悪くなり、うどんさえも胃もたれするようになってきた。愛すべき讃岐うどんの「コシ」が、消化に悪いのは想像にかたくなかった。
 
あの店の生醤油をかけたざるうどんが食べたい、と思っても、「水で締めたうどんはコシが強すぎるからなあ」と気後れし、あっちの店の明太子釜玉うどんを食べたいと思っても、「見た目以上に重いから」と、躊躇してしまう。
 
週に一度以上の讃岐うどんが、二週間に一度、気がつけば一ヶ月も食べない、というようになっていった。気持ち的にはうどんを食べたいが、体が乗り気じゃない。
 
そんな時に出会ったのが、旅先で食べた「五島うどん」だった。
 
その名の通り、長崎県は五島列島で作られ食される五島うどんは、ぱっと見はひやむぎのような細さのうどんだ。ものの見方によっては日本三大うどんに数えられるらしい。
 
僕が五島列島の最大の島、福江島で食べた生まれて初めての五島うどんは、あご(トビウオ)出汁ベースの汁がかかったかけうどんだったが、その素朴な味わいを今でも覚えている。
 
麺は細くて頼りなさげにどんぶりの中でたゆたっているのに、いざ箸ですくうとしっかりと主張するコシの強さ。五島名産の椿油が練り込まれているから出るコシだそうだ。
 
数本をまとめて口の中にすすり込むと、確かに弾力はあるがするっと入ってしまうしなやかな歯ごたえ。
 
気がつくと、あっという間に食べ終わっていた。
 
こんなに細いのにコシも感じられて、でもすんなり食べられて、小麦の風味もいい。何より、胃もたれしなかった。
 
僕はこの出会い以来、すっかり五島うどんに魅せられて、島を離れる時には乾麺の五島うどんを数束買って帰り、自宅で茹でては楽しんでいた。
 
「前に食べたのはかけうどんだけだったな。地元の人が楽しむ食べ方は他にないんだろうか」
 
色々アレンジはしていたものの、本場での食べ方をよく分かっていなかったから、果たして本当に五島うどんの美味しさを引き出せているのか、疑問だったのだ。
 
そんなある時、都内で五島の食材・料理を出すお店で飲む機会があった。
 
締めは「地獄炊き」と呼ばれるもの。
 
名前はおどろおどろしいが、鍋で沸騰するお湯で五島うどんを茹で続ける。溶いた生卵にあご出汁を垂らして、鍋から少しすくったうどんをそこにくぐらせて食べるという、至ってシンプルな食べ方だった。
 
だが、これが抜群に美味かった。
 
ぐらぐら沸くお湯からすくわれた五島うどんが、生卵に絡むとほんの少し半熟状になり麺によく絡む。それを一気にすすると卵と出汁の甘みが口の中に広がって、ひとかみごとにうどんの奥ゆかしいコシと塩気がそれに続く。
 
麺の細さと軽さもあって、飲みの後の締めとして出されても、するする食べてしまう。
 
細いのにコシがあってのびづらい五島うどんだからこそできる、この食べ方。太いうどんだと沸騰した鍋から直接すくってすぐに口の中へは、熱くて無理だろう。
 
この「地獄炊き」という食べ方を知って以来、僕はさらに五島うどんに魅せられた。
 
自分の家でも再現しようと思って買いに行くものの、この五島うどん、関東の普通のスーパーに売っていた試しがない。
 
やっぱりこちらでは馴染みがないからだろう。長崎県の物産のお店に行けば、もちろん売っている。通販でも買えるが、僕は日常的に置いてほしいのだ。
 
「以前店に置いたけど売れなかった」という仕入れ担当がいたなら、物申したい。
 
「実演販売で、地獄炊きをしてくれ」と。
 
熱々の五島うどんを、生卵とあご出汁にくぐらせるという簡単なのに美味しい食べ方を体験してくれさえすれば、五島うどんは売れる。間違いない。
 
なんなら僕がサクラをやってもいい。いくらでも美味そうに食べてやろう。
 
ついでに、麺が細いのでいくらでもアレンジが効くことをアピールしよう。お休みの日のお昼に悩むお母さんに、いつもと違うソリューションを提供だ。
 
かけうどんやざるうどん、地獄炊きに飽きたら、ジェノベーゼソースを使ってパスタ風にしてもいい。カルボナーラも讃岐うどんで作るより遥かに麺の主張が少ない分、味が馴染みやすい。
 
ちょっとやそっとではのびないので、具だくさんスープ麺なんかも楽しめる。子供にウケるし、金曜日の夜に飲みすぎて胃が疲れ気味の、僕のようなお父さんにもオススメだ。
 
こんなにも素敵なうどんは、もっとスーパーに普通に置かれるべきなのだ。
 
だが、こんなにも素晴らしい五島うどんにもひとつ問題がある。
 
確かに讃岐うどんに比べて胃もたれはしない五島うどんだが、地獄炊きで出されると美味すぎてうっかりたくさん食べてしまうので、結局はもたれてしまうのだ。これだけは、いかんともしがたい。
 
 
 
 
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2020-01-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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