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メディアグランプリ

メンヘラは別に「誰かに救われたい」わけじゃないんだよ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:かのこ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「彼氏公認でマッチングアプリ始めた!」
 
……意味がわからない、と思ったそこのあなた。あなたの感覚はきっと正しい。
 
わたしの元にこのLINEが飛び込んできたのは、つい2週間前である。共通の趣味で知り合った仲良し5人組のグループがあり、そこで来月の遊びの予定を企てていたところだった。およそ半年ぶりの再会だから、みんな積もる話のひとつやふたつはあるだろう。わたしもとっておきのネタを用意して女子会に臨むつもりで、何を話そうかな、とウキウキしていたのだけれど。
 
彼氏公認で、マッチングアプリ、始めた。
 
友人Sちゃんが投下したのはもはや爆弾に近く、案の定、グループLINEはその後大いに盛り上がった。女子会に繰り出すまでもなく、あまりのキラーワードに全員が心をノックアウトされてしまったのである。だって、彼氏公認でマッチングアプリを始めたんですよ? 一体何がどうしてそんな話になるんだ。
 
Sちゃんの話を根掘り葉掘り聞いてみたけれど、「彼氏公認でマッチングアプリ始めた」以上も以下もなかった。彼氏と喧嘩したわけでもなければ、彼氏を乗り換えたくて始めたわけでもないらしい。しかも「お互い公認なんだよね~彼氏もやってんだ」ときた。
 
一体なんだ、なんなんだ?
あんたたちは一体何がしたくて、マッチングアプリを始めたんだ???
 
「何それ」「ウケる」という友人たちに連ねて、わたしも「マッチングアプリ涙目」とLINEを送ってみた。あっという間に全員分の既読がつき、当の本人が得意げに言う。
 
「聞いてくれ」「わたし爆モテ状態」
 
——わたしは、Sちゃんがメンヘラだということを知っている。
 
ここで取り上げる“メンヘラ”は、あくまで俗語である。元は「心に何かしらの問題を抱えている人」という定義だったらしいが、今では「かまってちゃん」「愛が重い人間」という意味で、幅広く知られている。本当に精神疾患を患っているかどうかは問題ではなく、それよか「人の気を引きたい」「誰かに愛されたい、愛しているという証拠が欲しい」と願う人間のことを指すようだ。
 
彼氏公認でマッチングアプリを始めたSちゃんは、いわば王道のメンヘラだった。かまってちゃんで愛が重くて、けれどとっても頭が良くて、めちゃくちゃに可愛い女の子である。わたしは彼女が自身を指して「メンヘラって呼んで~!」と言うので、面と向かって「メンヘラ」と呼んでいるけれど。
 
彼氏と同棲しているSちゃんは、同棲していてもなお、彼氏を信じきることはできなかった。
 
フォロワーがわたし1人の鍵アカウントで、Sちゃんはぽつぽつと状況を話してくれた。そもそも、彼に恋をした瞬間から、リアルタイムでつぶやいていたのだ。
 
長年付き合っている彼女がいた人に、恋をしてしまったこと。彼もおそらく自分を好いてくれていること。でも自分にとっても彼にとっても、あんまり良い付き合いにはならないだろうから、今度のデートで「実は他の人と付き合うことになったんだ」と嘘を吐こうとしていたこと。そうしたら、そのデートで、くだんの彼女とは別れた、付き合おうと言われたこと。何も言えなくなってしまって、頷いてしまったこと。1ヶ月後に同棲を始めたこと。
 
リアルタイムでふたりのすべてを追っていたわたしにとって、Sちゃんが彼氏とうまくいっていることは明らかだった。でも、Sちゃんが満たされていないことも、同時に明らかだったのである。
 
本当に彼はわたしのことを好きでいてくれているのかな。もしかして元カノにまだ未練があるんじゃないかな。元カノのことがまだ好きなくせに、わたしのことを好きだと言っているんじゃないのかな、だって元カノの写真消してくれないんだよ。
 
何度か相談されたことのあるわたしは、Sちゃんが満たされていることも、満たされていないことも、同時に知っていた。だからこそ、かかってきた電話は聞き流すことにしていた。「まーでも今だけっしょ」「大丈夫大丈夫」「泣いてもいいから彼氏にぶつけとき」と適当に返し続けたのだ。
 
数日経てば悩みをぶちまけてケロッとして、愛されトークに花咲かせるのがメンヘラなのだと知っていたから。
 
そう。メンヘラは別に「誰かに救われたい」わけじゃないのだ。
 
メンヘラはメンヘラを辞めたくない。
メンヘラをやめたいメンヘラは、いない。
 
冗談で言うことはあっても、本気でメンヘラから足を洗いたいとは思っていない。恋人に「メンヘラでごめん」と謝ったとしても、所詮は口だけ。許されることをわかっていて、敢えて、やっている。
 
メンヘラは、恋人に愛されていたいだけなのだ。自分の相談事に乗ってくれる友人を探しているわけではなく、「(勝手に)破局の危機→(誰かに)相談→(恋人に気持ちをぶつけて)仲直り」の流れを楽しんでいるだけなのである。事の発端からすべて自分で完結できるストーリーになっているので、友人の助言は一切必要ない。「相談」というフェーズは、第三者に確実にちやほやされるための、一種の麻薬でもあるのだ。
 
わたしも同様にメンヘラだから、わかる。
 
Sちゃんと彼氏の間では、公認マッチングアプリはお互いの絆を深めるためのツールなのだろう。Sちゃんはかなりモテているらしいけれど、イケメン彼氏も彼氏でおそらくめちゃくちゃモテているはずだ。お互い「今何人とやりとりしているか」を共有しあって、モテているけど実はすでに恋人と同棲しているという特別な蜜を味わいながら、互いが互いを束縛している現状を楽しんでいる。ただそれだけのことなのである。
 
愛の承認欲求を、目に見えるかたちで、恋人と共有すること。
これが精神安定にどれほど効果があるか、メンヘラでないあなたにも、わかってもらえるだろうか。
 
偉そうに言っているわたしはもちろん、なんなら冒頭のグループLINEに所属している5人組は、全員メンヘラなのである。誰もSちゃんに不要なアドバイスをしないし、彼女の状況を心から面白がっている。他人に余計なお節介をせずその状況を心から面白がること、これ以上に心地いい友情があるならば教えてほしい。
 
「誰かに救われたい」わけじゃないメンヘラの友情は、切っても切れるものではない。余計な口を挟まない友人にも、わたしたちは依存しているのである。
 
メンヘラは、案外、上手に生きているのだ。
 
 
 
 
***
 
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2020-01-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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