メディアグランプリ

説明できない病気に一筋の光


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記事:s.t(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
わたしは、昨年人生の折返し地点、40歳になった。身長168cm、体重53kg、お世辞にも男らしい身体とは言えない。むしろ痩せ気味体型だ。3歳から水泳を初めて、小中高校とバスケ、ボクシング・テニスなど常に身体を動かしてきた。社会人になってからもサーフィンを始め、週1は海へ通っていた。
 
一般的に、社会に出ると酒を覚えるから、とたんに腹がでてしまう人が多い。そういう友人を何人も見てきたから、比べて自分は太らないし、とても新陳代謝がいい体質なんだ。自分は健康的なんだ、そう思っていた32歳になるまでは。
 
「最近、便のとき血が出るんだよね」
「え、それまずいんじゃないの?病院行ったほうがいいって」
「そうかなぁ、でも父も姉も痔持ちだから、おれもとうとう来たのかって感じ。痛みはないし、大丈夫かなって」
「いや、絶対行ったほうがいいって……」
 
痔かもしれないことをカミングアウトするのはかっこ悪いから、誰にも話していなかった。たまたま大学の同期連中と飲みにいったときに、こう打ち明けたところ、みんなそれは良くないからすぐに病院に行ってこいと心配してくれた。
 
検査の結果、“潰瘍性大腸炎”であることがわかった。念の為に、読み方は「かいようせいだいちょうえん」と読む。いわゆる難病と呼ばれているもので、原因不明・治療法不明という厄介な病気だ。医療用語では特定疾患という。症状は胃潰瘍と似たようなものなのに、胃潰瘍は特定疾患に分類されてない。
 
「内視鏡検査の結果は、確実とは言わないですが、潰瘍性大腸炎だと認められる所見です」
 
検査を担当してくださった先生の、その断定しない言い方に、逆にこの病気の重さがズシンと響いた。ショックだった。まったく健康に不安がなかっただけに、消化することができず、なんというかリラックスとは別な感覚の、力が抜けたという表現が正しい。
 
特定疾患と宣告された32歳から8年が経過したが、症状はよくなったり、また悪くなったりを繰り返している。思えば32歳を境にして不可解な身体の異変がしばしば起こってきた。
 
34歳の時、夜も寝られないくらいの耳痛が起きた。翌日、耳鼻科にいくと、外傷もないのにそこまで痛くなることは私も経験がないと先生は言う。ぼくが潰瘍性大腸炎の疾患があることを告げると、
 
「不謹慎だけど、実に興味深い」と言われる始末だった。結局どうすれば?と尋ねると、「入院してください、飲み薬では痛み止めが耳まで届かないので、点滴で投与します」「なるほど、それはわかりました。で原因は?」「わかりません」と。そりゃ興味深いってわけだ……。“原因不明“な病を抱えているので、そりゃそうだよなって、諦めに似た納得をするようになっていた。
 
36歳の時、左手の人差し指と中指の第一関節が曲がらなくなってしまった。親指も力が入らず、パソコンのキーボードをタイプするのが困難になるくらいだった。インターネットで症状を検索すると、脳内の血流が関係している恐れがある、というのを見て、心配になってMRI検査をすることにした。
 
検査後、病院を訪れると、「異常は見当たりません」と。「でも力が入らないのは変ですよね?」「わたしの手を強く握ってください」「えいっ」「そうですね、まったく力がはいってないですね」「おかしいですよね?」「ん〜、わかりません」「え??」「おかしいかどうかわかりません」……。
 
そうか、医療つまり西洋医学ではわからないという答えは、別に特別なことではないのだ
もうわたしの中で、お医者さんの言うことが絶対ではなくなっていた。なぜなら明らかな身体の異変に対して「わからない」の出来事が、数回続いたからだ。
 
わたしは自分で調べることにした。まず、特定疾患とは西洋医学でしかそう呼ばないこと。東洋医学からすれば、出血も下痢も人間の身体が本能的に持つ、治そうとする力が働いて起こる身体の反応に過ぎない、ということだった。風邪で例えると、熱が出るのは発汗して体温を下げようという身体の良好な反応だということ。
 
このような身体の治癒反応に、風邪薬や消炎鎮痛剤で症状を和らげることは、誤魔化しているだけで、なんの解決にもいたってないということだった。事実、この8年の間、持病の症状は行ったり来たりしているだけだ。
 
かかりつけ医は、ぼくの西洋医学の対症療法を疑う疑問にこう答えた。
「この病気は再発させると次に改善させるのが困難になる傾向がある。なので、薬を飲み続けてください。副作用は少ないと言われていますから」
 
少ないと言われている!? そうかやはり副作用は少なからずあるわけだ。なぜそれをもっと早くに言ってくれなかったのか。
 
潰瘍性大腸炎の原因には、自律神経が大きく関わっていて、過度のストレスから避けることが完治に必須であると言われている。さらに、薬の服用は交感神経を緊張させ、自律神経を乱す行為だと、潰瘍性大腸炎の治療に熱心なごく一部の先生が提唱していることがわかった。
 
つまり、薬の服用=西洋医学の対症療法を続けることが、潰瘍性大腸炎を不治の病にしているというのだ。
 
悲観的になることはない。8年経ってわかったと思えばいい。このまま気づかなければ薬漬けの身体になってしまうところだった。今はとても前向きな気持ちでいっぱいだ。
 
なぜなら、治らないとあきらめていた持病が「完治できる」と少なくとも提唱している先生を見つけたからだ。
 
これまで「潰瘍性大腸炎は治らないから薬で抑える」の選択しかなかったところに、治る可能性があるという、頼れる選択肢が増えたのだから。提唱であっても難病と呼ばれる今の自分にはすごく明るい考え方だ。
 
 
 
 
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2020-01-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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