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「35歳が65歳に憧れて」

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:清水洋二(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「食事でもどう?」
 
先日とある65歳の経営者の方から食事に誘われた。
 
その方は私が働く店の常連さんで、眉毛の太さが特徴の素敵なおじいさん。いつも店に来るのは決まって3時ぐらいで、「いつものでよろしく!!」とホットコーヒーを注文され、1杯をぐいっと飲んで、世間話を30分ほどして帰っていかれる。
イチローほどではないが、それに近いにルーティーンだとなぁといつも感心している。
 
外見は65歳の割には若く見え、内面も何より話していて楽しく、勉強になることが多く、お客様として接するというよりも「素敵な人だなー」と憧れのように思いながらいつも対応している。
 
私が35歳ということで、息子のように思っているのかとても可愛がってくれていて、店の売り上げにとても貢献していただいている。ほんとうに感謝しかない、常連さんの一人である。
 
そんな方からの食事のお誘い。
 
もちろん断わる理由もなく、喜んで「是非、ご一緒させてください」と即答をし、その場で食事をする日程が決まった。
 
「65歳の方と食事なんて面倒じゃない?」なんて声が聞こえてきそそうだが、その時の私の感情は全くの逆で、素直に誘っていただいた嬉しさと、一緒に時間を過ごせることを純粋に楽しみに感じていた。
もちろんどの65歳の方に当てはまるわけでなく、この方だからこそなのでそこはしっかりと断っておく。
(ないとは思うが、この記事を読んでいる65歳からのお誘いが来た時の防御策である)
 
実は私、同世代と食事をするよりも年上の方(だいたい50歳以上)と食事するのが好きなのだ。
 
今でこそ店舗を運営する立場ではあるが、以前に働いていた会社がそれは年齢をお召しになられた方が多く、当初は私が会社の最年少ということもあり、年上である上司から大変可愛がられていた。60歳を超えている方も多く、週末になれば夜に食事をご馳走になり、スナックやラウンジと呼ばれる店なども教えてもらった。
 
そのように年を召された方は、若い方と食事をするだけで嬉しいらしく、横に居るだけで楽しそうな顔をされていたのが今でもはっきりと覚えている。気が回らないことで怒られることもなく、それよりもいつも口癖のように「付き合ってくれてありがとう」と感謝されていた。
 
「ただ、一緒に食事をするだけで感謝される」
 
そんな状態が心地悪いわけがなく、私はその居心地の良さにどっぷりはまり、会社員時代を過ごしていた。
 
そんな経験があるからこそ、私はこの65歳の方からのお誘いを嬉しく思い、久しぶりにあの居心地の良さを味わえるんだと楽しみにしていたのは、いわば当然のことである。
何より私の財力や経験では知るよしも無いお店に連れて行ってもらえるので、そんな経験をご馳走してもらいながら出来るって得しかないのではと常日頃思っている。
 
そして当日。
京都の木屋町という飲み屋街にある、京都らしい佇まいの小料理屋の暖簾をくぐり店に入っていく。入った瞬間からこの店は美味しい食事が出ると確信するようなお店。
 
そこで出てくる食事の美味しさを味わいながら、65歳の方との会話を楽しんでいく。
 
「人生は長い。焦らずゆっくり進みなさい」
「君はよく頑張っているから大丈夫」
 
そんな私が言って欲しい言葉。私が少し悩んでいたのを知っているかのように出る言葉の数々。何より65歳の方の人生経験に基づいての言葉の重みは全く違い、私は純粋に65歳の方の話に耳を傾ける。
 
居心地の良さもさることながら、65歳の方の話は私の胸にドンドン突き刺さり、まるで講演会に出ているような気分であった。(参加費も無料で、食事もご馳走してもらえる講演会なんてあるはずもないですが)
 
そんなこんなで65歳の方との食事は終わった。
 
やはり最初から想像していた通り、いや想像以上に65歳の方の魅力を感じることが出来た食事会。私が65歳の時にこんな素敵な人になっていたら良いなと心底思えるような方に出会えたことをとても嬉しく思った。
 
同世代だけで集まっていては決して得ることは出来ない経験。これからも私はこの65歳の方はもちろん、多くの年配の方と食事に行くことになるだろう。
 
居心地の良さと他では決して出来ない経験が出来ることを知っているから。一度知ると抜け出せない。
そんな65歳の魅力を知っている35歳は案外少ないかもしれない。
 
 
 
 
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2020-02-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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