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メディアグランプリ

煩悩クッキング ズボラ料理人、解決のスープ編


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【2月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:谷中田 千恵(スピード・ライティングゼミ)
 
一口に、料理と言っても、そのスタイルは様々だ。
 
産地直売所なんかで、素材を見てからメニューを決めるプロフェッショナルタイプもいれば、家族の好みに徹底的に寄り添う天使型料理人もいる。
 
とある友人は、お昼を過ぎると、夕食の献立が、天から降ってくるのだそう。
不意に、天を見上げて、「あっ、きた」なんて言っている彼女は、スピリチュアル型料理人だ。
 
別の友人は、1週間の献立を全て決めきってから、買い出しに出ると言う。買い出した材料は、1週間できれいに使い切る。全ては、計画通り。キッチンの隅から隅まで、手中に収め、全部をピタッと確定させてしまう。
未来確約型料理人とでも呼ばせていただくとしよう。
 
もちろんそれとは真逆、計画性のない料理人だって存在する。
作りたいメニューは、その日の思いつき。
材料は、レシピに合わせて買い込むが、余った食材のことまでは計算しない。
全ては、その日の気分任せ。冷蔵庫は、常に半端に残った、野菜と肉にあふれている。
先の展望をみることもなく、その場の刹那を楽しむズボラ料理人。
 
ああ、私のことだ。
 
先日も、TVで「下町のそば特集」を見てからどうしても天ぷらが頭から離れなくなった。
仕事が一区切りしたのを見計り、いそいそとスーパーに駆け込む。
 
卵に、小麦粉も切らしていた。
そうそう、さつまいもは外せない。
玉ねぎでかき揚げだって、オツではないか。
いっそのこと、青海苔とちくわで、磯辺揚げと流れこもう。
材料の、たっぷり入ったエコバックは、今にも引きちぎれんばかりだ。
 
具材をすっかり切り終えると、天ぷら鍋の油は、ちょうどいい温度になっている。
キッチンカウンターには、椅子をおく。
天つゆと、塩を小皿に盛ったら、ひとり天ぷらバーの始まりだ。
 
さつまいもを、黄金色の衣に、さっとくぐらせ、油に落とす。
サーと、小気味のいい音がキッチンに響く。
もちろん、缶ビールは開栓済み。
 
こんがり、揚がったばかりのさつまいもを、口に含むと、サクッという音ともに甘みが広がる。
そうそう、これこれ。
たっぷりの湯気を、冷たいビールで流し込む。
 
さつまいもを、食べ切らぬうちに、油に落とした玉ねぎも、すっかり食べごろになっている。
つるんと半透明のその身から、ジュワッと水分があふれた。
やっぱり、玉ねぎは、塩に限る。
ネギ特有の甘さと、塩気の相性、香ばしい衣としっとりした玉ねぎのギャップがこの上ない。
 
なすにレンコン、インゲン、紫蘇に海苔。
好きな具材を、好きなタイミングで、好きなだけ。
これこそ、一人暮らしの醍醐味だ。
 
ビールもしっかり2本あけ、締めのちくわが揚がった頃には、お腹はすっかり満タンになっていた。
さて、今夜もそろそろ店じまい。
酔いも、しっかりまわってきている。
片付けもそこそこに、シャワーを浴びて、ベッドにどさっと流れ込む。
 
次の日、キッチンで、小さな悲鳴をあげたのは、シンクの洗い物の量に驚いたからだけではない。
半端に残った、食材の多いこと!
 
これから、どうしたものか。
こんなにたくさんの種類の食材の入る料理は、どのレシピ集にも載っていない。
それぞれの材料に合わせて、何品も作るなんて、私の腕では、1週間あっても足りはしない。
 
すがる思いで、未来確約型料理人へ、助けを求めた。
 
ことの経緯を説明すると、「なんて、計画性のない!」と一瞥したのち、スープはどうかと提案してくれる。
 
「スープは、どんな食材を入れても大概、味が成り立つの。ポイントは、トマトの水煮缶と、たっぷりの、オレガノだよ」
 
「オレガノ、新手の楽器ですか?」とは口には出さず、再び、スーパーへ。
Google先生の助けを借りつつ、無事、発見いたしました。
深い緑の、荒い粉末。
なるほど、ハーブの名だったか。
 
天ぷらで、使いきれなかった、さつまいもに玉ねぎ、レンコン、なす。
この際だからと、冷蔵庫に眠っていたジャガイモに、人参、鶏肉も一緒に、鶏ガラスープと水の中へ。
じっくり煮込んで、トマトの水煮缶と、たっぷりのオレガノを加えて、残り物スープは無事完成。
 
恐る恐る口をつけて、こりゃ、びっくり。
根菜から出た、とろみで、口当たりの柔らかいこと!
いろんな野菜のいろんな味を、トマトが、うまくまとめてる。
たくさんの食材が入っているので、噛むたびに違う食感が心地いい。
そして、やっぱり、オレガノがいい仕事。
ハーブの複雑な香りが、料理のグレードを、1つも2つもあげている。
 
なんだ、こんな素晴らしい解決法があるなんて。
入れる食材が、変わると新しい味のスープにも出会えそうだ。
どんな、材料が残っても、こんな楽しみなことはない。
 
これで心置きなく、無計画な料理生活が楽しめる。
あらゆる料理人たちに、どんなに軽蔑されようと、こればかりはやめられない。その日限りの、一期一会。
 
さあ、今夜は、どんな料理を作ろうか。
 
 
 
 
***
 
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 

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2020-02-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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