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白い恋人から考察する「やすらぎ」シリーズの成功


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記事:サカ モト(ライティング・ゼミ平日コース)
 
テレビ朝日系列で2019年9月から放送されているドラマ『やすらぎの刻~道』。このドラマは2017年4月に放映された『やすらぎの郷』の続編だ。
 
「やすらぎ」シリーズは、『北の国から』の脚本家・倉本聰が、まずシナリオを完成させ、それをテレビ局に売り込んで製作された異例の作品だ。
また出演者にも石坂浩二、浅丘ルリ子、加賀まりこが名を連ねたことでも話題になった。
なぜなら私生活では石坂浩二と浅丘ルリ子は元夫婦。そして加賀まりこは、石坂浩二の元カノ。このシチュエーションだけでも、普通は競演NGだと思うが、この3人は一緒のドラマに出演した上に、仲のいいところをアピールまでしている。
 
このドラマを知らない人も多いと思うので、ストーリーを簡単に説明すると、昔、テレビや映画で功績のあった人だけが入居できる老人ホーム「やすらぎの郷」。ここに住む脚本家の菊村栄(石坂浩二)、女優の白川冴子(浅丘ルリ子)と水谷マヤ(加賀まりこ)たちが、事件が繰り広げるシニア世代をターゲットにした帯ドラマ。
 
劇中で石坂浩二を、浅丘と加賀は「エーちゃん」と呼ぶ。プライベートでも石坂浩二は本名武藤兵吉(むとうへいきち)から派生し、愛称が「へーちゃん」。もちろんこの二人も「へーちゃん」と呼んでいたのは、ある程度の年齢以上の人ならば周知の事実。
だからドラマでは浅丘、加賀が「エーちゃん、エーちゃん」と親しげにすると、その響きに、お茶の間の高齢者はざわついたはずだ。
 
もし私が、浅丘ルリ子、もしくは加賀まりこの立場だったら、元夫、元カレと一緒に笑って芝居など絶対にできない。さらにその彼女や嫁と競演なんて考えられない。このキャスティングはかなりリスキーだと思ったが、大方の予想を裏切り「やすらぎ」シリーズは、3月に無事最終回を迎える。
 
きっと女優同士のバトルがあるに違いない。そんな裏の裏を深読みしながら、画面を食い入るように見ていた野次馬視聴者も多いはずだが、画面を通して映る三人は、とても自然体でいい雰囲気。これは無理して出せるものではない。この不思議な三角関係がなぜ成立するんだろう? ちょっと考えてみた。
 
北海道土産の定番に石屋製菓の「白い恋人」というお菓子がある。これはホワイトチョコを、ラング・ド・シャという焼き菓子でサンドしたシンプルな洋菓子だ。作り方もとても簡単で、焼きたてのラング・ド・シャに、ホワイトチョコを挟み、冷ましてチョコとクッキーをくっつけるだけ。しかも一度サンドされた3つのパーツは、そう簡単には離れない。
 
このラング・ド・シャを浅丘ルリ子と加賀まりこ。そしてなかのホワイトチョコレートを石坂浩二に例えるとしたら、きっと「へーちゃんをとった、とられた」と恋愛沙汰の最中は、熱くドロドロした感情が渦巻いて、このクッキーたちは、自分の場所を主張し合い、チョコレートをグイグイと押しまくっていたはずだ。しかし時間が流れ、冷却時間が生まれると、このラング・ド・シャの二人は、石坂浩二にピッタリとはりつき落ちついてしまったと考えられる。
 
が、それでもやはり私は“時間”が解決したというような、手垢のついた結論には納得ができない。恋愛で、浮気されたり、寝とられたりしたとき、そんな簡単に相手を許せるものではない。どちらかというと、自分の傷と同じような痛みを、相手の女にも残して「私の存在」をアピールしたいという残酷さが、女性には少なからずあるはずだ。しかも女優という人種なら、なおさらだ。「私が一番!」でなければ、ガマンができないからこそ女優! ともいえる。そんな彼女たちにとって、ホワイトチョコを隔てた向こう側にある繊細なクッキーを、メチャメチャに壊してしまうことはとても容易ではないだろうか。
 
が、そうはいかない工夫が『白い恋人』にはある。それはホワイトチョコを、ラング・ド・シャより少しだけ大きくして、衝撃をすべてホワイトチョコが受け止める。そのおかげで「白い恋人」はちょっとやそっとのことでは壊れないようになっている。
 
しかもそのホワイトチョコは、表面はなめらかでツルツル。大きさもきっちりと決められていて、厚さも均等になった板チョコしか、この緩衝材の役目を果たせない。ホワイトチョコは、ただただニュートラルでいることが、良好な三角関係を保つためには必要なのだ。
 
そういえばこのドラマでは、菊村栄はあくまでも受け身。彼が動いてストーリーが転がることはほとんどない。浅丘ルリ子や、加賀まりこ、その他の入居者たちが事件を起こし、菊村はいつもそれに巻き込まれている。
 
「白い恋人」も石坂浩二も、ダークチョコレートやブラックチョコレートではダメなのだ。あくまでピュアで、ノーマルなホワイト。そして個性なんて必要ない。ただ壊れやすくて、わがままで、気品あるラング・ド・シャを守るため、さらにおいしいお菓子を作るため、際立ったキャラクターを棄てることが求められている。
 
このホワイトチョコの役目は、誰でもできるようでいて、適任者はなかなかいない。それができるのは、やはり年を重ねても、無色透明の匂いをいつまでも醸し出す石坂浩二しか思いあたらない。そして「やすらぎ」シリーズの成功は、そんな彼の功績がとても大きいと思う。
 
 
 
 
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2020-02-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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