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マスクがなくなる日――販売店のジレンマ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:星柱(平日ライティングコース)
 
世界的に大流行している新型コロナウィルス。
予防のために必要なマスクが、コンビニやドラッグストアからなくなっている状態を見たことはあるだろうか?
販売する側の目線で、何が起きているのかを記しておきたい。
 
私はとあるコンビニで店長をしている。
当然、マスクが売れるだろうことが予想された。どの程度確保すればいいのかの目安もなく、発注量は店舗に一任された。
普段の4倍の量を発注する。7種類あるマスクをそれぞれ4倍だ。普段からは想像もつかない量のマスクが納品されることになる。
コンテナいっぱいに納品されたマスクは、予想を遙かに超えて1日で売り切れてしまった。
この事態には私も驚愕してしまった。発注量を10倍にする。
次の納品から、一部のマスクが来なくなった。
「三次元マスク」というブランドが大人気である。普段は人気のない女性向けの小さいタイプの商品ですら納品されなくなってしまった。
 
納品業者が言った。
「月曜日に納品された箇所に、ほとんど行ってしまったんですよ」
私の店舗は火曜日納品だった。同じチェーン店でも、納品日の違いにより品揃えに影響が出てしまった。
それでも少なからず納品されたマスクを店頭に並べる。
言葉から中国人とわかるお客様が一気に購入して、1日で売り切れてしまった。
 
他店の店長から声が上がった。
「マスクは、あればあるだけ買われてしまう。購入したいお客様は他にもいらっしゃる。購入制限はできないのか?」
会社から購入制限の許可は下りなかった。
現場で購入制限を定めることはできなかった。
 
マスクメーカーも工場を必死に稼働させていることは新聞などで報道されている。
でも、間に合っていない。
発注しても、納品されるマスクは少なくなってきた。
 
「マスクを一カ所に集め、担当地域に振り分ける」という指針が出た。
どの店舗でもマスクは欲しい。それでも会社全体のことを見れば、「振り分け」という行為も、しぶしぶ納得せざるを得なかった。
店舗に納品されたマスクの一部が、振り分けのために回収されていく。
マスクは結局、回収されたままで、私の店舗には振り分けられなかった。
同じチェーン店のなかでも、マスクの取り合いが始まった。
 
「風邪や花粉症に苦しむ人もいる。一気買いばかりされて、その人たちにマスクが売れないのは納得がいかない」
現場の販売員からも声が上がる。その気持ちはわかる。
でも、苦しんでいるのは風邪・花粉症の人たちだけではない。
新型コロナウィルスにならないよう、せめて自分の大事な人や家族にはマスクを送りたい。一気買いに走る、そういう方々の気持ちもわからないでもない。
みんな自分のことに懸命なのだ。
それでも売る側としては、誰にでも公平に販売したい。
販売するという行為と、販売するときの感情に乖離が生まれる。
必要であろう妊婦のお客様に販売できないことが切なかった。
 
他チェーンのコンビニやドラッグストアを覗いてみる。どこも売り切れ状態。
台風19号の接近する日においても、電池や食料品が店頭から売り切れてしまった。
だが、今回のマスクの品薄状態はそれ以上だった。
空になったマスクコーナーに、「売り切れ」の謝罪文だけが残っている。
 
「従業員のマスク着用」の許可が下りる。だが、従業員のためのマスクは用意されていない。各自用意するようにとの指示だが、用意はもちろんできない。
花粉症対策で事前に運良く準備していた従業員だけがマスクを着用している。
 
さらにマスクの納品量が減る。上からの指示は待っていられない。現場判断で、わずかに残ったマスクを時間を定めて販売する。
これで、少しでも多くのお客様に行き渡ってほしいが、その効果のほどはわからない。
 
ついに会社から発注制限がかかった。発注制限がかかったマスクも、確実に納品されるとは限らない。それでも最低量を発注する。納品されるかどうかは、納品当日にならないとわからない。
 
「おひとり様1枚まで」の購入制限の指示が出される。「指示が遅い」との声も現場から上がるが、会社としては売れた分だけ売り上げの数字は良くなるのだ。会社が利益を追求するものとして存在している以上、売り上げが取れるうちに取っておく。その理屈は言われたらわかるだろう。納得できるかどうかは別問題なのだ。
だが、売り上げの数字が取れたのなら、それでいいのか?
少なくとも私には、明確な答えは見つけ出せなかった。
 
マスクに続いて、消毒用のウェットティッシュが発注停止になる。発注制限を通り越して、いきなりの発注停止。発注再開の目処は立たない。
 
従業員にアルコール消毒が推奨される。消毒用アルコールは発注をしても納品されない。「納品できません」の連絡すら来ない。
どこで、どうストップしているのかさえ不明なのだ。
 
新型コロナウィルスの終息が見えていない2月中旬現在、現状がどう変化していくのかは不明瞭である。
お客様が購入したい商品を販売する。それができないのが口惜しい。
今の混乱状態が少しでも早く解決してもらえたら、そして、新型コロナウィルスの拡大が停止してくれたら。
そう祈りながら、日常の営業を続けている。
 
 
 
 
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この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 

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2020-02-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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