メディアグランプリ

頭痛の種は、母指球だったりする。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:柴垣有世(ライティング・ゼミ特講)
 
 
目の奥の痛みで目が覚めた。
起き上がってみると、こめかみのあたりもズキズキしていた。
「頭痛か」と、ため息とともに、おもわず声が出てしまった。
普段頭痛になることがあまりないので、かなり億劫な気分だ。
薬を飲むのはなんとなく嫌だったので、しばらく様子を見ることにした。
しかし、相変わらズキズキと痛むのは変わらなかった。
この痛み、どうしてくれよう。
 
そうこうしているうちに、時間はどんどん過ぎていく。
仕事を休んではいられない。
一人ブラック企業なので、代わりの従業員などいないのだ。
そう、私は一人で整体院を運営している、しがない整体師なのである。
 
通勤電車に乗っている間も、どうにかして痛みが楽にならないか試行錯誤していた。
が、どうにも良くなる気配がない。
やはり、薬に頼るべきなのか?
自分の頭痛すらどうにもできない整体師など聞いて呆れるわ! と自分自身への怒りまで湧いてくる始末。
ツライ。
そんなこんなで頭の痛みをこらえながらも、どうにかこうにか午前中の仕事を終わらせ、もう一度頭痛が起きた原因について思い起こしてみた。
「最近、なんか新しいことしてたっけ?」
「特に目を使うようなこととかしてないよな〜」
「首がこったり張ったりした感じもないし」
「う〜ん」
と、ひとり考え事をしながら、無意識にスマホをいじって、最近ハマっているゲームの画面を開いていた。
それは、ドランゴンを退治するという、某有名ゲームのスマホ版だ。
このゲームは、クエストと呼ばれる任務を遂行するために歩き回らなければいけない仕様になっている。
最近、このゲームのために、スマホを片手に近所を歩き回っていたことをようやく思い出した。
「そうか、こいつのせいやったんか」
ようやく頭痛の原因がわかった。
「灯台下暗し、目や首のせいで頭痛が起きてるんじゃない、頭痛は、こいつが起こしとったんかい〜」と一人つっこみながら、自分の手の母指球をギュ〜っと押してみた。
「イテ〜」
「めっちゃ痛いやんか」
「あ、でも頭痛ちょっと楽かも」
と、一人でジタバタしながら母指球をもみ続けた。
痛みがある程度なくなってくると、頭痛の方も随分とマシな状態になっていた。
これで、午後の仕事が普通にできる。
朝からの頭痛騒動にようやく一息つけた瞬間だった。
そうなのだ、朝からの頭痛の原因は、両手の母指球の筋肉が疲労していたことが原因だったのだ。
 
たかがスマホと侮るなかれ、実はスマホというのは意外と重量がある。
手帳型のケースを付けているものだと、200〜300グラムくらい。
そこにストラップやカードなどを忍ばせていると、350〜400グラム位になってしまうこともある。
 
ということは、一般的な単行本クラスの重量に匹敵するのだ。
スマホを片手に歩き回るということは、単行本を片手でず〜っと持ちながら歩き回っているようなものなのである。二宮金次郎が本を読みながら歩いていたのと同じ、というのはよく言いすぎだが、そのようなイメージである。
 
単行本ほどの重量があるスマホを落とさないように、さらに画面を見ながらゲームを進めたりしながら歩き回っていれば、手の親指も疲労困憊になってしまうはずである。
スマホ恐るべし。
 
しかし、それ以外にも痛めていたり、疲労が溜まっている場所はまだ他にもある。
腕撓骨筋という母指を動かす筋肉で、肘の外側あたりから始まる筋肉や、前鋸筋という肩甲骨を支えている肋骨についている縁の下の力持ち的筋肉、力こぶを作る上腕二頭筋なども意外と疲れていたりする。
これらの筋肉も緩めていくことで、残っていた頭痛もすっかり楽になった。
 
近年スマホの長時間使用が問題になったりする。
CMなどでもスマホっ首などという表現で、スマホを長時間使うと首が疲れますよ、ということを訴えたりもしている。
が、まさか自分がスマホのせいで頭痛を起こし、自ら治療を行わないといけないような羽目になるとは思わなかった。
来院される患者さんには、したり顔で
「長時間のスマホが原因で肩こりや首こりになったりしますから、程々にしておいてくださいね〜」
とか、
「ツムツムとかつい長時間やってしまうんで、肩こりや首こりになりやすいですからね〜」なんてほざいておきながら、身から出た錆とはまさにこのことである。
 
ただ、自ら体験するということは何も悪いことばかりでもない。
患者さんの苦しみを身をもって体験するというまたとない機会なのだ。
患者さんの立場になって、これからの施術を行える貴重なひとときだったのだ。
と、そういうことにしておこう。
 
 
 
 
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2020-02-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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