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メディアグランプリ

「 娘の卒業と私の第二の人生 」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:田中 真澄(ライティング・ゼミ 平日コース)
 
 
去年の9月に娘の大学の授業料を払い終えた。長い支払いの最終が銀行の窓口で手続きが終了した時、ほっとした。凄く肩の荷が降りたと深く実感した。祝!お支払い完了! これで少し楽になるわと思うと同時に、もの凄い開放感に襲われた。
25年前2人の子供を産み、なんとか2人を大学進学させた。娘より2つ年上の長男が卒業した時はまだまだ頑張らないといない。支払いはまだまだ続く、気は抜けないと頭の中ではお金の算段を繰り返していた。日々節約で我慢を重ねてきたが、もう教育費を気にしなくていいだと思うと自然と口が綻び、ニヤニヤしてしまうことを隠せなかった。
 
娘の希望した進学先は芸大。授業料が半端なく高い。覚悟はしていたけれど、授業料を改めて見たとき、なんでこんなに高いのだ!と叫びたくなるのを押さえ込むのに苦労した。正直、進学してもいいよと言ってしまった自分を深く後悔しつつも、これと娘の将来の為と思い諸々を飲み込み踏ん張ることを決意した。
残業を増やし、Wワークで仕事を増やすとなんとか最後まで払えるかと楽観視したり、いや、やっぱり厳しいかもと不安な気持ちに押し潰されそうになったり、不安になるたびに大人の事情を娘に背負わせる訳にはいかないと踏ん張り、大丈夫、なんとかなる!と自分に言い聞かせて仕事をして過ごしてきた。
そんな綱渡りのような日々ももう終わる。なんでも出来そうな、心なしか身体も軽くなったような開放感に満ちあふれていた。
何をしょうかなぁ。もう、嫌な仕事はしなくていいし何かを勉強するのもいいし、第二の人生! とあれこれと、妄想しては心を踊らせていた。
 
だけど、満ち溢れた開放感はそんなに長くも続かなかった。それは、卒業式というワードを思い出したときから。
 
卒業式と聞くたびに逆に今までウキウキした気持ちは一転して沈みがちになっていき、まるで白いハンカチにジワジワとシミが広がっていくような、心にちょっとずつ小石を詰め込まれたような、そんな重苦しく寂しい気持ちがざわざわと私の気持ちを支配していく。
卒業はおめでたいと思うものだが、娘は3月に卒業し、その後、大阪から東京へ夢を叶えるために旅立っていく。
きらきらした眼で将来を楽しそうに語る娘を見るたび、応援する気持ちと寂しい気持ちが入り混じり、なんとも落ち着かないでいる。娘のワクワクした気持ちとは反対に私の寂しさは増すばかりだ。
 
夜、家族が寝静まるとなおさら寂しさが募り、娘が家から旅立つ日を想像しては、気持ちが昂り涙してしまう時もある。
そんな時は決まって、娘が生まれた時のことを思い出す。息子は標準より大きく生まれ安心できたが、娘はその反対で早産し未熟児で産まれてきた。生まれて直ぐ、私が抱きしめる前に保育器に入ってしまった。標準より小さくて、ちゃんと育ってくれるかと気を揉み心配した日々。
寝ている寝顔は可愛いけれど、寝息が余りにも小さて、泣き声もあまりにも小さて、ちゃんと息をしているのか心配で顔に軽く息を吹きかけ僅かに首を動かすのを見て安心する日々。
他の子より、とても小さいけれど、クルクルした大きな瞳で一生懸命に両手を伸ばし抱っこをせがみ、お母さんが一番好きと言ってくれた娘。
弱々しく見えてもこうと決めたらテコでも動かず意思が強いのを通り越し、頑なで頑固な一面があり手を焼いた中・高時代。
二人の子の子育ての終わりはまだまだ先と思っていたけれど、気がつけばもうすぐ子育ての時間が終わってしまう。
 
その時、その時はいかに大事な時間を過ごしているのかを気がつかず、辛い気持ちに囚われてしまう時があったけれど、今は、幸せなこの時間が、このまま止まってしまえばいいのにと勝手なことを思ってしまっている。
いつまでも子どもたちと一緒にいたいという願望はあるけれども、それは私の我儘だ。
でも…… とその繰り返し。
子供のために手を離さないといけないと頭ではわかっていても気持ちの整理が追いつかない。寂しさを抑えて手を離さなければならない。
巣立たさせなければいけない。娘の卒業式まであと少し。
離れる時はいずれ来るとわかっていたのに、
子離れがこんなにも重く辛いものだなんて思いもよらなかった。
このポッカリ空いた気持ちの隙間はどうすればいいのか、どうやって乗り越えればいいのか、模索の毎日。
 
子供達がまだ小さい時は、自由な時間や自分の仕事に没頭できる時間を持てる人が羨ましくて仕方なかった。そして憧れた。
もうすぐその憧れた自由な時間はやってくる。でも、あの時に心待ちにしていた気持ちと、今の気持ちはまるで違う。
 
時間的には大学の卒業式が終わり、娘が家を離れたら私の第二の人生のスタートとなる。だけど、その時がきても気持ちは追いつておらず、気持ちの上では子離れできていないことは確実だ。寂しいという名前の沼にどっぷりとはまっている自分は情けない。こんな自分を周囲には見せたくないはないが、うっかりすると露呈してしまいそうになる。それは避けたいと沼から脱出を試みる日々。
だけどそれは難しくそこかしこに少しずつ寂しい自分を露呈してしまっている。
 
楽しいことばかりではなかったけれど、子育てというこんな愛しい時間を体験でき、私を親にしてくれた子供達にありがとうと心から感謝している。
感謝の気持ちを大切に、そして、今のこの寂しい気持ちを噛み締めつつ、少し楽しみながら付き合ってゆっくり慣れていこう。
そしてめげることなく第二の人生の道を見つけて行こうと思う。
 
 
 
 
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2020-02-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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