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メディアグランプリ

好きになってしまうものは、仕方ないーバンドマンの呪い


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:ヨシオカ ユーコ(ライティング・ゼミ特講)
 
 
「いつも似たような男にばかり引っかかって、失敗する……」
そう言って、うまくいかない恋愛を嘆く若い女性は少なくない。
それならば「じゃあ、違うタイプの人と付き合ってみたら?」というアドバイスが出るのは自然なことだ。全くタイプではない人と結婚したけど、幸せだという人の話もよく聞く。
かといって、好みのタイプを変えるのも簡単じゃない。理系メガネのクールな男性を好む女性に、「今度は筋肉美が自慢のマッスル男はどう?」なんて紹介しても、戸惑いが大きすぎて、なかなかすぐには恋愛に進めないかもしれない。
 
でも、同じタイプの人ばかり好きになってしまうという悩みは、けして無理に解決しなくてもいいと私は思う。
 
ちなみに私は、「いつもバンドマンに引っかかってしまう女」だ。
歴代彼氏、全員ロックバンドの経験者だ。
 
彼らがやっていた音楽のジャンルは、みんな違う。
高校時代に好きになったのは、外国の古いロックを愛する渋いギタリスト。
大学時代に付き合っていたのは、日本の若手ロックバンドを愛聴するギターボーカル。
その後付き合った大学時代の同期は、実験音楽やジャズに挑戦する玄人肌のギタリストだった。
 
とはいえ、私がバンドをやっている男と出会ってばかりだったのは、私自身も学生時代に軽音サークルに所属していて(担当:ギター)、音楽好きが集まる環境に身を置いていたことも大きい。
 
しかし、大学もサークルも卒業し、音楽好きの集まりとの付き合いから離れても、バンドマンは私を離さなかった。
 
ある時、音楽も何も関係ない場でたまたま出会い、ちょっといい感じになった男性がいた。仲良くなってからしばらくして、ふと彼は言った。
「俺、休みの日にバンドやってて、今度の日曜日ライブなんだ」
またバンドマンかよ!
 
道を歩いていて、ライブ帰りのバンドマンの集団にナンパされたこともあった。
 
むしろ、恋愛の場でなくても、バンドマンはちょいちょい私の人生に顔を出す。
エアコン工事に来た電気屋のお兄さんが、棚に並んでいるCDを見て、
「あ、このバンド!僕、昔このメンバーと一緒にバンドやってました」
と、突然バンドマンだった過去を打ち明けてきたこともあった。
 
仕事の内部監査で東京から出張してきた監査担当者に、
「僕、東京では職場の仲間とバンドをやってるんだ。君も東京に転勤したら、バンドできるよ!」と、飲み会でバンドの勧誘を受けたこともあった。
なお、私の当時の仕事は、音楽も文化も一切関係ない業種だった。それなのに現れる、バンドマン。
 
何なら1年間、バンドマンの先輩の隣の席で仕事をしていたこともあった。
ある年の部署異動で隣になった1つ年上の男の先輩は、温厚で優しい人だった。いつも真面目に黙々と仕事をしているのだが、時折先輩のデスクの方から、スッタタスッタタ……と謎の音がする。
スッタタ スッタタ スッタタ……
 
一定の速さ・規則性をもって、リズミカルに刻まれる音。
 
私はこの音に非常に覚えがあった。
バンドマンの多くには、主に手持ち無沙汰の時、手のひらを足腰に打ち付け、スッタタスッタタスッタタタと、無意識にビートを刻む習性がある。
先輩は、高校から就職するまでの青春をずっとバンド活動に捧げてきた、元ドラマーだった。
 
ここにもやっぱり、バンドマン!
 
さらにはその年の秋に同期が異動してきたが、彼もまたドラマーだった。この職場は一体何なんだ。
そして同期もやはり、手持ち無沙汰に手でビートを刻む癖の持ち主だった。2人と話をしていると、彼ら2人がそれぞれで、スッタタスッタタとビートを刻んでいることもあった。
何で同じ部署に二人もドラマーがいるんだ。いくら私がバンドマン慣れしてるからって、気軽にビートを刻むな!
せめてどっちかベースをやれ、バランスが悪いやろ!
 
しかし、このスッタタスッタタするバンドマンたちと働き続けて、1年後。
 
私は、隣の席のバンドマンの先輩と、結婚することになった。
 
私は、バンドマンばかりを寄せ付けてしまう己の運命に、とうとう抗えなかった。
毎日スッタタスッタタと隣でビートを刻まれているうちに、彼に愛着が湧いてしまったのだ。
 
同じタイプの人ばかり好きになってしまう自分、バンドマンばかり好きになってしまう自分、それはもう仕方がない。だって、私が結婚相手の先輩に関心を持ったのは、彼が元バンドマンらしく、隣でビートを刻んできたからだ。
でも、結婚したのは、彼が元バンドマンだからじゃない。彼がとにかく、温厚で優しい人だからだ。彼といて、居心地がよかったからだ。
 
好きなタイプというのは、恋愛においては単なる入り口にすぎない。どうしても同じタイプの人にばかり惹かれてしまう、それはもう仕方がないのだ。
大事なのは出会った後に、タイプを超えたその人の人柄を愛せるかどうか、自分が幸せでいられるかどうかを判断することだ。
 
同じようなタイプの人ばかり好きになるから、失敗するのではない。
つい好きになってしまって仕方がないタイプの人たちの中でも、とびきり特別な良い人と、まだ出会えていないだけだ。
 
 
 
 
***
 
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2020-02-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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