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メディアグランプリ

ワニを釣った話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:古畑 佑奈(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
私は昔から、ヘンテコなものが好きだ。
シュールな、現実離れした物事が笑いのツボにはまってしまう。周りに理解されないことも多々ある。
 
特に、ヘンテコなテーマパークが大好きだ。
ヘンテコなテーマパークは、テーマパークとしてももちろん楽しい。加えて、まるで現代アートのように、人々に「設計者はなにを考えたんだろう」と疑問と衝撃を与え、興奮をもたらしてくれるのである。
 
アジアには、そんなテーマパークがたくさんある。大概、とんでもない場所なので、ほとんどガイドブックには載っていない。
 
ベトナムに、「スイティエン公園」というテーマパークがある。
敷地は、東京ディズニーランドとシーを合わせた面積よりも広い。大人の入園料金は、日本円で約350円。アトラクションはそれぞれ別に料金がかかるが、大体150円から250円と、気軽に思う存分遊ぶことができる。
 
そんな遊園地に、数年前に行ってきた。
 
友人と私は、事前に「どれだけそのテーマパークがヘンテコか」の情報を仕入れており、ローカルバスでほとんど観光客がいない道のりを、期待と少々の不安を抱えて向かった。
 
到着してまず目に入ったのは、カラフルな、とにかく大きな龍と、とにかく大きな門である。
サイズと色使い、デザインすべてが独特で、期待通り、いや、期待を上回るヘンテコぶりである。仏教のテーマパークらしく、龍のほかにも仏様や神様(?) のようなものが見える。
この時点で私は大興奮であった。
 
入園券を購入し中に入ると、そのヘンテコさに拍車がかかり、様々なテイストのモニュメントが多数ちりばめられていた。仏像や人をかたどったモニュメントはとにかくサイズが大きく、インパクトがすごい。いろんな動物やいろんなおじさん、なんとハリーポッターの屋敷まである。許可はもらっているのだろうか。だんだん感覚が麻痺して、なのか、そのカオスな空間に自分たちが馴染んだのか、そこかしこに配置されている統一性のないキャラクターを受け入れるようになった。カオス万歳、多様性バンザイである。
 
中はいくつかのゾーンで分かれており、遊園地、水族館、動物園、全ての要素が含まれていた。アトラクションのほとんどは、なぜかお化け屋敷だった。チープさが恐怖をより引き立てる仕様である。暑い国だからか雪ゾリができる館もあり(室内で人工雪の上をすべる)、その向かいには超巨大プール(含むモニュメント)があった。とにかくなんでもありの空間。
 
数々あるゾーンの中でも、1番私たちの興味を引きつけたのは、「生き物ゾーン」、つまり動物園のように数種類の動物を見ることが出来るゾーンだ。
 
そこに、ワニの池があった。
 
その数50以上だろうか、池の至るところにワニがたくさんいた。寝ていたり、のんびり泳いでいたり、見た目は怖いがそこにはゆったりとした空気が流れていた。
 
ワニの数に圧倒されながら案内を読むと、どうやらそこではワニ釣りが体験できるらしい。そんなこと聞いたことないし、ワニなんて釣りたいと考えたこともなかったが、とにかく体験するしかない。
 
お金を払うと、ワニを釣り上げるには大変心許ない釣竿を渡された。ただの細い棒である。その先には見たことないくらい真っ赤な肉の塊がついている。謎に着色されている。赤いほうが、ワニが気付くのだろうか。
 
周りは閑散とし、誰もワニ釣りをしている人はいない。手本となる人がおらず正解がわからないまま、まずは私がやることになった。興奮していたものの、いざ、やろうと思うと少し身体がすくんでしまう。
 
水面には数匹のワニが見える。
えい、と釣竿を振る。
真っ赤な肉がプカプカ浮いている。
 
怖い…という気持ちと、このシュールな光景におかしさがこみ上げてくる。
ワニが数匹、近づいてきた。
 
ばしゃっ
 
それは一瞬だった。釣りというからには、ワニと駆け引きしながら釣竿を引っ張りあげることを想像していたが、ワニはあっさりと肉を加えてゆったりと泳いでいってしまった。
 
時間にして数十秒だっただろうか。なんてあっけないワニ釣り。しかし、ワニが肉をくわえるその力強さは釣竿ごしに充分伝わってきた。釣竿が持っていかれなくてよかった。友人もそのあとチャレンジしたが、ワニはやっぱり数十秒で肉をくわえてどこかへ行ってしまった。ワニを釣りたいなんて考えたことがなかったのに、釣れないとなるとなんだか悔しくて、リベンジしたい気持ちになった。私たちはいい大人だったので、悔しがったあとにひとしきり笑って、リベンジはしなかった。
 
思えば、大人になってからこんなに純粋な気持ちで遊びに夢中になったことがあっただろうか。ワニ釣りは子ども時代の興奮をよみがえらせてくれた。
 
ワニを釣りたくなった人は、ぜひスイティエン公園へ。
ヘンテコが、想像を上回る衝撃と興奮を与えるだろう。
 
 
 
 
***
 
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 

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2020-02-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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