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だから、私は占い師をする。


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作者:大久保 尚(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「あなた、30代半ばで、命にかかわる大病するし、出世の道から外れるわよ」
忘れもしない、今から、約25年前、社会人1年目の時に、一緒に働いていた同僚の女性に言われた言葉だ。その人は、若い時に手相を見るための先生についていたといい、手相を見ることができるといっていた。なので、私は、軽い気持ちで「じゃあ、見てくださいよ」とお願いしたのだった。
 
その時の言葉が、最初の言葉であった。そして、占いはそれ以上の言葉もそれ以下の言葉もなく終了したのだった。私は、「こんな一言だけの占いなんて当たるわけない」と思う反面、心のどこかで「もし当たっていたらいやだな」とも思っていた。
 
そして、その思いというのは、ずっと消えることがなかった。
 
以来、私は占いというものを全くやらなくなった。やはり、同じように気になることを言われたらいやだなと思ったからである。何かあるたびに、のどの奥に刺さっている小骨のように、私の心に不快なものとして住みついてしまっていた。
 
そして、30代半ばになり、私は占いの通り、死にそうになった。
 
30代中ばのある日、私は急に右のわき腹が痛くなった。特に激しい痛みではなかったものの、しばらく痛みが引かず、なんだか嫌な痛みだなと思って病院に行くことにした。何か、命にかかわる病気にかかっていたらいやだなと思い、不安を感じていたのだが、診断は「盲腸」だった。もっと重い病気を想定していた私は、少し肩透かしをくらった気もしたものの、安心したことを覚えている。とはいえ、手術が必要という事だったので、入院をすることになった。ただ、期間は5日くらいの入院と、外科の手術の中では非常に簡単な部類であるという認識があったので、何の不安もなく、手術を受けた。そして、手術は成功し、5日目には退院をした。が、問題はその後だった。
 
翌日、会社に行ったのだが、何となく、体がだるく感じた。おそらく入院してたので、体力が落ちたのだろうと思っていたが、夕方になり、寒気がするようになり、熱もある気がしたので、早退することとした。そして、家で体温を測ったところ、42度の熱が出ていた。翌日、朝一で病院に行こうとするのだが、全身がだるくて、着替えることができない。妻に着替えを手伝ってもらい、肩を借りながらタクシーを拾って、何とか病院につくと、体温はやはり42度以上あり、すぐに集中治療室に運ばれた。
 
始めは、なにが原因かわからず、医者からは
「大久保さん、この一か月以内に風俗に行きましたか?」
と聞かれ、身に覚えがなかったので、
「いいえ、行ってません」
と答えたのだが、しばらくして、再度
「もう一度お聞きするのですが、最近風俗に行きましたか?」
聞かれ、意識は朦朧としながらも、
(ああ、風俗に行くとこんな状態になるんだ。怖すぎる)
と心の中で思っていた。もちろん私は行ってません。
 
検査の結果、どうやら、黄色ブドウ球菌が盲腸の傷跡から入りこみ、全身がショック状態になってしまったことが原因のようだった。ショック状態とは、全身が日焼けをしたように赤く腫れあがり、腎臓、肝臓などの機能が低下していくという症状で、その時、私は意識があまりはっきりしていなかったんだが、私の家族は、医者に
「今夜がヤマです」
と言われていたようだった。
幸い、何とか特効薬があり、一命をとりとめたのだが、入院はそこから1か月を要することとなった。
 
その後、順調に回復をして、無事、社会復帰をすることができたのだが、私の中では、
「ああ、新卒の時の手相占いのとおり、やはり30代半ばで死にかけた」
という思いが強かった。ただ、この結果は、気の持ちようで、こういう結果を引き寄せてしまったのではないかと思う気持ちも強く、であれば、占いで良い結果が出れば、人生も前向きに良くすることができるのではないかと考えるようになった。
 
そこで、私は、占いで人を前向きにできるのであれば、自分で占いができるようになり、人にいいことを伝えることによって、前向きな人生をサポートできるのではないかと考え、タロット占いを勉強することとした。
 
タロット占いは78枚のカードを使用して占うもので、解釈などもそんなに難しくないのだが、多くの人はあまりカードをしっかり学んだことが無いため、結構、いいカードと悪いカードについて、知らないことが多い。占い師である私としては、これが好都合であり、明らかに悪いカードでも、良い面を探して伝えることができるという利点がある。逆に、タロットを知っている人はやりにくい。
 
そして、結果は、良い結果、お客様が前向きになれるような言葉を伝えるように心がけている。これを心掛けていると、お客様の表情も明るくなり、感謝をされるようになる。最近では、タロットカードを持ち合わせてないときなどは、手相を見てほしいといわれることも多くなり、簡易ではあるものの、手相も見れるように勉強を進めている。
 
占いというものは、どこか、試験の合格発表に似ている。結果が出るまで、ドキドキしながら待ち、結果によって、一喜一憂の振れ幅が大きい。たとえ悪い結果であっても、試したい、聞いてみたいと思ってしまうのは、人間の本能に近いのかもしれない。でも、安心してください。私の占いなら、最後には必ず桜が咲きます!
ぜひ、一度お試しあれ。
 
 
 
 
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2020-03-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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