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メディアグランプリ

動物好きなお姉ちゃんが会社を作ったハナシ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:河合弥生(ライティング・ゼミ特講)
 
 
あれは忘れもしない10年前のこと。当時、個人事業主でペットシッターを開業していた私は、商工会議所の名刺交換会に参加していた。
社会人経験が乏しいまま起業した私は、名刺交換も不慣れであったが、とにかく仕事に役立つ情報や人脈が欲しくて参加したのだ。そこには50人程度の中小企業の社長と思しき人達が、代わる代わる名刺交換を行なっていた。
 
「あ、はじめまして。河合と申します」
慣れない手つきで名刺を差し出すと、先方のおじさんは私と名刺を見比べながらこう言ったのだ。
 
「へぇ。動物好きなお姉ちゃんがやってんのか。ええ仕事やな」
私はびっくりした。名刺交換会って、バカにされるために来る場所なの?! 個人事業主が来る所じゃないの? それとも若い女性が来ちゃいけない場所だったとか?(この当時はまだ若くて、ちょっと可愛かったのだ)
 
この後、何人かのおっさん社長に同じことを言われ、翌日、私はすぐにこの商会会議所を退会した。ここには、私をバカにして楽しむ人はいても、お客さんになってくれそうな人や情報をくれる人はいないと判断したからだった。
 
ペットシッターとペットホテルを経営しているというと、好きなことを仕事にできて楽しそうだと思われるかもしれないが、実際は大変な仕事だ。ペット業界は「稼げない」「しんどい」「休めない」で、人の定着率が悪い業界なのである。私も20年間この業界にいるが、あまりの辛さに何回も辞めようと思ったことがある。大雪でも散歩に行かねばならないし、真夏の散歩は汗でTシャツが塩をふくほどだ。台風で電車が止まっても、依頼があればお世話に向かわなければならない。熱があっても点滴を打って仕事をするし、交通事故で全身打撲の時も、犬に噛まれて利き手が使えなくても、身体が動けば痛み止めを飲みながら仕事をしてきた。
 
そんな生活を20年も続けていると、お客様は増えてくる。365日毎日ほとんど休まずに仕事をしていれば当然といえば当然だ。
 
そして、あの最悪だった名刺交換会の後くらいから、事務スタッフさんと経理スタッフさんを入れるようになり、今ではドックトレーナーさんとトリマーさんにもスタッフとして入ってもらうようになった。
 
2017年には法人化することもできた。
法人化してびっくりしたのは、名刺を出した時の先方の態度である。個人事業主の時は、商工会議所のおっさん連中のような失礼な態度まではいかずとも「ペットシッターさんなんですね」と薄い反応の人が多かった。ところが、法人化した途端に「社長さんなんですね! 河合社長!!」と言われるのだ。会社の規模なんて、個人事業主の時とそんなに変わらないのに。
 
ではなぜ、わざわざ法人化したのかと思われるかもしれない。法人化した理由は2つある。
 
一つは、きちんと人を雇用していこうと決めたからである。トリマー資格やドックトレーナー資格、動物看護士などの専門知識がある人達にペット業界に残って頑張ってほしい。そのために微力ではあるが、働く場所を提供できればと考えたのだ。雇用される側の立場からみれば、個人事業主よりもちゃんと会社になっている方が安心であろう。
 
もう一つの理由は、会社を作るということは社会貢献だと思ったのだ。安くない法人税を払い、人を雇用し、消費税もしっかり納める。
これを毎年きちんと続けていくことができれば、子供のいない私ができる社会貢献につながると考えたのだ。なので、商工会議所のおっさん連中を見返してやろうという安直な理由で法人化した訳ではないことをご理解いただきたい。
 
動物好きなお姉ちゃんが20年ペット業界にいたら会社を作ることができた。なんの取り柄もなく、ただ動物が好きで休まずに続けただけである。
それでも、続けていくうちに助けてくれたり、応援してくれたりする人達が現れるようになった。人脈も拡がり、獣医師さん、弁護士さん、行政書士さん、動物系専門学校の先生など素晴らしい人達と仲良くさせていただけるようになった。
 
誰しも仕事を続けていると、辞めたくなるようなことに直面することもあるだろう。そんな時に辞めてしまうのは簡単だ。でもね、辞めずに続けたらどうだろうかと想像してみてほしい。私は30年後も生涯現役で犬を散歩させ続けることが夢なのである。これは、商工会議所のおっさん連中にはできないことだろう。30年後は私の一人勝ちである。そんな想像をして、うふふとほくそ笑みながら今日も明日も動物達のお世話の仕事を続けていくのだ。
 
 
 
 
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2020-03-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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