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メディアグランプリ

一生に4回は少なすぎる


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:平本 智佳(ライティング・ゼミ特講コース)
 
 
一生に4回は少なすぎる。と私はつねづね思っている。
10年に4回でもまだ少ない。
1年に4回くらいがまあいいんじゃないだろうか。
1カ月に4回だとちょっとマニアかもね。
 
いったい何の話かと思うだろう。いろいろ想像してニヤニヤしている人もいるかもしれない。
「一生に4回」は、一般的な人が一生のうちに動物園に行く回数といわれている。
その内訳は
1回目 子どものころ、親に連れられて
2回目 小学校の遠足で
3回目 中高生のデートコースとして
4回目 自分が親になって子どもを連れて
ということだ。
動物園で新しい施設のお披露目や講演会がある時、この「一生に4回」のフレーズはよく使われる。
結婚式の祝辞での「3つの袋」(お袋、給料袋、堪忍袋)みたいなものだろうか。
動物園では、今回の新しい施設または講演会の魅力で4回より多くの回数来園していただきたい。と続くのである。
 
動物も動物園も大好きな私としては、一生に4回しか行かないなんてもったいないなと思う。
まず、今どきこれほどコストパフォーマンスのいいアミューズメント施設もない。
大人1名の入園料を見ていくと、上野動物園(東京)600円、天王寺動物園(大阪)500円、東山動物園(名古屋)500円、旭山動物園(旭川)820円と、公立の動物園はいずれも1000円以下で1日中遊べる。しかも小学生は無料である。
テーマパークの入園料に比べてなんと安価なのだろうか。
また、同じ動物園でも海外のサンディエゴ動物園(アメリカ)は入園料56ドル(約5700円)、ロンドン動物園28ポンド(約3300円)なので、日本の動物園は破格の値段といってもいいだろう。
海外に比べると面積が小さい分、飼育種類と頭数は少なめにはなるが、実際にはちゃんと動物を見ていくと少ないと感じることはないくらい動物がいる印象だ。
それに、例えば上野動物園には、世界三大珍獣といわれる「ジャイアントパンダ、オカピ、コビトカバ」がすべて飼育されているし、行動展示(動物の姿形だけでなく、本来の行動や能力を見せる工夫をした展示方法)で有名になった旭山動物園、イケメンゴリラのシャバーニがいる東山動物園など、それぞれに見どころがあり、魅力を高める工夫をしている。
 
「そんなのいまどきインターネットやVRで十分」という向きもあるかもしれない。
しかし1日のうちでも時間帯によって、また季節によって動物の行動は変化する。繁殖時期にしか見られない行動もあるし、子どもから大人になるにつれて、毛の色や模様がすっかり変化する動物も多い。エサを食べる様子から、前脚の使い方や歯の特徴を知ることもできる。一定の時間を切り取った録画では映しきれない情報も多い。
そして、においや体温、触感というものはリアルからしか得られない情報だ。慣れない人にはただ「くさい!」としか表現されない動物のにおいだが、種類や食性によって大きく違う。たとえば、竹や笹を主食とするジャイアントパンダの糞は、竹のすっきりしたにおいしかしない。何も知らせず「新しい芳香剤だよ。さわやかな竹林の香り」といわれたら信じてしまいそうなくらいだ。
見た目では「ぬるぬるしていそう」とイメージされることの多いヘビは、実際に触ってみると、ガラスビーズのような滑らかさでさらっとしている。モルモットやマウスは人間よりも体温が高く、膝に乗せるとじんわりと温かい。また人間より早い脈拍がトクトクトクと指先に伝わってくる。こういう命のリアルはVRでは伝えきれない。
 
そして、映像で知っている予備知識を裏切られる驚きも、リアルな動物にはある。
少し前に動かない鳥として有名になったハシビロコウという大型の鳥がいるが、朝や夕方に見にいくと、意外なほど動き回っている。羽をばたつかせて飛び上がったり、大きなくちばしをカタカタ慣らしたりと生き生きしており、いい意味で期待を裏切られる。
また、ハダカデバネズミという、インパクトのある名前が有名なネズミがいるが、このネズミは大きな前歯と前脚で地下にトンネルを掘って暮らす。土の中では体毛が少ない方が汚れにくいのでハダカだ。そして昆虫のアリのように女王や養育係といった役割分担をしたコロニーを作る。原産はアフリカなので日本には生息していないが、動物園では透明なチューブを使ってハダカデバネズミのコロニーを観察できるように展示している。映像では不気味な姿だと強調されることが多いが、実物を見ているとだんだんとかわいらしく思え、強い個体に道を譲ったりする社会性がある動きに興味が湧いてずっと観察してしまう。
 
野生では繁殖がむずかしくて希少になってしまい、簡単に見ることができない動物も、動物園では長い時間観察することができる。
好きな人の多いジャイアントパンダも、野生では単独で暮らしていて、年に2日(!)ほどしかない発情期にペアリングできる相手と出会わなければ、その年の繁殖はできない。が、動物園で繁殖行動やホルモン値を研究した結果、個体数を増やして野生に返すこともできるようになっている。
動物園では、ただ動物を見せるだけでなく、動物と環境に貢献するための努力が続けられている。さらに動物福祉への関心も高まり、飼育されている動物がストレスを感じないで暮らせるようにする工夫も実施されている。そんな動物園は、子どものためだけにしておくには惜しい施設だと思うのだ。環境や命について、“お勉強だ”と構えずに知ったり考えたりできる場所は大人にこそ来てほしい。
 
動物園で一番ステキなことは、すべての動物が生きて動いていることである。その日、その時、あなたが見ているその瞬間に動物が何をしているか、どんな姿を見せてくれるかは未知数で予測がつかないところがある。その面白さを多くの人に味わってもらいたい。
一生に4回では少なすぎると思いませんか?
 
 
 
 
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2020-03-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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