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おじいちゃんの似顔絵をビリビリにやぶいた話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:みさと(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「おじいちゃんなんか、だいっきらい!」
壁に貼っていたおじいちゃんの似顔絵を
全部やぶって捨ててやった。
 
おじいちゃんは
「ゴメン」と言わず
悲しそうな顔で私をみていた。
 
おばあちゃんも
困った顔をしていた。
 
私は小さい時、
おばあちゃんっ子だった。
両親が共働きで、友達も少ない。
内気な子であまり笑わなかったと思う。
 
小学校1、2年生の時。
放課後に家から10分ほど離れた
おばあちゃんの家によく行った。
 
お菓子をくれたり
話を聞いてくれるおばあちゃんが大好きで
似顔絵を描いたり、お手玉をしたりして
遊んでいた。
おばあちゃんは、私の描いた絵や作品を
たくさん壁に貼ってくれた。
 
おじいちゃんは、亭主関白でお酒好き。
仕事に出ていたのであまり家にいなかった。
たまに将棋と囲碁を教えてくれるけれど、
つまらなかった。
 
事件があった日は祖父母の家で、
祖父母の似顔絵を描いていた。
 
そしたら仕事帰りのおじいちゃんが
私が描いた似顔絵を見て
「そりゃ誰じゃ。何描いてるんか分からんわ」
とかなんとか言ったんだと思う。
ニヤニヤしながら。
 
それがなぜだか、突然頭にきて
大泣きした。
壁に貼ってあった似顔絵の
おじいちゃんのところだけビリビリに破いて
捨ててしまった。
 
そもそもおじいちゃんはいつも
私がすることを褒めなくて、
ニヤニヤしながら意地悪なことばっかり言ってきた。
 
しかも他の人には言わないのに、私にだけ言う。
 
私は真面目だったから
意地悪を全部、真面目に受け止めて困っていた。
あんまりおじいちゃんを好きじゃなかった。
 
その日、二人はとてもびっくりしたそうだ。
私が人前であんなに感情的になったのは
後にも先にもこれっきりだったから
 
後日、気を取り直して祖父母の家に行ったら
おばあちゃんが
「おじいちゃんが、元気ないんよ。
みーちゃんが怒った。言うてな」と言っていた。
 
「おじいちゃんが元気ないことなんかあるの?」
と不思議に思った。
 
その日、居間にひょっこり顔を出したおじいちゃん。
たぶん孫に嫌われてないか心配して見にきたんだろう。
 
いつものニヤニヤ顔ではなくって
ちょっと、眉毛がハの字で真面目な顔をしていた。
 
「ゴメン」と言うのかと思ったら、
私の顔を見て、
「おお、来てたんか」
と言って何処かへ行ってしまった。
 
「なんでゴメンって言わへんの!?」
と、私はまたプンプン怒った。
 
だけどその事件から、
おじいちゃんは私に意地悪なことを言わなくなった。
本当に、一切言わなかった。
 
思い返すと、意地悪がなくなった分
おじいちゃんの口数もかなり減った。
 
しかし意地悪を言わなくなったおじいちゃんを
私は大好きになった。
 
今では癌になっちゃって
昔みたいにニヤニヤしないし、
元気がないおじいちゃん。
 
だから私がおじいちゃんに
わざと変なことを言って
笑わせるのを頑張っている。
 
最近はおじいちゃんが笑うコツを分かってきた。
 
ちょっと意地悪なことを言うのだ。
さらには、おじいちゃんが言った意地悪な発言に困った顔をすると
嬉しそうに会話をしてくる。
 
例えば私が
「おじいちゃん、まだ生きてんのん」
と言うと、
「じいちゃんはな、もう死にたいねん。
生きてても良いことないねん」と
ニヤニヤして言う。
 
「じいちゃんの帽子、変な色やな」
と言うと、
「せやろ。これは変な色やから、あんたにあげるわ。」
と言ってくる。
 
そして、たまに私が返答に困っている顔をすると
また、嬉しそうにニヤニヤしている。
 
おじいちゃんはもともと、
人を困らせるような会話が
大好きだったらしい。
 
私にだけ意地悪なことを言っていたのは
孫が可愛すぎて(自分で言うのも恥ずかしいが)
意地悪が出てしまったのだ。
 
「親の心子知らず」。
 
この前、会社の上司が
「娘5歳なんだけどさ、ママ、ママ〜ってさ、
お母さん大好きなんだよね」
 
「抱きしめて顔スリスリしたら
『ヒゲいたい〜』って嫌がるねんけど
可愛くてずっとやっちゃうの。
そしたら泣くんだよね」
と話してくれた。
 
男の人って、お父さんになってもおじいちゃんになっても
好きな子に意地悪してしまうんだな。
 
「そんなことしてたら
本当に娘さんに嫌われちゃうよ。」
と思いつつ、
「娘さんに意地悪をしてしまう上司がすごく可愛いな」
と思った。
 
そんな、
「素直になれない男の人って可愛いな」
という気持ち。
ようやく、おじいちゃんにも持つことができている。
 
私がめちゃめちゃ怒って泣いたあの日から、
おじいちゃんは意地悪を封印していた。
 
あの時怒ったのはしょうがなかった。
小さかった私に、
好きの裏返しで意地悪をしてしまう大人の気持ちを
察することができるはずない。
 
でも意地悪を言うのが楽しかったおじいちゃんの
お茶目なコミュニケーションを奪っていたと思うと
ちょっと寂しい。
 
それに、大好きな意地悪を今まで封印してくれたおじいちゃんに
「ありがとう」と思う。
 
これからはたくさん意地悪を言わせてあげよう。
「次会ったら、どんな意地悪を言ってやろうか」と
考えている。
 
 
 
 
***
 
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2020-03-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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