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メディアグランプリ

『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』(タバブックス)を読んで「ないことにした」ことを思い出した。

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:ミヤノケイスケ(ライティング・ゼミ 日曜コース)
 
 
『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』(タバブックス)という本をご存知だろうか?
著者はライターの小川たまかさん。
内容は性暴力の被害者を取材した時の話や、ご自身の体験された話など、メディアではなかなか取り上げてもらえないことを取り上げている作品だ。
この本で衝撃を受けた内容は、今の若者の中にはレイプというのは犯罪ではなく、
性行為のプレイの名称だと思っている人がいたということだ。
世の中にはこういう間違った認識をしている人が一定数いるということに驚いた。
さらに今でもレイプ被害を受けた人に「そんな格好しているからでしょ」などという人がいるそうだ。これは同じ人間として、とても恥ずかしいと思う。
取材された人の話や著者ご自身の話などを読むと、被害を受けた女性にとっては大きな問題なのに、社会的にはまだまだ軽くみられているのだなと考えさせられた。
 
この本を読んでいたとき、ふと「私も全裸の男を見たな」と思い出した。
 
それは15年ほど前の夏のことだった。
時刻は18時ごろ、あたりはまだ明るい時のことだ。
右手には線路、左手には個人経営の小さな工場がある十字路、車がかろうじてすれ違えるぐらいの細い道だった。信号はなく、止まれの標識があるだけだった。
車でその十字路に差し掛かり、止まれの標識で一時停止し左右を確認したときだった。
 
左から車が来ていないか確認した時、
左手の工場の外に設置されている自動販売機で飲み物を買っている人が目に入った。
「人がいるな」程度の認識ですぐに右を確認しようと思ったが
何か違和感があり、もう一度その人の方を見た。
よく見るとそこには「全裸の男」が飲み物を買っていたのだった。
 
その男はゆっくりとこちらを見て「ニヤリ」と笑うと全速力で車の前を走り抜け、
線路を渡って住宅街の方へ走っていった。
止まれの標識で止まったままその男が見えなくなるまで見送っていた。
 
あまりの衝撃でその時のことはスローモーションを見ているように思い出される。
「何今のやつ!」
「やばっ!」
車の中で一人、興奮状態でそんなことを言っていた。
 
その後、車を走らせて少し冷静になり、
「若そうなやつだったな」
「高校生か大学生ぐらいか」
「変質者か、いや、なにかの罰ゲームで裸で飲み物を買っていたのか」
などと頭の中でぐるぐるとさっき起こったことを思い出していた。
家に帰った頃には落ち着いて、今日は面白いものを見たなという結論に落ち着いていた。
 
その後、この時のことを友人に話して盛り上がったり、飲み会などでちょっとした面白話という扱いで話していた。しばらくするとちょっとした珍獣を見た程度に思うようになっていた。
 
ずっと面白い話だと思っていたこの話を、本を読み終わった時に面白いと思っていることが間違っているのではないかと思う様になった。
 
今まで変なやつが世の中にはいるものだな程度で笑い話にしてきた話だが、
実際にそれを見たのが小学生や中学生だったら、車じゃなくて自転車や徒歩で遭遇していたらと考えてみたら、笑い話にしては駄目だったのではないかとそんな後悔のような反省のような気持ちが湧き上がってきた。
さらに「通報する」という選択肢を自分が持っていなかったことにも気づいた。
あの時すぐに警察に通報したほうが良かったのではないかと思うと自分が情けなくもなった。
 
今でもその時のことは鮮明に思い出せるので成人した男の私でも結構なショックなことだったのだと思う。
それを見たのが女性だったら? それが少年少女だったら? その場合はもっと衝撃を受けてしまうのかもしれないと思った。
 
変質者だったのか、罰ゲームだったのか、そんなことを考える前にすぐに通報すべきだと考えるようになった。
その全裸だった人によって他に被害が出たかどうかはわからないけれど、
すぐに通報して警戒してもらうようにしたほうが良かったと思う。
 
15年ほど前のことなのでいまさら何を言っても遅いことだけれども、今気づけたということが大事なことだと思う。
同じようなことがこれから自分の身に起こるかはわからないけれど、次は迷いなく通報しようと思う。
 
『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』を読んで性被害について知るきっかけになった。
しかしすぐに被害者が被害を訴えられるような社会変わることは難しいことだろう。
でも少しでも被害を訴えやすい世の中にしていかなければならない。
 
そのためには個人が少しでもできるところから変えていくことが大切だと思う。
まずは自分が「そんな格好しているから被害に遭うんだよ」と言う加害者目線のおっさんにならないように気をつけよう。
 
 
 
 
***
 
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 

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2020-03-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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