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私が18ヶ月で15キロのダイエットに成功した理由


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:きさらぎ満月(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
その日、体重計で示されたその数字を見るのは人生で2回目だった。74キロを示していた。
身長161センチ74キロ、しかも増加中。このままではやばい。Sのにやけた顔が浮かんできた。
 
1度目にその数字を見たのは10年以上前。30代なかばだった私は、あまり体重のことを気にしていなかった。いや、気にはしていたが、長年の生活習慣を変えるのが嫌だった。自炊はしない。酒は飲む。食べたい物を食べる。この生活を続けていたら太るのはわかっていたが、変化を起こすのは面倒だったのだ。
その頃職場に、小型飛行機の免許を持っているお調子者の後輩Sがいた。ある日Sが、練習がてら飛行機の操縦をするので、一緒に乗らないか、と誘ってきた。操縦席を含め座席が4席あり、飛行機のレンタル料の一部負担を条件に、私を含め3人の同僚を誘ってきたのだ。
滅多にない機会に一も二もなく同意したが、飛行前日、Sが私の体重を聞いてきた。機内の重量バランスを取るために、乗員の体重を把握する必要があるという。
私は、よりによって人生最高体重を申告することになった。普段はふざけたことばかり言っているSだが、根は優しい奴で、体重で私をからかうこともなく、私の体重を他のメンバーに漏らすこともなかった。だからといって、私が気にならないわけではない。熊本空港から有明海に向かう小型機の中で、海苔の養殖風景を上空から眺めながら、私は大して親しくもない男性に人生最高体重を打ち明けざるを得なかった屈辱感に浸っていた。
 
その直後は反省し、食べる量を控えて7キロほど体重を減らしたのだが、10年が経過し、いつのまにか元に戻っていた。
あのあとSは航空会社に転職し、機長になっていた。2度目の74キロを目にしたとき、いつもふざけたことばかり言っているがやるときはやるSの顔が目に浮かんだ。
本気でダイエットをしよう、と決心した。2017年12月のことだった。
 
どうすれば痩せられるのかはわかっている。摂取カロリーを消費カロリーより少なくすればいいのだ。問題は、どうやって実現するかだ。
その頃私は転勤を打診をされており、異動先での新居を探していた。不動産屋の運転する車の中で、希望物件の内見に向かいながら、スマートホンにダイエットアプリをダウンロードした。運動は苦手なので、消費カロリーを増やす方法は選択肢になかった。まずは、自分がどれだけ食べているかを把握するため、カロリー計算と体重記録を主眼にしたアプリを選んだ。
 
アプリにカロリーと体重を記録し始めて4ヶ月。ここまでただ記録することしかしていないが、2キロほど減らすことができた。
食べる物はいまだにコンビニ弁当かスーパーの惣菜、いわゆる中食(なかしょく)ばかりだが、カロリーを気にしながら食品を選ぶと、それなりに効果が出る。しかし最近は体重減少も止まり、この方法でこれ以上減らすのは難しそうだった。
カロリー過多の主な原因は、弁当・惣菜・アルコール。出来合いの弁当や惣菜の中からカロリーが低い製品を選ぶのはかなり難しい。
その頃、転勤先の新居に母が遊びに来て、1週間ほど滞在した。私が自炊をしないのを知っている母は、娘のために食事を作るのを楽しみにしている。毎日食事を作る母を見ていると、カット野菜のパックを使っているのに気付いた。
「いろんな種類が入ってるし、手間がなくて便利なのよね」
そういいながら母は、コンソメキューブで作ったスープにカット野菜と小間切れ肉を投入した。
ひらめいた。これだ。これなら私でも低カロリーな料理が作れそうだ。
 
40後半にもなっていまさら料理を始めるのを見られるのが恥ずかしいので、母が実家に戻ったあと、料理計画に着手した。これまで料理をしていないので、簡単なものしか作る気はなかった。継続することを重視して、ルールを作った。
レシピは具だくさんスープのみ、難しいものには挑戦しない。カット野菜や小間切れ肉を活用し、簡単に作れることを重視する。
週に一度は外食をし、その際にはカロリーを気にしない。食事制限を苦しく感じてしまうと続かなくなりそう。
なお、アルコールを減らすつもりはない。
 
料理を始めて2ヶ月、3キロ体重が落ちた。アプリで記録し始めてから、トータルで5キロ。食べ物を変えると結果が出るのが早い。いかに不摂生をしていたかがわかる。
リバウンドを防ぐため、フェイスブック上でダイエット宣言を行った。友達からいろんなアドバイスを受ける。その中から、「炭酸水」と「キュウリ」を採用。
炭酸水で晩酌の白ワインを割って飲むことにした。早く満腹感が得られるし、アルコールの摂取量も減らせる。
キュウリは、晩酌の最初のつまみとして、もろみ味噌を付けて丸かじり。これでつまみのカロリーが減らせる。
料理にも慣れてきたので、職場に弁当を持っていくことにし、スープジャーを購入。
5キロ減った体で実家に帰省すると、痩せたことに母が気付いた。そこで、料理を始めたことを白状する。
毎日会っている職場の人は、5キロの減量には気付かない模様。分母が大きいからな・・・。
 
フェイスブックでダイエット宣言してから5ヶ月、さらに5キロ痩せた。ダイエットを決心してから12ヶ月で、10キロ痩せたことになる。
1ヶ月に1キロ未満のゆるいペースだが、さすがに職場の人も気づき始めて、「痩せた?」と聞かれることが多くなった。
仕事中、丸まっている背中の緊張をほぐすため、ウーンと肩甲骨を寄せてストレッチをしたら、ブラジャーのホックが外れて慌てる。手を離せない作業中だったので、そのまま素知らぬ顔で30分ほどキープ。いつの間にかサイズが合わなくなっていた。
元々巨乳なので、セミオーダーのお高いブラジャーを着用している。作り直すとお金がかかる。そういえば、服のウエストもぶかぶかになっている。そうか、ダイエットって成功するとお金がかかるのか。
 
ブラジャーを作り直してから6ヶ月、さらに5キロ、トータルで15キロ痩せた。会社の健康診断で、去年の記録と見比べた医者が、データを二度見。今がほぼ平均体重とのことで、詳しくは覚えていないが血液検査などの数値が改善しているという。
周囲の人に「これくらいがちょうどよい」と言われることが増えたので、ここでダイエットをと止めることにし、デザート類を解禁。
リバウンドを防ぐため、料理は続けることにした。というか、料理が楽しくなってきている。カット野菜は卒業し、いろんな旬の野菜に挑戦。簡単だがレシピも2つ増えた。なによりいろんな味付けを試してみるのが楽しい。
 
そして2020年の今に至る。リバウンドすることなく、58キロ前後をキープしている。
ダイエットが成功するかどうかは、どれだけ本気になれるかにかかっている。私のダイエットに一番効果が高かったのは自炊だが、一番貢献してくれたのはSだ。本人は全く知らないわけだが、彼に屈辱の申告をしたこと、そして彼が尊敬できる人物であることが、私を本気にさせてくれた。
5年ほど彼に会っていない。飲みに誘ってみようかな。
 
 
 
 
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2020-03-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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