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夫が半魚人であることを理解するまで10年かかった話

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:新明 文 (ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
運命の赤い糸。
永遠の愛。
二人を隔てるものはなにもない。
あなたしかいない。
誰もが夢見る理想の結婚の形。
病めるときも、健やかなるときも、富めるときも、貧しきときも、妻として愛し、敬い、 慈しむ事を誓いますか?
「はい」そう誓いました。私も。
 
結婚をするまでの私を作り上げたものは、少女マンガやテレビドラマです。マンガを読んでは、まだ見ぬ旦那様に大切にされる私を想像して、頬を赤らめため息をつく。テレビドラマドラマの中の幸せな家庭を見ては、よくできた子どもに囲まれ何一つ不自由のない自分を想像し、ほくそ笑む。歳をとったら、夫婦で仲良くクルーズ世界一周の旅。そんな夢の世界を描いていました。
今の私はというと、サラリーマンの妻。地方都市在住。子どもは二人の男児。パート勤務。39才。ごくごく普通の主婦です。少女の頃、思い描いていた夢と現実は少しちがいました。
昨日の夜、なかなか寝ない二人の男児に「はよねろやー!」罵声を浴びせました。1日に5回は息子たちに「いい加減にしなさい!」と叫びます。今日の朝は主人と5分間口論しました。どちらが借りたマンガをツタヤに返しに行くかについて。爽やかな朝の青空に申し訳なく思いました。
そんな毎日を暮らしていると、「熟年離婚」という言葉が頭をよぎります。子供と主人の世話をしても報われない孤独感。大学まで卒業したのに雀の涙程度のパート収入をコツコツ貯めることしかできない虚無感。重力にさからえないハリのなくなった肌、薄くなって頼りない髪の毛をなでながら感じる喪失感。何をどうすれば自分を取り戻せるのか。再び未来を想像して希望を持てる日々がくるのか。子供が大きくなれば、離婚して自分の人生を再び始められるのではないか。
そう思った時期もありました。しかし40才を目の前にして「自分」を見つめ直し、あることに気づくことができました。夫婦とは「赤い糸で結ばれた運命のふたり」ではなかったのです。夫婦生活とは「半魚人と暮らすこと」でした。つまり、人なのか、魚なのか分からない得体のしれないものと生活する、それが結婚生活です。
思えば結婚生活で主人のことを理解できないことがたくさんありました。例えば、夜子供が泣いていても全く聞こえていない様子の時。本当に聞こえていないのか、聞こえているけど無視しているのか……。聞こえているのに無視するなんて! と思っていました。でも違うのです。魚は目を開けて寝ます。半魚人も同じです。耳はついて聞こえているけど、寝ているのです。だから子どもの泣き声くらいでは起きません。
こんなこともありました。私の主人は冷蔵庫にあるものを探そうとしません。ドアを開けたとたん「マヨネーズどこ?」と聞いてきます。まず探してから聞けよ! と思っていました。でも違うのです。魚は広い海の中で暮らせるところ(テリトリー)が決まっています。半魚人も同じです。目はついているけど、冷蔵庫のような複雑な構造のテリトリー外のところでは目も鼻も役に立たないのです。
逆に、主人に理解してもらえないこともありました。買い物です。女にとってのショッピングは別に買うものがなくても楽しいものです。「かわいいー!ほしー!」と言いながら何も買わなくても楽しいのです。でも違うのです。魚はお腹がすかないと獲物を狩りません。半魚人も同じです。目的がないと買い物には行かないのです。ソファの上でじっとスマホをみているほうが休まるのです。
このように主人をヒトではなく半魚人として見てみると、愛情が再び蘇ってきました。同じヒト科だし、運命の赤い糸で結ばれた主人も私と同じように思うはずと思うのは大間違いです。主人と私は同じヒト科に属しているけれど、実は男と女は全く別の生き物だったのです。だから私と行動やものの見方、考え方が違うのだと納得しました。理解してもらえない、理解できないことがあっても仕方ない、そう思うととても気持ちが楽になりました。
また、私は「家族」という言葉が持つ万能感をおびた魔法を信じていました。しかし、そんな魔法はなくて、職場の人間関係と同じように家族もややこしい人間関係のひとつだったのです。それぞれが相手を理解できるよう努力して、相手を尊重してあげないとすぐに崩れます。当たり前のことですが、「主人の気持ちを想像してみること」、「私の気持ちを率直に伝えること」がとても大切だと気が付きました。海水は3%の塩分が含まれているから腐らないそうです。家族も個々が3%の努力をしないとすぐに腐ってしまいます。家族といえども努力が必要です。
子供に対しても同じ気持ちです。今は半魚人でも何でもない未確認生物です。大人になって、ヒトになるのか、半魚人になるのか、はたまたケンタロウスになるのか分かりません。同じヒトになってほしい気持ちはありますが、それは本人が決めることなので尊重しながら見守るしかありません。
「自分」の幸せはやはり家族の中にあります。理想という想像の世界で幸せにしてくれるのを待つのではなく、リアルな家族の中で努力して「幸せ」をさがすこと、これが今の自分の誓いです。
 
 
 
 
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2020-04-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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