メディアグランプリ

世界一テレワークに向かないテレワークが教えてくれたこと

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:平良みか(ライティング・ゼミ平日コース)
 
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「へー、こんなオケがあるんだ」
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コロナウィルスが世界中で猛威を振るっている。小池都知事の自粛要請を素直に受け入れ、週末は家でおとなしくしていることにした。
ゴロゴロしながらTwitterを眺めていると、とある動画が流れてきた。
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オーケストラが、なんと「テレワーク」で『パプリカ』を合奏する動画である。
楽団員とおぼしき老若男女が楽器を演奏している。楽器も様々なら、背景や服装もバラバラである。青空の見える屋外で管楽器を持っている若い男性、変顔のお子さんと一緒に写っているダンディな男性、自宅と思しき場所でぱたぱたと手を振る女性。
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俄然、興味が湧いた。動画のタイトルに「最終回」とあるからには「初回」があるのだろう。
YouTubeを検索してみると、「シンニチテレワーク部始動!テレワークでやってみた!」という動画がヒットする。「新日本フィルハーモニー交響楽団」というオーケストラの試みであることを知る。
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1日目は4人だったようだ。チェロ担当の女性がにこにこしていて可愛い。楽しそうだ。
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2日目。11名と倍以上に増えている。ドラムが入っている。ドラムの人は途中でタンバリンに持ち替えて軽快なリズムを刻んでいる。
回線が切れたのか途中でいなくなった。
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3日目。30名。楽器の種類も増えている。音の厚みが一気に増している。楽譜があるのか即興なのか。どうやって合わせているのか不思議だ。
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4日目。管楽器パートだ。ドラムの人は本気度が増したのだろうか。太鼓の数が増えている。
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5日目。ロードバイク用のヘルメットをかぶった、フルートめちゃうまおじさんが出てきた。見た目の押し出しの強さとフルートの繊細な音色がまったく合っていない。演奏はやたらとレベルが高い。
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6日目。概要欄に、初日からの弦楽器参加者まとめと書いてある。え、これ、せーので演奏しなくても揃うんです? 何十人いてもテンポが完璧に揃うってこと? プロすげえ。(※それがオーケストラです。)
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7日目に管楽器の五重奏があって、冒頭の最終日である。通してみると、1週間の変化が感じられて趣深い。
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オーケストラの演奏を注意深く観察すると、結構休んでいる人がいることに気づく。もちろんサボっているわけではない。楽譜が「休符」のパートなだけだ。
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「休符は休みじゃないのよ」
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小学校の授業で合奏をするとき、音楽の立花先生に口酸っぱく言われたことを思い出す。
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音楽の授業は土曜日の4時間目で、毎回お腹が空いた。自分のパートが休符のときに、「お昼は何かな」などとぼーっとしていると、次の音に遅れる。きちんと音楽を聴いて、心構えをしておく必要があるのだ。立花先生は大層怒りんぼなので、油断は禁物である。
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あるいは、「休符」でうっかり音を出してもひんしゅくを買う。自分たちが休符のときは、たいてい他の楽器の聴かせどころだ。「休符」のときは、音を出さないことが「役割」なのだ。
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スマホの画面に映っている楽団員たちは、演奏をしているときもあれば、演奏を「していない」ときもある。演奏をしているときも、していないときも、役割を完璧に果たしている。そして、心をゆさぶるような素晴らしいハーモニーを生み出している。
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今の世の中は、「合奏の本番」のようなものかもしれない。
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普段はオーケストラの練習のように、それぞれが自分の楽器で、自由気ままに音楽を奏でている。しかし、本番ではそれぞれに役割があり、全員が役割を果たさなければ演奏は成立しない。
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自粛を求められている人たちの今の役割は「自宅から出ないで出来るだけおとなしくしていること」だ。合奏中、自分のパートが「休符」のときのように、「何もしない」をするときだ。
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とは言え、本当に何もしないのはつまらない。自分のパートが「休符」のときには、「お昼は何かな」くらいは考えてしまうものだ。
そこで、「自粛」を「余白」と捉えてみるのはどうだろうか。
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誰しも「時間があればじっくり取り組みたいのに」と思っていたことがあるはずだ。
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好きな作家の小説をじっくり読みたいとか、凝った料理を作りたいとか、英語がしゃべれるようになりたいとか、あるいは目覚まし時計をかけずに心ゆくまで眠りたいとか。
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今ならできる。「自粛」が役割の人は、自宅で過ごす時間が増える。まさに「時間があったらやりたい何か」をやるチャンスだ。
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ピンチはチャンス、「自粛」は「余白」だ。自粛期間を悶々として過ごすよりも、「やりたいことで出来ること」を探して楽しむほうが健全だ。
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「自粛」がなかったら、オーケストラがテレワークで『パプリカ』を演奏することはぜったいに無かっただろう。
余白があったからこそ、そしてその余白を見逃さなかったからこそ、面白いことが生まれた。
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「自粛」か、「余白」か、はたまた「チャンス」か。その答えは、シンニチテレワーク部を見れば、きっと分かる。
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2020-04-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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