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解散するアイドルが私に残してくれたもの ~ありがとう、こぶしファクトリー~

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:ハンプティ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
今日、3月30日はこぶしファクトリーが解散する日である。
 
みなさんの中には、「こぶしファクトリー」という名前を聞いてもわからない人も多いことだろう。
 
こぶしファクトリーはアイドルグループだ。だが、残念なことにメジャーなアイドルではない。
メンバー名はおろか、グループ名すら初めてきいたという人も多いだろう。
 
カラオケでアイドルの曲を歌いたいというと、
「アイドル詳しくないけど、曲聞いたらわかるかも」
と、そんな風に言ってくれる人もいるのだが、実際にこぶしファクトリーの曲を歌うと、曲自体も聞いたことないという人ばかりだ。
 
残念ながらこぶしファクトリーはメジャーなグループではない。
 
だけど、私にとっては、どんなアイドルグループよりも一番に心に残るアイドルだ。
 
今日はそのこぶしファクトリーが解散する日。
 
「解散するなら今から知っても意味ないじゃん」
「そんな知名度なかったんなら、どうせ大したことなかったんでしょ」
どうかそんな風に思わないでほしい。
 
知ってもらいたいのだ。彼女たちのことを。
 
2015年4月。私はとある広告代理店の営業職として新卒採用された。
広告代理店という職種柄なのか、周りは男性社員ばかり。
一番最初に配属されたチームも私以外は全員男性だった。
ただでさえ、男の人としゃべることが苦手なのに、社会人になりたてで右も左もわかっていない時期だ。今までとの環境の変化に戸惑い、知らず知らずのうちにストレスがたまっていた。
「友達と話たいけど、そんな時間もないし、気力もない。むこうも新入社員で忙しいだろうし……」
誰かと会って話す元気もなく、休日は家でだらだらする日が続いた。
そんなとき出会ったのが、こぶしファクトリーだ。
 
「何、この変な歌」
最初見たときの印象はそれだった。
 
彼女たちは2015年1月2日にデビューしており、私が一番最初に聞いた曲は彼女たちのデビューシングルだった。
 
「タイトルも変だし、なんか『念、念、念、念……』ってずっと言ってるし」
変な曲だなーと最初は思ったが、何故だか聞いていくうちにどんどんハマってしまった。
 
こんなことを言うと語弊があるのだが、当時は周りが男の人ばっかりで女の人に飢えていた。
女の人特有のかわいい感じとかキラキラした感じとか、そういうものに飢えていた。
 
そんな状態だったこともあり、私はこぶしファクトリーが好きになっていた。
 
ファンと呼べるくらい彼女たちのことが好きになったのは、私が社会人2年目の秋。
 
1年目は慣れないことが多かったものの、周りの新人と比べて成績は悪くなく、また、多少ミスしたとしても「新人だからしょうがない」と甘く見られていたところがあって、何とかやっていた。
 
しかし、2年目からはそうはいかない。
後輩から追い越されるかもしれないというプレッシャー。2年目だからミスは許されないというプレッシャー。任された大手取引先と上手くやり取りしなければならないというプレッシャー。
いろんなプレッシャーに押しつぶされそうになっていた。上司からもできていないと厳しく叱られる。
2年目の秋、私は家か会社で毎日泣いていた。
 
会社で泣くときは、トイレの中。周りは男の人ばかりだから、女子トイレで泣いていてもばれない。だけど、あまりに時間がかかるとさぼっていると怪しまれる。
 
「この曲を聞いたら、トイレから出よう」
そう思ったとき聞いた曲が、こぶしファクトリーの曲だった。
 
うまくいかないこともあるけど、何度でもやっていこう
そんなメッセージのある曲に、私はまた泣きそうになった。
 
そのとき、「ただなんとなくこぶしファクトリーが好き」という状態から、「こぶしファクトリーのファン」と私はなったのだ。
 
泣きたいとき、何度もこぶしファクトリーの曲を聞いて励まされた。
 
ファンになってから、彼女たちのことを詳しく調べた。
彼女たちは「ハロプロ研修生」というジャニーズでいうところのジャニーズジュニアみたいな、デビュー前の研修生であったり、「ナイスガールトレイニー」という消滅した元アイドルグループのメンバーだったり、下積みが長かった。
 
特に私が推しているメンバーはハロプロ研修生として長く活動しているのに、周りの同期や後輩が続々デビューしていく中、何度も選ばれない経験をもっていた。
 
そんな彼女たちが歌う、「あきらめないでやり抜けば、いつかきっといいことがある」というメッセージの歌はすごく説得力があり、私の心を何度も救ってくれた。
 
しかし、彼女たちはデビューしてからも順風満帆ではなかった。
 
2017年、彼女たちの主演映画が決まった直後、8人いたメンバーのうち、3人が半年間で相次いで辞めてしまう。
それも事務所との契約違反による解雇など、きちんとした「卒業」という形ではなくだ。
 
「こぶしは終わった」そんな声がファンから聞こえてきても、彼女たちはあきらめなかった。
 
事務所から強制的に罰ゲームみたいな形でやらされた合宿やアカペラの修行をこなし、アイドル界でもトップの歌唱力をもつグループに成長したのだ。
 
困難を盛りこえて、強くかっこよくなったアイドル。それがこぶしファクトリーだ。
 
彼女たちが歌うからこそ、「あきらめない」「必ず報われる」という曲のメッセージが響いた。
 
これから彼女たちの活躍をもっともっと見ていたかった。
だけど、これから彼女たちは、彼女たちが選んだそれぞれの道に進んでいく。
 
私にとって彼女たちを応援してきた日々は、もう戻れない学生時代だ。
あんなに楽しく、充実した毎日だったのに、もう彼女たちが5人で歌って踊る姿を見ることはできない。
それは悲しいし、とても悔しい。
 
だけど、私の中でその日々はいつまでも輝いて、私を支える一部になっている。
 
今後、5人そろって活躍する場を見ることはできないだろう。
だけど、ひとりでも多くの人に知ってほしい。
 
毎日泣いていた一人の女性を救ったアイドルがいたということを。
逆境に負けず、素晴らしい歌をファンに届けていたアイドルがいたことを。
 
そんなアイドルの曲を聴くのは、今からでも遅くないはず。
 
ビートルズや美空ひばりの曲だって、今聴いても感動するでしょ?
 
彼女たちの歌は、彼女たちが解散した後もきっと、辛い誰かの心を支えてくれるはずだ。
 
 
 
 
***
 
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2020-04-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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